「ADVENTUNE3」を、自分なりの解釈で書いてみる。
皆様、お久しぶりです。
前回の記事から半年以上も経ってしまいました(いつもの)、Patch Skywalker(パッチ・スカイウォーカー)です。
というのも、その期間は色んなことがあったので中々執筆出来ずにいました。
そんな中でも、沢山のVTuberさんがデビューしたり卒業したり、それに合わせて新曲が沢山リリースされていきました。
~まえがき~
特に今年は、桐生ココ、御伽原江良、鈴原るるの卒業がかなりのビッグニュースだったのではないのでしょうか。
この三つは本当にびっくりした……
側近だと、かしこまりのRe:ACTへの移籍や、渋谷ハルが主賓の新事務所「merise」の設立など、沢山の出来事がありました。
そして先日、とある"コンピレーションアルバム"の第三弾が発売されましたね?
もうタイトルにも書いてありますが、ADVENTUNE3です。
ADVENTUNEシリーズは、「ある物」をテーマに、それぞれのアーティストがそれぞれの解釈で曲を作るコンピレーションアルバムです。
第一弾のADVENTUNEは「RPG」、第二弾のADVENTUNE2は「悪人」がテーマとなっており、今回のADVENTUNE3は「武器」がテーマとなっています。
僕はADVENTUNE2一曲目の「欺いたままで」がめちゃくちゃかっこよくて、そこから引き込まれるようにハマっていった民なので、「次はどうなるんだろう」という期待がありました。
待望の第三弾「ADVENTUNE3」は、僕が想像していたよりも遥かに壮大なアルバムだと感じたので、今回は収録曲全曲の感想を書いていきたいと思います。
01:もし世界が終わるなら、僕らは選択する / 隣町本舗&HACHI
一曲目は隣町本舗とHACHIの二人によるこちらの曲。モチーフは”拳銃”。
隣町本舗さんの”寂しいけど爽やかな”メロディを、話題の歌姫HACHIさんと共に歌う超豪華タッグ曲です。
こちらの曲、イントロから既に世界が滅んでいて、その世界が滅ぶ間際を描いた「終わりの始まり」を描いている曲です。
最後の方で「引き金は、まだ」の後に一旦音が途切れるのですが、ここで拳銃を撃った事で世界が滅んだのか……
その後に盛り上がっていたのが、急に鳥のさえずりが聞こえてきたのが余計に……
この演出でホアァァァアアアアアーッ!!!!となりました。
いやこれすっごいなぁ……
MVも凄く綺麗だし二人の声も素敵だし最高すぎる……
しかもこれが一曲目ってのが恐ろしい……
02:for good / yosumi
二曲目は[ahi:]プロデュースで、yosumiが歌う楽曲。モチーフは"大鎌"。
クロスフェードの時、一番のサビのみが流れたのですが、ここだけだとまだかわいくてアガれる曲だなという印象でしたが、いざフルを聴いてみると「なんだこれ!?!?!?」と衝撃を受けました。
一気に「ドゥウウウウウンン!!!」って殴ってくるんですよ、音で。
とにかくここで強く持ってかれましたねぇ。
やばかった。
イラストも凄く綺麗で、MVも力が入っているので是非見て聴いてほしい。
03:君はプレデター / 花奏かのん
三曲目は、花奏かのんによるこちらの曲。モチーフは"フライパン"。
最初見た時「フライパン????武器なのこれ?????」と思いましたが、よくよく考えたら、女の子にとってフライパンはある意味"武器"なんですよね。
そういう意味も含めてこの曲を聴くと泣きそうになるんですよね。
というのもこれ、失恋ソングなんですよ。
「同棲していた彼氏と別れたけど、少しだけ未練が残ったままの女の子の感情」を、可愛らしく、ほろ苦く描いた曲になっています。
