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お話し会の様子。目に見えないほど小さな世界にも気づくこと

お、お話し会?…ふんわりしてるけど、どうやって声かけようかな~と思いつつ、noteをひねり出したのが開催1週間前。近藤の心配をよそに、当日は集まるべくして集まったというかんじの3人が来てくれました。大根おろしとお醤油のようにすっとなじむ、調和した空気感。

宮沢園芸のこじんまりとした事務所では、灯油ストーブが赤々と燃え、上に置かれたやかんからシュンシュンと湯気が出ていました。講師、宮沢正和さんが笑顔で話します。1月16日(木)の朝9時半、お話し会は参加者の自己紹介から始まりました。

集まった方たち

参加された方の詳しいことは割愛しますが、家庭菜園で野菜を育てている方やご両親が農業をやっている方など、野菜を育てる環境が身近にあるお母さんたちが集まった印象です。「よくわからないまま野菜作りを続けてきた」「(有機栽培の)野菜の育て方を教わる場所がなかなかない」という声も聞かれました。たしかに。

有機とは?

そもそも有機栽培ってなんでしょうか。よく聞くけど、イメージがふんわりしてませんか?

有機と無機の違い

宮沢さんは、有機栽培と無機栽培を対比させてお話しされます。無機栽培は、慣行農法と呼ばれる現代の日本の主流であるやり方です。チッ素、リン酸、カリをはじめとする化学肥料。これらは、無機物肥料なのだそうです。

一方、有機栽培は、生ごみから作られる堆肥(たいひ)など、自然にあるものを活用して野菜を育てます。堆肥や落ち葉は、「有機物」なんだそうです。これが、土の中にいる微生物たちのごはんになるのです。ごはんをあげて微生物たちを元気にしながら、野菜も育てていくのが有機栽培。

パン作りで例えると、自然酵母の予備発酵のイメージに近いと思います。眠っていた酵母をおこして元気にしながら、パンを発酵させる力をつけていくかんじです。

有機栽培は土壌が豊か。だから「化学肥料?いらないよ〜野菜十分育つんだもん!」「農薬?ん〜そもそも虫の被害がないんだよね」というかんじです。野菜を土の中の微生物に育ててもらう、土とともに育てる方法です。目には見えない小さな生き物たちの世界。見たいような、見たくないような(虫とか苦手)。

栽培方法が違えば収穫物も違う

無機と有機、全然違う方法で野菜を育てるのですが、どちらの方法でも『にんじん』は作れます。『ブロッコリー』も作れます。でも、見た目も味も「全部反対なの」と宮沢さんはいいます。

一例を挙げると、こんなかんじです。

<皮の厚さ>
・有機:皮が薄くなる
・無機:皮が厚くなる
<香り>
・有機:香りが強い
・無機:香りがうすい
<味>
・有機:酸を少なく感じる。糖度高く、コクのある味
・無機:舌をさす酸を感じる。糖度低く、苦みある味

宮沢さんから許可を得て作成資料より一部抜粋

「普段、野菜をそんなに味わって食べてないなぁ~」「ドレッシングの味しかわからないな~」という方もいるかも…?ちょっと湯がいて、オイルとお塩で食べるのおすすめです。口にすると香りがふぁ~っと鼻に抜けます。

有機と無機で、食べ物のもつエネルギーも違うんだそうです。無機栽培の野菜はエネルギーがなく、ぐちゃりと腐りやすい。有機栽培の野菜は腐らず、置いておくと形を保ったままカラカラになります。

有機と無機を比べるとき、わたしはよくムキムキ筋肉を思い浮かべます。

有機栽培の野菜は、大工や鳶職の引き締まった筋肉。太陽の下、長い柱を担ぎ、釘を打つ中で培われた、細くて締まった筋肉。

無機栽培の野菜は、プロテインを飲んでできたボディービルダーの筋肉。長い柱は担げなさそうだけど、見た目がすごい筋肉。人間の体ってこんなになるの、ひぇ~。

イメージ伝わりますか?

減農薬はどこに分類される?

