思いっきりの
中学生からこっち、無表情で通してきた。感情を顔に表すのは危険なことだとずっと思ってきたから。(情を表すから表情なんですよ、奥さん。)それは、思春期には死を意味する。悟られてはならない。本当の気持ちなんて。
今、一人娘を育てていて思う。
「ちょっとアレじゃない?」というくらいハリウッド女優ばりのオーバーアクションで喜怒哀楽を示さないと、幼な子には伝わらない。そして、親の表情を見て生物としてかなりの情報を受け取っているらしい。ということは、子育てに必要なのは思いっきりの笑顔だ。
マスクをしていると口を覆われてしまい、笑みが伝わりにくい。口角を上げたくらいでは、分からないのだ。
(ん?微笑という言葉は廃れていくのかも。)
それで、私は笑っていると伝えるために、頬の筋肉を盛り上がらせ目は恵比寿様のように逆Uにし、可能ならば声も添える。
もちろん、体の底から湧き出してくる喜びの感情はダダ漏れしている自信がある。お習字の時間の後に学童へお迎えに行ったら、毎回ダルメシアン犬みたいにブラウスが染まっていた娘のハトちゃんが、一点の汚れもなく綺麗な状態で登場した日には、歓声をあげて褒めたたえた。
ところが平常時の笑みは、マスクをしていると伝わりにくくて、困る。
目力。目力が欲しい。
お母さん、笑ってるんだよ。
あなたが好きよ。
って素直に口元にも出てる笑みをどうしたら伝えられるのかしら。
やむなく、頬の筋肉を盛り上げて目の横に小皺を寄せてみることとなるのだった。
⭐︎⭐︎
昨日、ハトちゃんはハイチュウぶどう味を食べながら言った。
「お母さんが笑ってるのか、怒ってるのかなんてさー、マスクしててもお面かぶってても分かるんだから!」
「へ?」
すでに12個入りのハイチュウがだいぶ少なくなってきていて、食べ終えた包み紙の数を目でさりげなく確認していた私は、「8個も食べておる!」と怒ろうかなと思っていたところだったので、無表情で聞いた。
「今は?」
「怒るかどうか迷ってる」
なんと!悟られてる。
ハトちゃん(娘)と一緒にアイス食べます🍨 それがまた書く原動力に繋がると思います。