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なぜ栄養士は「朝 昼 夕 3食規則正しく」と言うのでしょうか?


「朝 昼 夕 3食規則正しくとりましょう」

栄養士は、この言葉をただ単なる決まり文句として言い続けているわけではありません。

しかし、言われたほうにとってみれば、

「またか!」「そんなこと知ってる!」

という反応になるのではないでしょうか??


今日は、その理由についてご説明したいと思います。

                  

ホルモンの働きに合わせて「食事」をとりましょう

              

「ホルモン」の働きは、人間のホメオスタシスを維持するために重要なもので、栄養素の代謝もホルモンにより制御されています。

からだの中では、生きていくためにエネルギーを産出したり取り込んだりする化学反応がおきており、これを「エネルギー代謝」(栄養素代謝の一つ)と呼びます。

「エネルギー代謝」をコントロールするホルモンの一つが「副腎皮質刺激ホルモン」で、このホルモンには日内変動があり、早朝に分泌が亢進します。その名の通り副腎皮質に刺激を与えて、コルチゾールの分泌を働きかけます。

コルチゾールの分泌により人間は覚醒して活動状態となり、代謝は「異化」に傾き、エネルギーが産出されます。

異化:エネルギーを含む化合物(糖質・脂質・たんぱく質)の分解過程であり、より小さくて単純な最終生成物(二酸化炭素・アンモニア・乳酸など)に変換されること。この反応でエネルギーが産出される

このように、からだの中で「異化」が促進されている状態の時に、しっかり「朝食」をとることにより、脳の覚醒と身体活動が活性化されます。

              

そして食物をとることにより、血糖値が上昇してインスリンが分泌され、吸収された栄養素はインスリンの働きにより「同化」方向の代謝を受けます。

同化:消化吸収により取り込んだ小さく単純な分子が、より大きくて複雑な分子(たんぱく質・多糖類・脂質など)へ合成されること。これにより身体の組織や機能がつくられる。この反応にはエネルギーが必要

      

食後数時間経つと、血糖値が下がり空腹を感じるようになります。すると今度はグルカゴンという、インスリンとは逆の働きをするホルモンが分泌され、足りなくなってきたエネルギー源となるグルコース(糖)を新しく作り出す「糖新生」が始まります。

          

糖新生:筋肉や肝臓に貯蔵していたグリコーゲンの分解、筋肉組織でのたんぱく質の分解、脂肪分解によってグルコースを作り出すこと。

            

貯蔵していたグリコーゲンを分解してエネルギーを得ようとするだけでなく、筋肉でのたんぱく質の分解も徐々に始まってしまうわけですね。

このタイミングできちんと食事をとれば、代謝は再び「同化」方向となりますが、

そのまま長い時間空腹でいると「遊離脂肪酸」が増加してしまい、これはインスリンのはたらきを悪くします(インスリン抵抗性)

                   

つまり、副腎皮質刺激ホルモンの作用により「異化」が促進され、エネルギーが産出されている状態なのに朝食をとらなかったり

1日に1食や2食しかとらず、食事と食事の時間をあけ、長時間空腹の状態でいると、

エネルギーを得るために、筋肉のグリコーゲンやたんぱく質が代謝(分解)されるため、筋力を維持するうえで不都合が生じます。

さらに、遊離脂肪酸が増えるとインスリン抵抗性が高くなり、食事の回数が少ない人ほどドカ食いをするので、食後の血糖値が跳ね上がるうえに下がりにくくなります。

「朝 昼 夕 3食規則正しくとりましょう」という理由はここにあります。      

                

また、夕食から朝食まで、約十二時間の間隔があくこの時間帯は、副腎皮質刺激ホルモン分泌は低下して代謝は「同化」方向となり、糖新生は抑制されています。

特別な事情がない限り、夜から朝にかけては、食事をとらなくてもよい身体になっているのです。

実によくできていますね。

         

カフェ キッチン 2

                 

時計遺伝子の働きを調整する因子が「食事」です

              

栄養素の代謝「時計遺伝子」と深いかかわりがあります。        

人間のさまざまな生理現象は、約24時間の周期で日内リズムを刻んでいます。このシステムのことを「概日(がいじつ)リズム」または「サーカディアンリズム」といいます。体内時計のひとつですね。

概日リズムは「時計遺伝子」により調節されていますが、必ずしも正確ではなく、リズムをきざむ細胞間にズレが生じてしまいます。そのズレを調整する因子を「同調因子」とよびます。

概日リズムの同調に、重要な役割をはたしているのが「食事」です。

「朝は、日光を浴びましょう」とよく言われているように、概日リズムは「光」によりコントロールされていますが、「朝食」は、そのリズムの同調因子としてとても大切な役割をはたしています。

特に、エネルギー源として重要なグルコースと、そのほかタンパク質にも強い「同調作用」が認められています。

朝しっかりと「食事」をとりましょうという理由はここにもあります。


【今日のまとめ】

            

日中に3回規則正しく食事をとることは、人間のホメオスタシスを維持するうえで理にかなったものです。

✔概日リズム(サーカディアンリズム)は、食事をとることにより規則正しいものに調整されます。

副腎皮質刺激ホルモンの働きにより、エネルギーが産出状態にある朝は欠食をしないようしましょう。特に朝食は、概日リズムの調整に大きな役割をはたしています。

✔食事時間をあけすぎると、筋肉のたんぱく質が代謝(分解)され、遊離脂肪酸も増えるため、健康を維持するうえで不都合が生じます。

夜から朝にかけて、副腎皮質刺激ホルモン分泌は低下して代謝は「同化」方向となり、糖新生は抑制されてるため、夜中にエネルギーの高いものを食べると身体に蓄積されやすくなります。

                      

                        

          

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました😘  

               

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ではでは また。みなさんの健康を願って。


参考文献

静脈経腸栄養テキストブック  日本静脈経腸栄養学会(現 臨床栄養代謝学会)
糖尿病療養指導ガイドブック2019   メディカルレビュー社
Nutrition Care     2019 5月号  メディカ出版
食と医療      2020 Vol.12 講談社

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