#生餅短歌 2022まとめ
┊待屋さん
リィンカーネーション花を呼ぶときの横顔で分かってみせるから
また呼んでくださいあたらしい花の名を呼ぶように名を わたしの、わたしの
濡れた窓を磨くみたいにまばたきをゆめにあなたを映せるように
きみからのことばを胸の野に埋めてひなたにゆけば咲いてしまうね
やわらかい土に根はふかく染み込んできおくはさみしい森でもあるの
花の名はあなたからだけ聞きたくて私のじゃないマグに生ける花
宛所(あてどころ)に花の名ただただ書きつらね届いたつもりになるだけの午後
ともに過ごした日々すなわち花の比喩わたしはもう花束しか持てない
花図鑑 花に生まれる世があれば新種にひかる目に映りたい
教わった名の花だけの花園をおもえばあなたはいつでもそこに
薔薇という花を知らないわたくしが薔薇色として選ぶ日を述べよ
教わった花の名前を束にしてかかえたままではくぐれない門
ひらけゴマ、なんて唱えてこのゆめをともに出られたらな、なんてゆめ
これは夢、これも夢、あれもみんな夢 ともにいる庭で知る花ことば
わたしだけで憶えてしまった花の名は呼べば呼ぶほどさみしいまほう
ひだまりにこころを置いてかなしみがとけたらぼくをおもいだしてね
てのひらの模様は葉脈のようにみなちがうと教わった思い出
┊むかとお
抱いて眠る あなたが言った「またあした」をむく毛の生きものみたいに、胸に
あのひとの跡があまたある言語野をこどものわたしがかきわけてしまう
感情の海に立つひとはみんな島 その波はあなただけが曳いてくる
夕まぐれ かかとで三点リーダーを打ち打ちあなたと帰る道でした
さしこめば栞になる舌 おはなしのつづきはどうかあしたにしましょう
約束と誓いはちがうから行ったなら帰ってくると誓ってください
┊折句
無謀でも櫂は放さずにイメージをレモン色の灯と波を越え帰る
|向井メレもな
やすらぎの輪をつなげたい来世でも傘をたずさえて行くよ、かならず
|やわらかい
たましいを風がなでてゆく技術とは海に見つける一番星さ
|高木11
距離を知るうたうあなたの風下にいまだしない声に(千年でも待つ)|境界線
無傷では駆け抜けられない路(ろ)だから苦渋でも去る 庭を、おまえとの
|向井62
┊そのほか
ここにいたい つよくねがってねをはってあなたをまもるこかげになるの
|プリンタニア
生きてゆく あの日あなたから受け取った緑茶のぬくみにひらいた世界に
|瀬田8
ひかれひかれ爛々とわたくしの目よ一寸の先になど奪わせない
|メレンゲ
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