おばあちゃんになったら、かわいい小さな女の子のようになりたい
病院や施設で長年働いていると、高齢者の看護や介護は、高いスキル必要なうえに体力と精神力がいる仕事であることはよく理解しています。
けれど、自分は実際に夜勤をしたり処置をしたりおむつを替えたりといった、看護、介護の仕事をした経験が無いので、本当の大変さは分かっていないことも自覚しています。
患者さんの中には、認知症のために暴言を吐いたり徘徊をしてしまったり、スタッフをとても困らせる方もいらっしゃいますが、
同じ認知症でも、そぶりや物言いが、幼い女の子や男の子のようになる方もわりといらっしゃいます。
病室に行くと、ベッドにはうさぎやプーさんのぬいぐるみがおいてあるおばあちゃん達がいて、
「この子のお名前は?」と聞くと、
「うさちゃんよ」
「プーさんよ」
と、かわいらしいお返事がかえってきます。
もちろん、車いすに乗ってリハビリに行く時も売店に行く時も、いつもその子たちと一緒です。
おばあちゃん達はお風呂のあと、看護師さんにピンクのゴムで三つ編みにしてもらいます。
自分ひとりではできないことが多いので、身の回りのお世話をするスタッフは大変なはずですが、そのおばあちゃん達のいる病室はいつも笑顔が絶えません。
子供の頃、認知症(その当時はボケと呼んでいた)というものは、
だんだんと年老いてきて身体の自由がきかなくなってきた時、
「もしかしたら、自分は近いうちに死んでしまうのかもしれない」
という不安や恐怖を抱かないように、
残りの人生を辛い気持ちで過ごすことのないように、
神様がわざと
「何が何だか、わけわからんちん」
にしてくれているのだと、本気で思っていました。
自分がもし、この先何十年かして
「何が何だか、わけわからんちん」
になってしまったら、
ぬいぐるみのおばあちゃん達みたいに、
周りにいる人も自然と笑顔になれるようなおばあちゃんになりたいなと、
可愛い小さな女の子みたいになりたいなと、
心の中で強く思った1日でした。