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09chiharu
リッスン
娘のハトちゃんとお風呂に入るのが好きだ。
ちょっと前までは、二人で入っても泳げるくらい広かった湯船は、ずいぶん狭くなった。今二人で向かい合って入るとぎっしりだ。
そこで、ハトちゃんの内緒話を聞くのが大好きだ。
体を隅々まで洗って、つるつるツヤツヤの身体を温かいお湯に沈めた時、リラックスして話しやすくなるのだろうか、ハトちゃんは色んな内緒話をしてくれる。
バスタブは私たちの身体でぎっしりで、聞こえるのは窓の外の風の音とお湯がたてるポチャンという水音だけ。ほかには誰も聞いていないのに、湯気が立ち込めるなか、ハトちゃんは小さな声で話しだす。
-ひとことも聞き逃さないように、よく耳をすますことをリッスンというのではなかったかな。
そう思いながら、ハトちゃんの話を聞く。
あのね、先生さあ、学生の時合唱部だったじゃん。音楽の授業になると、一番通る声で大きく歌うんだよ。さいきん女子は大声で歌うのが恥ずかしくて小声で歌ってるけど、ハトちゃんは先生みたいに歌ってみたいな。
あのさ、おじいちゃん、可愛いよねー。
甘いものが大好きで、ママからお菓子を食べ過ぎちゃだめって言われているのに、つい一袋食べちゃう。何個食べたのか分からなくなるんだよきっと。だから、ハトちゃんが数えてる。
あのね。あのね。ハトちゃんの好きな○◯は、やさしくてゆっくりした子じゃん?誰かから好かれてるって気づかないんじゃないかなと心配してる。だから、ハトちゃんは給食当番の時には◯◯の好きなおかずを大盛りにしてあげてんだよ。気づけ〜って思いながら。
あのね、あのね、
で始まる内緒話はキラキラしていて眩しい。
笑いながらも集中してみると、言葉が湯気の粒子に混じって見えてくるような気がする。
リッスン。
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