日本の家は寒すぎる──『「断熱」が日本を救う』に救われた話
寒いですね。
私は東京に住んでいますが、とても寒い。
そもそも家にいても寒い。
え、もしかして家に原因がある……?
そう思って読んだ書籍が、『「断熱」が日本を救う 健康、経済、省エネの切り札』(高橋真樹/著・集英社)でした。
そしてこの本に“救われた”ので、ぜひ紹介したいと思います。
途中にお得な情報があるので、ぜひ読んでくださいね。
断熱後進国・日本。住宅性能が悪いせいで人命も失われている
日本人は「がまんの省エネ」が当たり前
性能のよいエアコンをつけても、窓際が寒い。
足元が冷えるのに、上だけ暖かい。
でもエアコンを強くすると電気代がかかるので、我慢している……。
こんな我慢を強いられるのは、日本の住宅の断熱性能が悪いからです。
特に、ヨーロッパの家と比べて性能が劣っています。
家を建てたことがある方や、住宅に興味がある人はご存知かもしれませんね。
日本の一般的な住宅は気密性が低いので、いくら冷暖房をしても、どんどんと暖気(冷気)が逃げていってしまいます。
著者はこれを「穴だらけのバケツ」に喩えています。
日本の住宅は、どんなに水(=エアコンのエネルギー)を注いでも、バケツが穴だらけなので、どんどんエネルギーがダダ漏れしている状態です。
本当ならばバケツの穴をふさぐ(=住宅の性能を上げる)必要があるのですが、なぜか「もっと水(エネルギー)を注げ」という方向に議論が進んできました。
もっと「水」を注ぐと、とんでもない電気代がかかります。
マクロで見ても、海外から数十兆円かけて燃料を輸入しているので、国益も損なわれています。
だから、夏は暑くても我慢する。冬は寒くても我慢する。
それが省エネのためだから……。
「がまんの省エネ」になっているのですね。
夏は暑く冬は寒い「家」は、当たり前ではない
「それって古い家だけじゃない? うちは断熱性能がいいと言われているけれど」と思われた方もいるかもしれません。
日本で断熱性能がトップレベルと言われている住宅は「断熱等級4」なのですが、国際的な基準と比較すると、まったく凄くないと筆者は指摘します。
しかも、欧米や韓国などでは住宅の断熱性能の最低基準が法律で決められているのですが、日本では2025年にやっと、省エネ基準適合が義務化されるという“後進国”状態です。
(この辺りは書籍に詳しく書かれてあるので、ぜひ読んでみてください)
最も大きな原因はアルミサッシ!
住宅の中で最も熱が出入りしやすいのは、窓やドアなどの開口部だそうです。
夏は太陽光の熱が窓から入ってきて、冬はエアコンの暖かい空気が窓から出ていきます。
窓はガラスと窓枠(サッシ)が組み合わされていますが、日本はアルミサッシ。
実はアルミサッシがメインの国というのは、先進国では日本だけです。
他の国では、熱伝導率の低い樹脂製や木製のサッシが主流。
しかもアルミサッシは結露が起こりやすいので、カビやダニが発生しやすく、アレルギーを引き起こします。
最近でこそ樹脂製のサッシが増えてきましたが、それでもまだ他国に遅れを取っています。
脱衣所や浴室、トイレが寒いせいで、ヒートショック死につながる
この国では、必要な部屋のみエアコンをつけるのが一般的ですよね。
しかし、エアコンが効いた部屋とそうでない部屋の温度差は半端なく、冬はヒートショックで死亡する人も多いです。
ヒートショックで死亡する人は、交通事故死の6倍以上だそう。
対して欧米や韓国では、人のいない部屋も暖める「全館暖房」が一般的です。
全館暖房と聞くと「光熱費が半端ないのでは? エコではないのでは?」と思うかもしれませんが、これらの国の家は断熱性能がよいので、それほど光熱費はかかりません。
何より、廊下や脱衣所、浴室やトイレも暖かいので、ヒートショックのリスクも下がります。
日本は住宅の性能が悪いせいで、人命が失われているのです。
エコハウスという選択がある
エコハウスは、冬は暖房なしでも室温20度
「じゃあどうすればいいの?」という場合、選択肢に入るのは「エコハウス」です。
エコハウスというと、ログハウスや自然素材の家と思われるかもしれませんが、違います。
高気密・高断熱の家のことで、それほど電気を使わずとも快適に過ごせる住宅を指します。
私はかつて、エコハウスを取材したことがあります。
取材の日は外気温が10度程度でしたが、お家の方が「暖房をつけなくても、室温はだいたい20度くらいありますよ」とおっしゃっていて、本当にびっくりしました。
もちろん、居間だけが暖かいのではありません。廊下やトイレなどもそのくらい暖かいのです。
しかし高気密・高断熱というと「夏は暑い」というイメージを持たれるかもしれません。
本書の著者はエコハウスに住んでいますが、夏も快適だと言います。
川越という暑い土地にもかかわらず、直射日光を遮っておけば、2階のエアコン1台で家全体が25〜26度程度を保てるのだそうです。
日本人の常識からすると、驚きですよね。
性能の低い住宅をそのままにしてきたのは誰?