水色のフライパンを目にした時に思い出す、元彼との幸せだった日々……
サビの「君はプレデター 透明なキバに食べられて 心に火をつけて 放っといて 焦がしちゃって 食べ残したままさようなら」という歌詞に、女の子の感情が全て詰まっているような気がします。
Cメロの「君がふらりと「ただいま」って いつでも 帰ってこれるようにさ 玄関のチェーンは外しておくから なんて意味ないのに」もせつねぇ……せつねぇ……ってなって心がきゅうっと締め付けられましたね。
ここからまたサビに入るのもまた切ない……
"武器"という物騒なテーマの中でよくこれを思いついたなと、かのんちゃんの発想力、想像力に驚きましたね……
普通にみんなに聴いてほしい。
04:拝啓、友へ / 環右金
四曲目は、環右金によるこちらの曲。モチーフは"ゴムパチンコ"。
先ほどの「君はプレデター」のフライパンと同じく「これ武器なんか???」と疑問を持ちましたが、一応これもれっきとした武器にはなります。
ただしパチンコというのはおもちゃとして扱われており、厳密に武器として扱われるのはスリングショットと呼ばれるらしいです。
「君はプレデター」が失恋ソングだったのに対し、こちらは少年時代の思い出を描いており、これはこれでまた切なくなる曲になっています。
少年時代を共に過ごした友との楽しかった思い出と、いくつもの衝突、そしてその過去があったからこそ今の自分がいるという感謝の気持ちを、環右金さんの歌声に乗せています。
いやぁ、友達と過ごした少年時代っていいですよねぇ……
どんな事であれ、友達と遊んだ思い出って色鮮やかに残るので、余計にぶっ刺さりますよねぇ……
05:ドカンバキャンボコン / ぼっちぼろまる
五曲目は、ADVENTUNEシリーズ発案者のぼっちぼろまるさんによるこちらの曲。モチーフは"戦車"
「ドカンバキャンボコンドカンバキャンボコドカンバキャンボコンドカンバキャンボコン」と唐突に始まるクセの強い曲ですが、収録曲の中では一番明るい曲調だと思います。
クロスフェードでもいきなり来たので「なんじゃこりゃ!?」と驚いたのも覚えてますw
ぼろまるさん特有の中毒性の高いメロディと歌詞と、一部にIKZOネタが入ってたりと面白い上にアガれるので、元気出したいときに是非如何でしょうか?
MVも物凄くカオスな上に70's風に作られてるので、そちらも注目。
06:Digmen Funk / BOOGEY VOXX
六曲目は、CiとFraの二人組ユニット「BOOGEY VOXX」によるこちらの曲。モチーフは"ドリル"
いやぁああ~~~~~ビートが気持ちよすぎる!!!!!
重低音とCiの力強い歌声とFraのラップが合わさって更にかっこいい。
モチーフがドリルということもあって、地下労働に纏わる物や情景が歌詞に散りばめられています。
中でも、二番Aメロの「上見たら足元 下見たらマグマ」が一番"地下らしさ"を感じれてとても好きです。
とにかくかっこいい。
07:ネイビィ / アザミ
七曲目は、アザミによるこちらの曲。モチーフは"傘"
正直に言うと、クロスフェードで聴いた時に一番グッと来た曲です。
和テイストのメロディと、そのメロディに合わせた巧なワードセンス、そして何より、数ある武器の中から"傘"を選び、そこから天気雨、日本の俗説で言う"狐の嫁入り"を描いた曲になります。
もうこの曲の全部に引き込まれるんよこれ。
特に二番の歌詞がね……凄く良いんですよ……
めでたけりゃ手を合わせて
誓いあって見つめておくれよ
よその声など聞かぬが仏
愛し合うなら火もまた涼し
共に逝ければと願う子よ
