いつか【ツクシ】を思い出してほしい
「子どもにツクシを見せたい!」という観察会の依頼が舞い込んできた。
依頼主のⅯさんは、20年前くらいにツクシを見たことがあるけど、それ以来ツクシを見ていないとのこと。
依頼があったのは3月。すでにツクシは満開。
ツクシは、時期を逃すとスギナになってしまう。
急いでツクシを探しに行きましょう!
と、すぐにツクシ観察会を開催することにした。
目的は「お子さんにツクシを見てもらうこと」だけど、Ⅿさんにも20年ぶりとなるツクシに会ってもらいたい。
できれば食べてもらいたい。
多摩川に来て、最初は「どこで縄跳びしたらいい?」と他のことが気になっていたお子さんも、ルーペでひっつき虫を見たりしているうちに「これ何だろう?」と葉っぱを持ってきてくれたり、ちょっとずつ草花に興味を示してくれるように。
1時間ほど多摩川を散策したころ
「あったー-!」Ⅿさんが最初にツクシを見つけた。
お子さんも、Ⅿさんの興奮に引っ張られるようにして「あった~!」とどんどんツクシを見つけていく。
ツクシは地下に根をはって成長するので、1本見つけるとその周りに群生して生えている。
見つけやすく、また間違いやすい野草が少ないため採集も簡単にできる。
採ったツクシで、採集袋がふくらんできた。
採るのは楽しいけど、持ち帰った後にツクシの「袴」をとり除くのが大変なんだ。
“ツクシの袴”とは、茎の節を取り巻いている葉のようなもの。
袴は食べられないこともないけど、ちょっと硬いので、残っていると歯ざわりが悪い。
ツクシの味は特別に美味しいということはないけど、多摩川で手軽に春を味わえる身近な存在だ。
現代の親世代が平成生まれになってきて、春にツクシを食べるという経験をしないまま親になっているのだろうと思っていた。
しかし、小さい頃に見たツクシを思い出したⅯさん。
きっと子どもの頃に夢中になってツクシを摘んだんだろうな。
ツクシ観察会後、Ⅿさんからこんな感想が届いた。
「つくしは甘辛く煮てみました。これはなんとも不思議なもので、季節の乙な味を感じました」
Ⅿさんが子どもの頃に見たツクシを20年後に思い出してくれたように、お子さんが夢中になってツクシを摘んだことや、季節の乙な味わいを、いつか思い出してくれるといいな。
ツクシ・スギナ
漢字:土筆・杉菜
別名:地獄草
花期:実はシダ植物なので花は咲かず、胞子で増える。
生息地:多摩川の乾いた土手
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