私はこの本を読んで、いったい日本の家というのは何なのだろうと考えてしまいました。
これではオール欠陥住宅ではないか。
冬は寒く夏は暑い、エアコン代がかかって大変……それは当たり前だと思っていましたが、日本の常識は世界の非常識でした。
「日本は気候がいいから、これまでの家で十分に対応できていた」「ここ数年の異常気象が原因だ」と言う人もいますが、本当にこれまで「十分に対応できていた」のでしょうか?
確かに気候変動による異常気象は深刻ですが、そもそもそれ以前から、冬は寒く夏は暑い家は当たり前でした。
本書の著者は言及していませんが、私は3つの黒い存在を想像してしまいます。
それは、
・建築コストが低く、性能も低い家を高く売りたいハウスメーカー
・電気をどんどん使わせたい電力会社
・行政機関
ですね。
これ以上言うと身の危険がありそうなので、やめておきますが……。
窓を変えよう
<その1>
令和6年度補正予算により、2023年から継続している省エネ住宅への大型補助金制度が引き続き行われることが決まりました。
大型補助金制度『住宅省エネキャンペーン』の継続事業で、以下4つの補助金制度があります。
「先進的窓リノベ2025事業」(環境省)
「子育てグリーン住宅支援事業」(国土交通省)
「給湯省エネ2025事業」(経済産業省)
「賃貸集合給湯省エネ2025事業」(経済産業省)
この中で一番補助額が大きいのが、高断熱窓への補助金制度「先進的窓リノベ2025事業」です。
先進的窓リノベ2025事業は、上限を200万円として、高い断熱性能を持つ窓へを改修する費用の1/2相当を定額補助するもの。リフォーム事業者が申請し、住宅所有者等に全額還元することが前提です。
高い断熱性能を持つ窓への改修とは、内窓設置や外窓交換、ガラス交換により、高性能な断熱窓(Uw値1.9以下、建材トップランナー制度2030年目標水準値を超えるものなど)へリフォームすることを指します。
対象となる世帯:全世帯
対象となる工事:住宅の所有者がリフォーム事業者に発注して実施するリフォーム工事で、申請する補助額の合計が5万円以上
対象となる住宅:既存住宅(戸建住宅及び共同住宅(集合住宅)の別は問わない)
これまで性能の低い住宅を放置していた政府が、重い腰を上げました。
利用しない手はないと思います。
<その2>
もう一つは、数百円でできる方法です。
それは、「窓にプチプチを貼る」(アナログ)。
凹凸の空気層を持つプラスチックは、空気や水蒸気を通さない性質を持っています。
コツは、
①凹凸部分をガラス側にする
②サッシ枠まで覆う(アルミサッシが原因だからです)
③プチプチの重なり部分はしっかり塞いで隙間がないようにする
この3つ。
一年で最も寒い時期を、うまく乗り切りたいものですね。