「食べたこと」を忘れるおじいちゃんと、「食べること」を忘れたおばあちゃん
こんにちは。
昨夜食べたご飯が思い出せない管理栄養士 美香です。
今日は、私にとっても身につまされる思いの「認知症」ついてお話したいと思います。
すでに獲得している知的機能が持続的に低下し、日常生活や社会生活が維持できなくなっている状態を「認知症」と呼び、
認知症の症状は、中核症状と周辺症状(中核症状によって生じた心理・行動)に分けられます。
中核症状には、以下のようなものがあります。
✅記憶障害
✅判断力の障害
✅問題解決能力の障害
✅実行機能の障害(計画を立てたり、手順を考えることができない)
✅見当識障害(他人との関係性や、今いる場所がわからない)
✅失行(順序だてた行動ができない)
✅失認(状況把握ができない)
✅失語(ものの名前がわからない)
これらの中核症状によって、入院中の患者さんにはさまざまな「食行動の問題」が引き起こされ、私たちは日々対応に苦慮しています。
認知症かも?と最初に家族が気づくやりとりの中に「食事をしたことを忘れるようになった」というのは良く聞く話です。
ついさっき食べ終えて片づけたばかりなのに「いや、まだ食べていない」と言い張るおじいちゃん。
重い人になると、一つのおかずを食べ終えて、ご自分でその食器のフタをしめたはずなのに、またすぐにフタを開けて
「何も入っていない。誰かに食べられてしまった」
と訴えてくる方もいらっしゃいます。
「食べたことを忘れてしまう」方に対しては、10時と15時(人によっては20時も)におやつを食べてもらうとか、タイミングよくリハビリに連れて行ってもらうとか、対処の方法がいくつかあるのですが、
とても困るのが「食べることを忘れてしまった」場合です。
トレイにのせられて目の前にでてきたのは「食べ物」であり、
箸やスプーンを使って、
それら「食べ物」をつまんだりすくったりして口まで運び、
よく噛んで飲み込む。
といった一連の「食動作」を忘れてしまう(分からなくなってしまう)場合は、大変困ったことになります。
自分で自由に歩けるし、食べものを噛み砕いたり、飲み込んだりする機能に問題はないけれど、
「食べるための動作」を忘れてしまったために、
栄養だけでなく水分も十分にとれない状態になってしまうからです。
こちらが介助をしようにも、食事であることの認識が乏しいためか、
頑なに拒否されてしまい、病院にいながら衰弱してしまう恐れがでてきます。
このような「食障害」のある方に対して、病院では以下のような支援をしています。
生活リズムを整える(基本中の基本)
①日中の覚醒を促し、生活時間のメリハリをもたせる。
②場合によっては、睡眠薬などの服薬調整も必要。
食事をする時の環境を整備する
①姿勢が保てるように配慮。(食事中ずっと座位が保てるだけの耐性ができていない場合はリクライニングでも)
②食事が自立している人の目の前に座ってもらうと、その人の動作を見てつられて食べられるようになることがある(困難な動作は介助)
③テレビをみながら食事をするなど、自宅での食事環境に近づける。
④周りが気になる人は、食事に集中できるようにカーテンをひく。
⑤半側空間無視がある場合は、食器を置く位置に注意する。
食事は五感に働きかける工夫をする
①温かいものは温かく、冷たいものは冷たく。
②食器の数が多いと視覚からの情報が過多となり処理ができないので、ワンプレートに盛り付ける、丼ものにする、一品ずつ目の前に置く、など。
③「だしのいい香りがしますね」などと声掛けをしながらすすめる。
④三角や一口大のおにぎりにする。
⑤嗜好品を聞き出して食事のたびに出すと、その嗜好品がきっかけとなって食べることを思い出してくれる。(経験からして、おばあちゃん達にはアイスが人気)
このように、その患者さん個々に応じた食支援を試してみては評価をすることの繰り返しですが、
時間と共にすんなり食べられるようになる方がいらっしゃる反面、
残念なことに何日経っても十分に食べられない方もいらっしゃいます。
ある程度の年齢になれば、それも自然なことなのでしょうが、
チーム医療では「とにかくやれることはやってみましょう」の精神で日々格闘しております。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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ではでは また。みなさんの健康を願って。