ふくしま浜街道トレイル ダイジェスト 2 相馬市/南相馬市 松川浦環境公園~原ノ町駅
こんにちは。岩手県宮古市あたりを中心に、みちのく潮風トレイルや三陸ジオパークのガイドをしている人です。みちのく潮風トレイルは南下と北行それぞれの向きで全線を2回踏破しています。
ゲストハウス3710というゲストハウスもやっています。宿泊に限らず宮古市に来たらぜひお立ち寄りください。
この記事は、みちのく潮風トレイルの兄弟分ともいえる「ふくしま浜街道トレイル」の紹介記事です。
基本的にはセクションハイクを想定した情報を提供しています。ふくしま浜街道トレイルの沿線には宿泊施設が多いので、地域振興のためにも、それらの利用を前提としています(公式にテントを張っていいと認められている場所は紹介を入れることがあります)。
登山路なども含まれるみちのく潮風トレイルでは、かなり細かいルートガイドの記事を用意していますが、ふくしま浜街道トレイルは、ほとんどの区間が舗装路の街歩きとなっているため、細かいルートガイドは省きます。
主な見どころや注意点、公共交通とのアクセスポイントなどを南下でダイジェスト紹介していく無料記事です。
この記事では、みちのく潮風トレイルとの重複区間が終わる相馬市松川浦環境公園から南側を、南相馬市の中心地である原ノ町駅までダイジェストで紹介します。
(この記事は2024年4月時点での情報で書いています。あくまで記載の情報は目安として、各自の自己責任にて充分な調査や計画のうえで行動に臨んでください。記載内容の正確性や、記載内容を参考にしたことにより生じたトラブルや事故等について、当方は一切責任を負いかねますのでご了承ください)
■松川浦環境公園~寄木神社
みちのく潮風トレイルの南端である松川浦環境公園から紹介します。
ふくしま浜街道トレイル自体は、新地町の北端にある磯山展望緑地公園が北のトレイルヘッドになっていますが、そこからほどなくみちのく潮風トレイルとの重複区間になり、新地町と相馬市の大部分は同じルートになっています。
したがって、実質的には松川浦環境公園が南下のスタート、と考えてもよいでしょう。
この区間は一部を除いてほとんどが舗装路で、松川浦を南に抜けてからは、民家も点々とあります。高低差もほとんどありませんので、登山装備は不要です。トレラン用の靴、ランニングシューズといった靴のほうが適しています。ただし、途中には商店はそう多くありませんので、ある程度、水分や行動食はしっかり持った方がいいです。
※2024年現在、松川浦大橋から南側は、災害復旧工事のために迂回が設定されており、相馬の百間橋から松川浦環境公園を通らずに松川浦西岸を迂回するようになっています。
みちのく潮風トレイルの南下であれば、このトレイルヘッドで終わりですが、ふくしま浜街道トレイルはここからが本番といっていいでしょう。
松川浦環境公園を出てそのまま松川浦に沿って進みます。
堤防から車道に出て、引き続き松川浦沿いを歩きます。
旅館街の辺りを抜けると、松川浦大橋が見えてきます。この橋に押し寄せた津波の映像も有名ですね。
それを示すように、津波碑。
橋のたもとに、浜の駅松川浦があります。ここから南は、かなりの距離の間、商店がありませんので、南下の場合はここでしっかり休憩と補給をしましょう。
寄り道になりますが、浜の駅から少し北に行ったところに、相馬市の津波伝承館があります。
ルートに戻って浜の駅からは、松川浦大橋に登ります。そのまま橋を渡って南側へ。
砂州を通る道路を南下します。トンネルをくぐると鵜ノ尾岬です。鵜の尾、なかなかいい地名ですね。
トンネルの向こうに、小さい神社があります。奥には灯台もあるようですが、2024年現在は災害のために行けなくなっています。
そこから、松川浦と太平洋を区切っている砂州の上を通る道をずっと南下します。右も左も水面の真ん中を、まっすぐ歩いていくという特徴的なルートです。松川浦のハイライトの一つかもしれませんね。
太平洋側は大須海岸を見ながら歩きます。
松川浦が終わって、メガソーラーの辺りを抜けると、寄木神社に出ます。
久しぶりの、少し高台になっている丘に上がります。丘の上は集落が残っているのが印象的です。
寄木神社の境内を通ります。船の錨がまつられていました。
寄木神社からすぐ近くに、相馬市磯部地区の慰霊碑があります。このあたりも、津波被害が大きかった場所であることがうかがえます。
2024年時点での、鵜ノ尾岬が迂回になっている場合は、この慰霊碑の付近から北側が、松川浦の西岸を県道で百間橋まで北上する迂回ルートになっています。
■寄木神社~鹿島駅
寄木神社を抜けて、南下を続けます。北の相馬方面を一望する眺めがいいですね。
いかにもこの辺りっぽい、田んぼと小さい丘と、点々と民家があるような風景の中を歩き続けます。大きな高低差はありませんが、細かく宅地を抜けたり、果樹園があったり、けっこう風景の変化はあります。
東北の田舎風景、というとこういう風景が思い浮かぶケースも多いのでは?