嗚呼愚か者はもう許せぬか
君を消し去る世界など
一人残らず生かしてはおけぬ
ここから一気にサビに入った時のあのゾクゾク感凄いんですよ。
勿論サビの部分も凄く好きですが、一番ゾクッて来たのはここでした。
実はこの曲、2分24秒(ストリーミングだと2分27秒)とかなり短いのですが、その時間の中でここまでゾクゾク出来るのってほんとに凄いと思います。
いやぁアザミさんすげぇよ……
08:懐刀 / 市松寿ゞ謡
八曲目は、市松寿ゞ謡によるこちらの曲。モチーフは"懐刀"。
ここにきていきなりガチガチのホラーチックな曲になりました。
市松寿ゞ謡という方も、ホラーがメインの"市松人形VTuber"らしいので、納得はいく。
タイトルにもなっている懐刀は、古来日本に護身用に持っていた守り刀の事で、いざという時に助けてくれる事から、絶大な信頼を得ている部下、家臣などに対して使われる比喩表現にもなっているほど。
メロディが不安定なのに、歌声だけが安定しているのがなんともいえない不気味さを感じます。
でも、サビがめっちゃかっこいい。
メロディも不安定だし、ぱっと見は怖い。
でも、自然と引き込まれてしまう。もう一回聴きたくなるような中毒性もあって、中々面白いですね。
気になって調べてみたら、オリジナル曲が結構あって、おまけにゲームも制作しているんだそう。
めっちゃマルチな方でびっくりしました……
09:Fly Forward / AMOKA
九曲目は、AMOKAによるこちらの曲。モチーフは"弓矢"。
VRChat音楽文化のパイオニアの一つ、AMOKAが遂にADVENTUNEに参戦。
ものすんごい綺麗で疾走感のあるメロディだし、あいぽさんともいさんのハーモニーほんっっっっとに綺麗なのよ……
モチーフが弓矢というのもあって、前へ進む勇気を、まるで矢のようにまっすぐ飛ばせてくれる歌詞で描かれています。
様々な解釈で描かれている曲が多い中、シンプルにテーマに向き合っていてとても素敵だと感じました。
サビからのメロディがめっちゃ好き。かっこいい。
MVも全てVRChat内で撮影しているとのこと。ほんとに綺麗ですよね……
10:マンハッタン / あくまのゴート
十曲目は、あくまのゴートによるこちらの曲。モチーフは"原子爆弾"。
最初にモチーフを見た時「は?」と目を疑ってしまったこちらの曲。
なんせ"原子爆弾"という、数々の悲惨な出来事を引き起こしてしまった兵器、生半可で扱うものではない非常に難しいモチーフなのですから。
どんな曲になってしまうんだろうかと不安でいっぱいだったのですが、いざ聴いてみると、「おいおいとんでもねぇもん作ったなぁ!!」と、いい意味で裏切られました。
というのもこの曲、原爆の父であるロバート・オッペンハイマーが戦後抱き続けた後悔を、ゴートさんなりの解釈で歌にしているからなのです。
この曲は、ロバート・オッペンハイマーが第二次世界大戦時代、ロスアラモス国立研究所の初代所長に任命され、マンハッタン計画を主導してから、広島・長崎に原爆が投下された後、自身の犯した大きな罪に後悔するまでを描いたノンフィクション曲になっています。
MVに出てくる赤ん坊とポッチャリなおじさんは、「リトルボ-イ」と「ファットマン」を擬人化して表現したものです。
全ての歌詞に色んな意味が散りばめられていますが、中でも僕が驚いたのは、二番Cメロの歌詞。
Now I am become Death, the destroyer of worlds.
誰もが武器を捨て 平和になるかもね
Now I am become Death, the destroyer of worlds.
