📖①『ゴミ屋敷を救え！社会復帰への道』１-１-３：桜木さんと家事

桜木さんは何処からどうやってきたのだろう？僕は気になっていることを聞いてみた。

前回

#木琴コンビ #深琴と真琴の琴棋書画
#ゴミ屋敷 #精神病 #社会復帰への道 #創作エッセイ

---

---

魔法と着替え

2023/12/24(日) 15:00 葛木家 深琴の部屋

深琴
「ゴミ屋敷の案内も終わりましたし、桜木さんの話を聞かせてください。鏡の中から来たってどういうことです？」

僕は先程から引っかかっていたことを聞くことにした。

真琴
「そのままの意味よ。魔法を使って……」

魔法……？

真琴
「あら、こちらの世界には存在しないの？まあ、私もそこまで高度な魔法が使えるわけではないのだけど」

どうやら桜木さんが元いた世界には魔法が存在するらしい。異世界から来たってことか。ラノベみたいな展開になってきたな。

深琴
「本当に魔法が使えるなら見せてくださいよ」

真琴
「良いわよ。……あら？なぜかしら、使えないわ……さっきまでは使えたのに……」

えー……ちょっとがっかりしてしまった。魔法が使えるなら魔法でこの家をどうにかして欲しかったのだが。

真琴
「困ったわね……着替えとかどうしましょう……」

深琴
「着替えなら、僕のボロで良ければお貸ししますが」

真琴
「うっ……仕方ないわね……お借りするわ」

桜木さんは嫌そうな顔をしたが、しぶしぶ頷いた。

深琴
「あー……でも下着はさすがに僕のじゃ嫌ですよね……しょうがないのでそれはネットで買いましょう。サイズを教えてください。安いので良ければ注文します」

桜木さんは一瞬顔を赤らめたが、こしょっと教えてくれた。胸が僕より大きいな。どっちみち買わないとダメそうだ。

---

お仕事

同日 16:00 葛木家 深琴の部屋

桜木さんの適当な下着を注文したあと、今度は元いた世界で何をしていたのか聞いてみた。

真琴
「両親の会社で社長秘書をしていたわ」

真琴
「ご両親、会社を経営されていたんですね。すごいなぁ。ちなみにどんな会社なんですか？」

桜木さんはなんだか気まずそうな顔をした。なんだろう？なにか地雷を踏んだだろうか。

真琴
「なんだって良いじゃない。それより、こちらの世界でのお仕事はどうしたら良いのかしら？」

そういえば、そうだな。僕も現在は病気で無職だが、桜木さんもこちらの世界では無職だ。元社長秘書の肩書があっても、そもそもこちらに住民票がない。まともな職につけるか怪しいだろう。けど、何もしないニートでいるのも退屈だろうしな。どうしたものか。

深琴
「とりあえず、うちで家事手伝いでもしたらどうです？洗濯とか、掃除とか、したら母さんが喜びますよ」

真琴
「使用人にお願いしていたから、やったことが無いわね……でも、分かったわ！お世話になるんだし、やってみましょう！」

そうか、お嬢様だから家事の類はしたことがないのか。大丈夫だろうか。不安げな僕の顔を見て桜木さんは、任せなさい！と意気込んで見せた。

---

掃除

同日 17:00 葛木家 深琴の部屋

真琴
「何よこれ！きゃあ！虫が出てきたわ！」

ベッドの下からゲジゲジが出てきた。うっ、僕も虫は苦手だ。

真琴
「痛っ！荷物に足をぶつけたわ！」

動線に置かれたダンボールをまたぐ時にやられたようだ。僕もよくやる。

真琴
「掃除機ってどうやって使うの？まあ！ゴミが溜まっているわ！」

この前、僕の部屋の床を掃除したときのゴミだな。捨て忘れてた。

深琴
「手こずっているようですが、大丈夫ですか？」

桜木さんは首を横にふった。

深琴
「まあ、無理もないです。家事をしたことのないお嬢様が、いきなりゴミ屋敷の掃除をするだなんて、そもそも難しいことなんです。僕だって手こずってますから、気にしないでください」

桜木さんは申し訳無さそうにしょんぼりした。

---

皿洗い

同日 17:30 葛木家 深琴の部屋

深琴
「次は皿洗いに挑戦してみたらどうですか？」

僕は自分で言って、やっぱり無理そうだなと思った。なぜなら、僕もこの家で皿洗いをするのは難しいことだと思っているからだ。流しに積み上がったままの食器、あるのに活用されない食器棚。母さんはそれでも器用に皿洗いしているが、さっきの調子だと桜木さんにも難しいだろう。

真琴
「何も出来ないわね……私……役立たずだわ……」

そんな悲しそうな顔をしないでくれ。僕まで泣きたくなってきた。

深琴
「今日はもう遅いです。僕は明日、リワークがありますし、シャワーでも浴びてゆっくりしましょう。先に入ってきてください」

埃っぽい所を触らせてしまったしな。桜木さんの高そうな服の洗濯はどうしたら良いんだろう。クリーニングに出してもらった方が良いかな。洗濯機で洗ったら痛みそうだ。

真琴
「リワーク……？よく分からないけど、それじゃあ、お言葉に甘えてお先に失礼するわ」

---

シャワー

同日 18:30 葛木家 深琴の部屋

桜木さん、大丈夫かな。どれがシャンプーとか分かるだろうか。教えるのを忘れてた。まあ、容器に書いてあるし、大丈夫か。

真琴
「上がったわ……」

なんだかゲッソリしている。どうしたのだろう。

真琴
「ねぇ、ここがどのような場所なのかは理解したつもりだけど……お風呂ぐらい、もうちょっとキレイにしない……？シャワーを浴びたのにお風呂場のカビや水垢に気を取られてスッキリしなかったわ……あと、シャンプーが私の髪に合わないみたい。バサバサになってしまったわ」

なるほど……。シャンプーは我慢してもらうしかないが、風呂場の汚さはたしかに僕も気になっていた。

深琴
「それじゃあ、明日、僕がリワークに行っている間に風呂場の掃除をお願いします。まずは床のタイル掃除だけで結構です」

真琴
「そうね、分かったわ。なんだかヌメッとしていたもの……」

風呂場の足場が汚いのは良くない。うん。良くないな。

真琴
「あと、化粧品を貸してちょうだい。スキンケアがしたいわ」

しまった。しばらく、スキンケアなんてしていなかったから、そのへんはあまり持っていないな。とりあえず、今日は母さんのを貸してもらおう。安いやつしか買えないが、明日リワークの帰りにでも買うか。

そんなこんなで僕もシャワーを浴びたあと、一緒に夕飯を食べてその日は寝ることにした。明日は初めてのリワーク、遅れるわけにはいかない。こういうのは最初が肝心だ。

真琴
「おやすみなさい、深琴」

深琴
「おやすみなさい、桜木さん」

予定があるのに腰を痛めたら大変だと言われて、その日は僕がベッドを使わせてもらった。客人を床に寝かせるのは申し訳なかったが、お言葉に甘えさせてもらうことにした。

---

次回

登場人物紹介

目次