さまよう心
それは、電車の中のイレギュラーだった。
いつからいたのだろう。
あっちへヒラヒラ。
こっちへヒラヒラ。
乗客の頭上を飛ぶ。
みなが目で追わずとも、心でトレースしていた。
小さな薄茶の蛾。
自然界から離れて、
高速で移動する連なる鉄の箱へ迷いこんだ。
頼りなく彷徨う。
その状況は一瞬で変わった。
扉近くで文庫本を読んでいた美女が、
広げた文庫本を扇のように操って
そばにいた蛾をふわりと誘導し
外へ出て行ったのだ。
その場にいた皆々が
美女に誘導され
鉄の箱を降りた。
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ハトちゃん(娘)と一緒にアイス食べます🍨
それがまた書く原動力に繋がると思います。