豆のうえのおひめさま
先日娘と散歩していたら、畑の中から「持ってって〜」と言われてビニール袋とハサミを渡された。みると、つやつやした葉っぱの間にスナップエンドウがたくさん実をつけていた。娘のハトちゃんと競い合うようにして豆ちぎりをして、ほくほく顔でビニール袋に詰めて帰った。
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お豆を食べた日、寝る前にハトちゃんに豆繋がりでアンデルセン童話の『豆の上に寝たお姫様』のお話をしてあげた。
あるところに本当のお姫様をお妃に迎え入れたいと考えていた王子様がいた。王子様は世界中をまわって本当のお姫様を探したが、何かしらよくないところがあって本当かどうか疑わしいお姫様しか見つからず、王子様は失望した。ある嵐の晩、ひとりのお姫様がお城にやってきた。お姫様は雨でびしょぬれであったが、自分は本当のお姫様だと言った。王妃は試しにベッドの上に一粒のエンドウ豆を置き、その上に敷布団を二十枚敷き、さらにやわらかい羽布団も二十枚重ねた。お姫様はその上で寝ることになった。
朝になり、城の者が寝心地はいかがでしたかとお姫様に聞くと、お姫様はなにか固いものがベッドの中に入っていたため体中に跡が付いてしまい眠れなかったと答えた。二十枚の敷布団を敷きその上に二十枚のやわらかい羽根布団を重ねてもエンドウ豆が体にこたえるというほど感じやすい人は本当のお姫様に違いないということで、王子様はこのお姫様をお妃に迎え入れた。
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ハトちゃんは目を輝かせて聞いていて、「本当のおひめさまってお布団がふかふかしていても、その下の固い豆に気がつくんだねぇ。ハトちゃんは分かんないわぁ。」って言ってしきりに感心していた。
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スゥーッ。スゥーッ。と寝息を立てて寝始めた娘の横顔を見ながら私は思った。
「ハトちゃん。あなたは間違いなくおひめさまだよ。」
ママやパパやおじいちゃん、学校の先生達、デイサービスの先生達、私たち大人からすると、ハトちゃんの身の回りは驚くほど快適に整えられているように見える。お風呂に入って清潔を保ち、適度にご飯を食べて、温かいお布団で眠って学校へ行く。
でも、本人には発達障害の特性があって、私たち大人の想像がつかない所が気になって気になってしょうがない人なのだ。そこには、本人にしか分からない空豆があるのだ。
例えば、踏切の遮断機が降り、電車が通過する時にたてる音が待ってられない位、苦痛でたまらない。
例えば、全校朝礼の放送中にじっと机に座り続けるのが暇すぎて耐えられない。
例えば、例えば、……。
ハトちゃんの空豆を思いながら、布団の中で考えた。
私は空豆が気にならないように沢山の羽布団を重ねている人になっている気がする。その空豆があってもやりすごす方法や空豆を取り除くやり方をハトちゃんに教えてあげよう、と思いながら眠りについた。
まてよ、空豆って結構大きい。
ゆっくり料理してやる!