ため池がちょこちょこあるのは、この辺りから新地あたりまでの浜通りの風景の特徴のように思います。このため池のあたりの水路で、相馬市と南相馬市との境界になっています。
こちらは大きめのため池。釣りをしている人がいました。
この大きなため池から丘を越えると、また田んぼ沿いを歩く道になり、遠目には、JR常磐線が見えてきます。
田んぼの中に墓地が急に現れる、少し不思議な風景です。
常磐線の踏切を渡るところに、コンビニがあります。松川浦から鹿島駅の間では主要な補給ポイントになります。この北は松川浦まで補給が難しいですよ。
踏切を渡って、常磐線沿いに歩くと鹿島駅前の街中になります。
鹿島駅の手前には鹿島御子神社があります。なかなか由緒を感じる神社です。
立派なご神木。
ハイカーならぜひお参りすべき、足尾神社も、境内にあります。
神社からすぐに、常磐線の鹿島駅です。大きな駅ではありませんが、トイレがあり、駅前も開けていますので、松川浦から南側に最初の拠点にしやすいかと思います。
ちょうど、松川浦から20㎞ほど、相馬駅からだと25㎞ほどで、距離感もいい感じですね。
ただ、調べた感じでは、駅前の駐車スペースは基本的には短時間の一時利用だけのようですので、車でアクセスするときは相馬方面や原ノ町駅を拠点にするほうがよさそうです。
■鹿島駅~北泉海浜総合公園
鹿島駅のちょっと手前、鹿島御子神社の付近から、河川敷に出ます。
そこから真野川の堤防上のサイクリングロードをずっと河口近くまでたどります。清々しい道のりです。
堤防からも遠目に見えますが、ちょこちょこ、集落の中に津波の慰霊碑がありますので、そちらをたどりたいときは、堤防ではなく集落のそばを歩いても良いかと思います。
海が近づき、球場が見えます。
真野川の河口近くには風力発電。
津波の慰霊碑。相馬や南相馬のこの海沿いの辺りは、集落があった場所ごとに慰霊碑が建てられていることが多いようです。
少し高台に上がって、火力発電所の敷地の外側をぐるっと回り込みます。
大きな煙突がずっと目印です。
火力発電所を過ぎて、北泉海浜総合公園の北側に出ます。
北側から防潮堤に上がるルートが、関係者以外通行止めになっていますが、これは、車両だけ通行止めのようです。逆に、公園内から防潮堤をたどってきた場合は、通行止めも何もないままこのバリケードの裏に着いてしまって、何も制限がありませんので…。
気になる方はここから入らずにそのまま車道をたどっても公園に着きますので、どちらでもいいでしょう。
北泉公園の中心地に、駐車場やお手洗いと、南相馬市の津波の慰霊丘があります。火力発電所もよく見えます。
丘に登って遊歩道を行きます。途中で、遊歩道の下をくぐる、面白い作りの滑り台があります。アトラクションみたいで、子どもに大人気なのではないでしょうか。
園地を抜けると、桜の植樹。ここからまた、車道に戻っていくことになります。
■北泉海浜総合公園~原ノ町駅
北泉公園からまた車道歩きです。
ここにも慰霊碑。
少し丘になったところで、史跡があります。丘の上のほうは史跡の碑があるだけであまり情報がありませんが、史跡ということだけ分かります。
近くには、お酒が湧いた!という泉の跡も。この泉を見付けた人が長者になったという昔ばなしもあるのだとか。