言ってみただけだよ そんな事ある訳ない
マンハッタンを聴いた後にWikipediaを見た時に見つけた記述がこちら。
オッペンハイマーは後年、古代インドの聖典『バガヴァッド・ギーター』の一節、ヴィシュヌ神の化身クリシュナが自らの任務を完遂すべく、闘いに消極的な王子アルジュナを説得するために恐ろしい姿に変身し「我は死神なり、世界の破壊者なり」と語った部分(11章32節)を引用してクリシュナを自分自身に重ね、核兵器開発を主導した事を後悔していることを吐露している。 ※Wikipediaより引用
ここを上手く落とし込んでるの流石としか言えない……凄い……
その前にも「「さぁ義務を果たせ」と」と3フレーズ続く場面があるのですが、そこに続いてこれが来るので、よく考えたなぁと思いました。
とてつもなく悲惨な過去、自分の犯してしまった罪、どうすれば良かったのか、色んなことを考えさせられる。そんな曲なんです。
ラスサビの「これで僕たち皆クソ野郎だ」に、オッペンハイマーの気持ちが詰まっていると僕は感じました。
間奏の部分で星条旗っぽいメロディになるのがなんとも皮肉というか……
とにかく難しいテーマをこうして作り、歌い上げたゴートさんにただただ脱帽してしまいました……本物の天才ですよ……
じっくり聴いてみてほしい。
特に8月6日と8月9日、そして終戦の日の8月15日に……
11:守るよ / sumeshiii a.k.a.バーチャルお寿司
ADVENTUNE3のラストを飾るのは、バーチャルお寿司さんのこちらの曲。モチーフは"盾"。
クロスフェードで初めて聴いた時、「やってくれたなぁ!!!」と叫びました。
それもそのはず、今までの拳銃、大鎌、フライパン、ゴムパチンコ、戦車、ドリル、傘、懐刀、弓矢、原子爆弾と、全てのモチーフ曲を歌詞の中に入れているのです。
おまけに"盾"という防具をモチーフにしているので、沢山の意味で"守る"という歌詞を書いています。
バーチャルお寿司さん特有の世界観と、「ADVENTUNE3」というアルバムがここまでに紡いできたいくつもの物語がここに収束し、全てから"守り"、物語は終わりを迎える。ラストを飾るに相応しい名曲となりました。
途中の曲で「これいい!!」ってなってましたけど、アルバム全曲通して聴くとバ寿司さんに全部持ってかれるんだよなぁ……
それぐらい完成度が高いです。ほんとに素晴らしい。
~全体を通した感想~
いやぁほんっっっとに良かった!!!!!!!!!!!
まずはこの一言に尽きます。
テーマを元にアーティストさんが作り出す世界観と物語と、それぞれの物語を収束し、全てから"守ってみせる"。そんな感じのアルバムなのではないのでしょうか。
特に「ネイビィ」と「マンハッタン」と「守るよ」は、僕の中でもインパクトが強かったですね。
「マンハッタン」は、先述したように「原子爆弾をモチーフに、ロバート・オッペンハイマーが生涯抱き続けた後悔を描いたノンフィクション楽曲」であるが故、色々なことを考えさせられるメッセージ性の強い曲です。
まず、モチーフとして"原子爆弾"を扱うことにも驚きましたが、何よりそれを優しく、どこか悲しく、そしてメッセージを問いかけている曲を書き上げたのがほんとに衝撃的でした。
その後に「守るよ」が来るので「やってんなぁ!!」と叫びましたね。
正直、僕はアルバムの収録曲をバラバラで聴くタイプの人なんですけど、このアルバムは「全部順番で聴きたい!」と、心の底から思ったアルバムでもありました。
いや、単体で聴いてもいいけど、全部聴くことでこのアルバムの凄さがはっきりと伝わってくる。
全人類ADVENTUNE3を買え。
これは間違いなく名盤、V界の歴史に刻まれてほしいレベルです。
買えとは言ったけど、この記事で紹介してしまったので、「もっと高音質で聴きたい!!」という方、各種ストリーミングサービスで配信中なので、
皆さん、買いましょう。
ちなみにこれはおまけなんですけど、もし「ドカンバキャンボコン」のイントロを歌ってみたいという方、ぼろまるさんからこちらのチャレンジ企画が(唐突に)始まったので、こちらのリンクから是非チャレンジしてみましょう!
事の発端がこちら。
~あとがき~
ここまでADVENTUNE3の感想を書いてきましたが、ほんっっっっっとに良いアルバムなので、皆さん是非買ってほしいです。(というか無印と2も買え)
とはいえ、「マンハッタン」は、テーマがテーマだけに、変な人たちが騒ぎ立てて炎上しそうなので、そこだけが非常に心配です。
久々の記事でも、相変わらず限界オタクを発揮していましたが、記事を書くことで、Twitterよりも「これすき!!」をまとめて伝えることが出来るので、何かをまとめて紹介したいときに非常に有効だな、と改めて実感しました。
これからも仕事で忙しくて記事を書く暇が無くなるかもしれませんが、それでも、書きたい時に書けたらいいなと思いながら日々を過ごしていきたいと思います。
日常は、音楽で彩られている。
だからこそ、みんなで音楽をかたろうじゃないか。
それでは、Patch Skywalkerでした~。