ににちゃんの主訴
ににちゃん?
梅雨のまま、ずるずる日が過ぎていた。
夏は、まだ先、2020年7月中旬頃。
ににちゃんは、マウソックから朝のおやつをもらうため、いそいそとお部屋の入口で待機していました。
くりくりした目をこちらに向けて、期待に満ち溢れている顔をマウソックはじっと眺めました。
ににちゃんは、さっきほんの一つの行動をした。
たわいもない行動である。
けれどもその行動は、奥深くマウソックの意識に差し込まれました。
明るい声で声をかけると、期待に満ちたににちゃんの横に手を差し出しました。ににちゃんは、ちろり、手を見ましたが、逃げるでもなく、そのまま側にいました。
抄うようにしてすばやくににちゃんを手のひらに乗せ、早々にお部屋から出しました。
え?なんで?まごまごしているうちに手のひらに乗ってしまっている自分に驚いているににちゃん。
えー!いつの間にこんな高いところに来ちゃったの?何度も手のひらから下をのぞき込んでいます。
マウソックは、手の中で動き回るににちゃんの観察を始めました。
動きに問題はない。体温はやっぱり高い。マウソックの目は、うっそうと茂る疑念をかき分けるように観察を続けました。
薄い灰色のベールをまとった空から、さわさわと雨が降っていました。
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