そこから丘を下りた畑に、やっと立派な史跡の看板があります。辺り一帯が、泉官衙(いずみかんがい)遺跡という、平安時代頃のこの辺りの役所跡だそうです。現地には詳しいことは書いていませんが、史跡公園として整備中のようです。
史跡跡からすぐのところに、泉の一葉松があります。これもなかなか立派なもので見ごたえあります。この周辺は東日本大震災では浸水域に当たるのではないかと思いますが、被害を免れたのでしょうか。
そこから川を渡るルートになりますが、渡る前に川沿いに寄り道すると、面白いオブジェクトがあります。コンセントにプラグを刺した形をしたソーラーパネルです。
津波の跡地に作られた、あすびとパークという子どもたちの体験施設なのだそうです。
裏面もしっかり作られています。こっちが壁側、ということですね。
あすびとパークからルートに戻り、川を渡ります。鮭川食堂。名前のとおり鮭、いくらの季節限定の食堂だそうですね。
川を渡って、川沿いにいくと小さい丘と林が見えてきて、そこにたどり着くと、桜井古墳公園です。
わりと普通の風景のなかに突然あるのですが、おそらく大半の人がイメージしているよりずっと立派な前方後方墳があります。上もてくてく歩けます。
これだけ立派なお墓があるのですから、有力な指導者・権力者がこの一帯にいたということで、おそらく先ほどの泉官衙遺跡がこの辺りにあることとも、どこかではつながっていくのでしょうね。
いちばん大きなメインの古墳の他に、周辺には他にもいくつか古墳があります。ちょっと東側のあたりにも。
桜井古墳から車道沿いに階段から上がれます。
古墳公園自体も、ぐるぐる回ってみたくなりますね。
小さな墳墓もいくつか。
とにかく、当時は辺境も辺境の地だったはずのこんな東北の土地で会うとは思わなかった立派なものです。
古墳公園をあとにしても、まだちょっと遺跡があったりして、豊かな土地だったんだろうなあと思います。
国道6号線を横断するところで、交差点からほんの少し寄り道で、道の駅南相馬があります。原ノ町駅方面は、意外と物販系のお店は少ない印象なので、道の駅に立ち寄るほうがおすすめです。
年末に道の駅に立ち寄ったら、「お帰りなさい」の看板とお振る舞いをやっていました。
南相馬市にも原発災害による帰還困難区域や避難区域があり、解除から間もない地域や、現在も元の居住地に戻られていない方もまだ多くいるようです。
もしかしたら、「お帰りなさい」には二つの意味があるのかもしれない、と想像しました。
ちなみに、この「よつわりパン」は、南相馬市のソウルフードの一つなのだそうです。道の駅に何種類か売っていました。四つに線が入っていて、あんこと生クリームに、ヤマザキパンの「スペシャルサンド」と同じような赤いアレ、というのが基本的な組み合わせのようです。行動食にぜひ。
道の駅南相馬から原ノ町駅に向かって、ロードサイド型のレストランやお店があります。
原ノ町駅は大きな駅で、仙台方面からの列車と東京方面からの列車の接続駅です。特急ひたちもすべて止まります。線路をまたぐ跨線橋がとても長いです。
また、ホテルやコンビニ、スーパーも近隣にあります。有料ですが駐車場もありますので、拠点として文句なしです。相馬周辺の次は原ノ町を拠点にすると、南北の数市町村分ぐらいは容易に移動できますね。
今回の区間はここまでです。
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