コロナ禍で見つけた「癒しの一場面」
何日も家族に会えない寂しさからか、リハビリや食事を拒否したり、部屋から出たがらない日も増え、
「このままでは歩けなくなってしまう」と、皆が心配していたおじいちゃんがいます。
それがある日突然、自分から部屋を出て歩き出すようになり、
「もしや徘徊が始まってしまった?」
とハラハラしながら周りが見守っているうちに、
おじいちゃんの「とある行動」にスタッフは気づきました。
おじいちゃんは、
お昼ご飯のあとデイルームで一人たたずむ、
新しく入所してきたおばあちゃんに会いに行くのがお目当てのようでした。
あんなにもスタッフがあの手この手でリハビリを促してきたのに、
いまは自分から部屋を出て、
「自立歩行〇メートル(可能)」とカルテに書かれていた数字を大幅に塗り替えて、デイルームに向かいます。
そのおじいちゃんにとったら、
おばあちゃんの存在は、エナジードリンクなみの活力源です。
今は1か所のデイルームに入れる人数が決まっているので、
定員オーバーにならないうちに入れるよう、おじいちゃんは必死です。
お昼ごはんもそこそこに、
おばあちゃんの隣の席を確保するためにデイルームに向かいます。
ただし、先におじいちゃんが到着してしまうと、あとから来たおばあちゃんは全然違う席に座ってしまうので、
そこはタイミングがとても大事になります。
だからと言って、おばあちゃんを離れた席から呼びつけるなんて、
そんなはしたないことはしません。
自分から席を立って隣りに座るなんて、
そんな大胆なこともしません。
「たまたま今日も、おばあちゃんの隣が空いていたので座った」
という流れにしたいわけです。
おじいちゃんはとても紳士なのです。
紳士らしく、少しずつ少しずつおばあちゃんの心に近づきます。
その話を聞いた私は、患者さんが昼食をとっている様子を病棟に確認しに行った帰りに、施設のデイルームをのぞくことが、今年に入ってからの日課になっていました。
あのおじいちゃんが、大好きなおばあちゃんの隣の席をちゃんとゲットしているか確認するためです。
三連休が明けた今日も、
二人並んで座る後ろ姿を確認できて、
ほっこり幸せな気分になりました。
ではでは また。みなさんの健康を願って。