お揃いなんだな

そっかぁ。うんうん。良かったねぇ。

気がついたのは、サブバックにぶら下がっているマスコットを見た瞬間。フェルトで作られていて、手縫いで、独特の味がある作風だったからすぐにピンときた。

電車で通勤しているとついつい目の前に立つ人の持ち物が目に入ってくるものだ。私が乗る路線の沿線には幾つかの高校があって、色々な制服の学生が乗っている。きりりとポニーテールをした彼女は、いつも英単語をスマホで勉強していた。その子のバックパックには隙間なく缶バッチと手製のマスコットがくっついていて私の通勤を楽しませてくれていた。モチーフのチョイスが少しだけニッチなので、それが何なのか考えるのが楽しいのだ。

チョコビのパッケージに描かれているピンク色の怪獣

ピタゴラスイッチの四角い犬

よんきびう隊の鹿

アリエルの親友の黄色い魚

彼女のチョイスにすっかりファンになっていた私は、先日、目が釘付けになってしまった。電車の扉近くで話に興じる男子高校生達の中の一人が持っているサブバックに、独特の作風のマスコットがぶら下がっていたから。

コレナンデ商会の口がぱっくり開いている人形

さすが！ナイスチョイス。と賛辞を送った。
そっかあ。うんうん。良かったねえ。
と、私は一人でニヤニヤして、頷き、若い二人のことを祝福した。そして妄想。

部活を終えて、体育館から出る。コーチからずいぶん細かい指示が出て、それを一人でやってみていたから、いつもより遅くなってしまった。扉を閉めて、振り返ると、そこにポニーテールのあいつがいた。
「おす。」
「遅いね。今日も頑張ってたんだ。」
「そろそろ新人戦だからな。」
「あのさ。いらないと思うけど、コレ。」
「ん。おまえ、作ったの？サンキュー。」
ぶらんと人差し指からぶら下がる小さなマスコットを、あいつの手から受け取る時、少しだけ指先が触れ合った。

うーむ。アオハル。

後日、ポニーテールの彼女のバックパックに新作を見つけた。それは、目立たない位置につけられていた。それは、コレナンデ商会の人形だった。
私は、心の中でガッツポーズをした。

素敵なカップルは、存在だけで、周りを温めるよ。
ほんと。