有機と無機について、近藤は「農業の方法ってそんな白と黒みたいに二分できるのかな」という疑問もわいたのですが、そういうグラデーションは考えつつも、聞く人にわかりやすくするためにこのような対比の表現をされたのかもしれない、とも思います。

一方で、透明な水に墨汁を一滴垂らしたときのように、たった1回の農薬散布で、土の中にいる微生物の生態系は跡形もなく壊れてしまうのかもしれません。減農薬など「なるべく減らそう」と心がけていても、有機栽培の土とは全く異なるのかもしれません。文末が、「かもしれません」だらけです。宮沢さんに今度聞いてみます。

キャベツ398円に違和感ないですか?

近年の野菜の価格高騰は、無機栽培の限界がきているようにも思います。単に価格が上がっているだけではなく、昨年はお米などの流通が少なく、入手しにくい状況もみられました。

こちらのNHKの番組内容をまとめた記事では、化学肥料の世界的な価格高騰の一方、有機栽培が広まってきている(市場規模の拡大)という情報も紹介されています。

NHK|クローズアップ現代『コメも野菜も…“国産”に機!?▽ある農作物を求め行列が』(2023年8月29日)

国が発表している情報も少し探してみました。

以下には、家畜のえさ(原料はとうもろこしなど)、肥料の原料の価格高騰について、グラフ付きで載っています。ただし、2021年~2023年を中心とした動向で、世界的感染症やウクライナ戦争の真っただ中です。現在とは、また違った状況なのかもしれない、とも思いつつ。

農林水産省|令和4年度 食料・農業・農村白書『第1節 世界的な食料情勢の変化による食料安全保障上のリスクの高まり

ガソリン価格の高騰みたいに、自分の努力ではどうにもできないものもありますが、野菜の価格高騰や米不足は自分で対策ができるんです。ベランダにプランターを置いて育ててみる、農家さんから直接購入する、そこらへんに生えている野草を食べてみる(!)など、いろんな方法があると思います。

参加した方のご感想

最後に、参加したみんなで今日の感想を話しました。

普段、自分が考えていることをより詳しく知れて、コンプリートした感じ。野菜に気持ちが通じると思うと、なんかうれしい。有機栽培で育ててみたい。

うちのおばあちゃんは、うどんも手打ちで作ってくれていた。それを食べて育った子が、大きくなってからよそのうどん屋さんで食べたときに「ばあちゃんのうどんと同じ味がする」と言っていたのを思い出した。手作りの味はずっと記憶に残るんですね。

(お話し会では、おにぎりひとつとっても、握る人の念が入るといった話題もでました)

子どもが小さいときにもっと畑に連れてけばよかった~!え?中学生、まだ間に合います?

帰りがけ、楽しそうに話す方、一つひとつ言葉を確かめるようにして「意識だけでも変えてみたい」と話す方、皆それぞれの様子が印象的でした。

一つの価値観で世界を染めたいわけではない

こういう参加無料の活動をすると、「宗教や政党がらみのあれね」と思う方もいるかもしれません。無機栽培の危険性と、そこから派生する国への疑念、政治問題、西洋医学と東洋医学、ワクチン問題うんぬんについても、宮沢さんはお話しされます。そういう政党もありますが、関係はありません。

それらの主張に対しては、見方のうちの一つ、どちらが正しいというのはないよなぁと、近藤は今のところ距離を置いています。

目に見えているものには、目に見えていない背景がある

私は、料理以外にライターの仕事もしていて、昨年からは、環境問題に関する内容を扱っています。記事を書く仕事を通して、情報の組み合わせ方で認識をいかようにも操作できる、という怖さをしみじみ感じています。

ギャンブル依存症のひとが、本当はパチンコを打ちたいと願っているわけではないように、
不登校のひとが、学校を休みたいと思っているわけではないように、
虐待するひとが、叩きたいと思っているわけではないように、
目に見えていることには、目に見えていない背景がある。

テレビ、SNS、ネットニュース、自分が一部分だけを切り取って決めつけていたら、自制しよう。見えている部分より、実際はもっと複雑。視野が狭くなりやすい自分への戒めです。

健康ひとつとっても、さまざまな見方があります。

今後も、いろんな考え方を知る「機会」は、誰でも手の届くところに置いておきたいなと思います。

宮沢さんのお話し会は、2月にまた開催するようです。よろしければどうぞ。noteでお知らせします。

この活動に共感してくださる方は、興味のありそうなご友人にシェアしてくださるとうれしいです。誰にでも手の届くところに、知る機会を!

▼この記事のURLはこちらです
https://note.com/34susecooking/n/n2fe9d5bd16e8



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