第8章 仏の居ます所
第8章 仏の居ます所
私の脳内…う〜ん。
というよりも、おそらく意識の方が近い。
意識の世界を、”意識”したとき。
してしまったとき。
インタビュアーが聴こえない声を発しはじめる。
響かないし、通らない。
耳で聴けない、とてもむずかしい声。
そう、強いていうなら。伝えようとするのなら。
多分…発信源は私の「のど仏周辺」。
血管を通るようにして、細く鈍く。
でも、波紋のように体内に広がる感じ。
そうして伝わってくる感じ。
インタビュアーの音の波紋は数秒で脳内ゆき。
大抵、ヒラギノ角ゴ Pro W6で可視化される。
(時にしねきゃぷしょん、でもやっぱり基本ヒラギノの領地。)
”私の目から見て”、左側から右側にテロップ再生される。
インタビュアーのなにが
私をいちばんに悩ませているか?
いくつかの例外を除き、私はその質問に答えなければならないこと。
にばんめ?
トリガー無く、街頭インタビューのように突発的に聞いてくるところ。
このように私は人生の思考エレメントを
そこに費やしてきたため、幼い頃から
「レイちゃんは今、どこに行ってたの?」
と訊かれていた。何歳なの?くらい、訊かれていた。
発生条件はインタビュアーの主でさえ
掴めない。
DXスペシャル、烏賊や蛸・・・
牡蠣に島いっぱいの青ネギ等。
デラックスもスペシャルも実感なきうちに
消え去っている。
主は『突然!街頭インタビュー!』
に答えていただけだったのに。
《ねえインタビュアーさん、
レイは生まれてこの方。あなたの
正体を知りたいと思ったことさえ、無かったの。
どんな姿かたちをしていて
どんな目の色をしていて
どんな声の音を持っているのか
見えない。聴こえないけれど。
だっていつも“しかるべき時”に
レイに質問してきたもの。
答えているうちは寂しくないように、
そうでしょう。そうやって
見計らうということを、していたでしょう。
あなたが“まちがえた”のは一度きり。
5歳の時の鬼ごっこ。水たまり手前。
一番気に入っていた
シナモ・ロールの薄青の手袋を泥にした以外
あなたが“まちがえた”ことなんて
無かったはずよ。
でも今あなたは“まちがえた”のね。
お好み焼きみっちゃん 総本店で
“まちがえた”のね。》
聴こえる。
注文のベルじゃない。
鈴が鳴っている。
翼…?翼の音が聴こえる、南西?
来る。
斑(ぶち)の鶺鴒が来る。
白と黒、優雅に翻して。
安芸の宮島、結界が一時的に切れている。※
ああ、そういうこと。
ずっとこの時を待たれていたの。
「行かなきゃ。」
「数珠は渡さない。絶対に。」
かろうじて残っていたヘラ先、
フルーティーなソースの味だけが
私の舌…意識の中に浸透していく。
★広島編第一弾、ありがとうございました〜!
※補足
2021年4月、厳島神社の鳥居は工事中だった。
当時は何故?と思っていたが工事中という理由で、おそらく結界が一時的に切れていたのだ。
インタビュアーも、焦るよね。
シナモ・ロールはすでにあなたを許してる。
これだけは言っておきたい。
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