個人で特定外来生物をどうにかしようとしたら、色んな人から協力してもらえることになった話
多摩川で植物観察会などを主催している365日野草生活®のんです。
「外来種って何?悪者のイメージがあるけど・・」
「侵略的な外来種って?」
上記の質問は、多摩川の植物観察会でよく聞かれます。
人の営みによって、本来の生息地ではない場所に持ち込まれた生物を外来種と呼びます。
大昔・・・それこそ縄文時代から令和の現代まで、人によって運ばれたものは、意図的でないものも含め、全て外来種となります。
例えばイネも縄文時代に中国大陸から人の手によって持ち込まれた外来種ですが、管理栽培され、環境への影響が少ないとされているため、駆除などの対象になりません。
さらに遠い海を渡って外国からきたものだけが外来種、ではありません。
国内からの移入も国内外来種と呼びます。
さて、多摩川ではそんな外来種が多く住んでいます。
多摩川で生物を観察するからには、外来種は避けては通れません。
すべての外来種が元気よく生い茂っているようなイメージがあるかもしれませんが、そうではなく、それぞれに熾烈な競争をしています。
とはいえ、私は「何が外来種なのか?」と植物にレッテルを張るよりも、どのようにかれらと付き合っていくか、どんな暮らしをしているのかを調べるほうが楽しいなと思っています。
かれらはどんな姿なのか、芽生えから種子まで、どのように生きているのか、日本に渡ってきた歴史などを紐解くことで、かれらの生態が分かってきます。
私は日々の観察では、侵略的外来種、特定外来生物の防除を目的としておりませんが、見つけたら抜くようにしています。
しかし、そろそろ個人でやるのに限界を感じてきました。
なぜなら多摩川に特定外来生物が多すぎる!
これから特定外来生物の防除作業などを個人でやりたい人に向けて、メモを残しておきます。
まとめてないので読みにくいかもしれません。
はじまり
2020年9月 多摩川で偶然みつけたホテイアオイを抜く。一般財団法人 緑化再生機構「宮寺ふくろうの丘公園」さんの協力を得る。
※環境省の“要注意外来生物”は廃止され「生態系被害防止外来種」に変更されています。生態系被害防止外来種は、外来生物法の“特定外来生物”とは違い、飼養の規制はないけど、生態系に悪影響があるから、利用に関わる人に対して、適切な取扱いについて理解と協力をお願いするために作られたものです。
2021年4月 多摩川でアレチウリが大繁殖していて、全てを覆いつくしている様子。Twitterでどうすればいいのか聞いてみる。有識者からリプが届く。
2021年4月 個人で外来種の防除作業をするにあたって、環境省の「植物に関する小規模防除の特例」の項目を全てクリアできるか確認
防除に関する基本的な事項 | 日本の外来種対策 | 外来生物法 (env.go.jp)
→ひとりでは難しいな!!最初から心折れそうになる。
2021年5月 多摩川でゴミ拾いをしつつ、特定外来生物を観察し、どんな生き方をしているのか観察を始める。
2021年10月 特定外来生物を抜きはじめる。ただし生体移動が禁止されているため、抜いてその場に置いてくるだけ。
2022年4月 とある事件が身近で起こる。
3年間ほど実家の庭の外来性のカタバミ類(オッタチカタバミ、イモカタバミ、オオキバナカタバミ等)を抜いて、ドクダミを根茎から食べつくした結果、在来種のゲンノショウコが生えてきました。小さな庭にも在来種がいるんだから、多摩川でお手入れすれば色々な植物が生えてくるだろうと思った。
2022年10月 個人で抜き始めて1年が経ち、多摩川でアレチウリを抜いていた場所にアレチウリが生えにくくなり、クズが繁茂していることを確認。「クズだ~」と思いつつ、人の手で抜くのは効果がありそうなことを実感する。
2023年3月上旬 NPO法人多摩川エコミュージアムに相談
多摩エコ回答「特定外来生物をゴミとしてだしたらどう?子どもに駆除してもらおう」
のん:外来種の問題は複雑で、生体の取り扱いが難しいのと、各所との連携も必要になってくるので、ひとつひとつクリアしてからやりたい。
特定外来生物はそもそも生体移動が禁止されているのでゴミとして簡単にだせない。
子どもには自然体験のなかで外来生物の話しをするのは良いと思うけど「生き物を大切にしよう」と言いながら、子どもに駆除させるのは相反する気がするので、基本的に駆除の部分は大人が担いたい。
2023年3月中旬 NPO法人多摩エコミュージアムに、特定外来種防除のための資料を送付。
環境省の「植物に関する小規模防除の特例」の全ての項目に該当しない場合は必要書類を作成して防除の申請手続きを行う必要があるため。
環境省による「外来種防除に関する基本的な事項」https://www.env.go.jp/nature/intro/3control/bojooutline.html
地域でおこなう場合の外来植物対策ハンドブックhttps://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kankyo/gairai/pdf/handbook.pdf
この時は資料を送っても全然回答がなくてどうしようかと思ったりした。
2023年3月中旬 外来種防除作業の助成金を発見したので、NPO法人多摩川エコミュージアムに、外来種防除作業の助成金を申請できないか確認
→少しハードルが高いので今回の申請は諦めたいとのこと。残念。
2023年4月上旬 NPO法人多摩川エコミュージアム 担当者と打ち合わせ
担当決めをすることに。
NPO法人多摩川エコミュージアム事務局→事務的なことで各所と連携
NPO法人多摩川エコミュージアム植物班→植物関係について各所と調整
365日野草生活®のん→上記以外の各所と調整、環境省の資料を読むこと
4月中旬 NPO法人多摩川エコミュージアム事務局が対応
川崎市建設緑政局緑政部 みどり・多摩川協働推進課に連絡
回答→外来生物に関しては環境局の業務となるというで環境局に連絡をする。
・川崎市建設緑政局緑政部 環境局に連絡
回答→特定外来生物(植物)について、川崎市環境局への届け出は必要無い。ただし、防除については添付ファイルの内容で行うよう指導される。
※添付ファイルを確認したところ「30分ほど日に当てて枯死させてから運搬」と書いてあり、内容が古いか、もしくは個人向けとなっていて更新されていないような気がするので、再度確認中。
平成27年1月9日の環境省通知で、焼却施設等への運搬を飛散防止措置を講じて事前に活動を公表している団体が行う場合は「運搬」とは見なさない(枯死させずに運んでよい)とされています。
https://www.env.go.jp/nature/intro/3control/files/tuuchi_plant.pdf
資料や法律もどんどん変わっていくので、自分の知識をアップデートしなければならない。ひー。
2023年4月中旬 某生物学者と遊んだついでに、特定外来種防除について相談してみる。
計画するからには、継続的なモニタリング評価と検証によって、随時見直しと修正を行うこと、という助言をいただく。
「種の保護」は大事だけど、植物群集の保全ができるのが理想ですね、という話をする。
2023年4月中旬 特定外来生物の防除作業をしている「多摩川自然情報館」に相談する。
多摩川自然情報館は、10年ほど前からアレチウリなどの特定外来種の防除作業をしているらしい。建設的なアドバイスをいただけることに。
防除の際の注意点などを教えてもらう。
しかも、5月の植物調査班に入っていただけることに。超強力なスケットだ。
多摩川自然情報館のTさん、ありがとうございます!!
多摩川での防除活動はどうしたらいいのか見えてきた。
手当たり次第に防除をするのではなく、まずは植物の調査をしよう。
防除する区画と、何もしない区画を分けて、どのように植物が遷移するのかを調査することで、人の手での抜き取りにどのくらいの効果があるのかが分かるはず。
2023年4月中旬 NPO法人多摩川エコミュージアム事務局が対応
・国交省京浜河川事務所に「河川一時使用届」を提出
※いつ、どこで、誰が、どんな活動をしているかという書類
・環境省の「植物に関する小規模防除の特例」の項目に該当するか確認
こちらは、NPO法人多摩川エコミュージアムがボランティアとしてHPにて告知を行うことで「植物に関する小規模防除の特例について1~4」はクリアとなる
※HPに記載しています
特定外来生物(植物)防除活動 6月4日9時~ 参加者募集中 | 川崎市 多摩川 二ヶ領せせらぎ館 (seseragikan.com)
・川崎市建設緑政局緑政部 環境局から回答
上記の内容に沿って防除した特定外来生物(植物)は、「特定外来生物(植物)」の張り紙を付けて他のゴミと一緒に出しておけば、当日中に焼却してもらえることに。
やったね!!
2023年4月下旬 NPO法人多摩川エコミュージアム植物担当が対応
植生調査をしている「かわさき自然調査団」の平成17年(2005年)の資料提供を受ける。
かわさき自然調査団は、調査をするのが目的で、保護や保全はしていないとのこと。ただし、重要種は標本をとったりして記録保管しているそう。
平成17年(2005年)の資料には重要種も記載されているため、現在もその植物が生きているのか気になります。
そもそも、植生を確認しないとね!!
2023年5月上旬 植生調査班を作る
第一回目調査班結成
・NPO法人多摩川エコミュージアム植物担当
・かわさき自然調査団 植物班
・多摩川自然情報館
・365日野草生活®のん
いくつかの重要種を確認できる。
全体的に特定外来生物を抜くということはせずに、重要種がある場所を起点として範囲を決め、河川の使用許可をとって柵などで囲ったうえで定期的にモニタリングすることに。防除するエリアと、何もしないエリアを調査し、植物がどのように遷移するか適宜植生調査をすることとする。
年に1回はドローンで上空写真を撮影し、植物の遷移を確認する。
※営巣をする野鳥の邪魔をしないこと。
実際にやってみて、どのように植生が遷移するのか、新たな外来種が繁茂するかもしれませんが、それはそれで情報が得られると思って前向きにやっていきましょう!
ということで始まります。
6月4日㈰9:00~
二ケ領せせらぎ館で開催するので、ご興味あればいらしてください。
特定外来生物(植物)防除活動 6月4日9時~ 参加者募集中 | 川崎市 多摩川 二ヶ領せせらぎ館 (seseragikan.com)