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東北紀行 vol.1 1日目「試練」【東京~秋田】

みなさん、こんばんは。

前回の記事では、東北紀行のvol.0イントロと題して、なぜ僕が東北に行ったのかについて主に書きました。

今回からは、いよいよ5日間の旅の模様を1日ずつ書き綴っていきたいと思います。

今回は、早速1日目についてです。先に1日目のテーマを示しておくと、それは「試練」です。様々な意味で試練がありました。以下、一日の行程を辿りながら一つずつ見ていきたいと思います。

鈍行で秋田へ

今回の旅では、JRの青春18きっぷを使いました。1日目には、その切符で鉄道を乗り継ぎ、秋田までたどり着きました。もちろん鈍行です。

青春18きっぷ

JRの王子駅を朝の10時半頃出発し、秋田に夜の22時半頃到着しました。実に12時間の列車の旅です。

実は、今回の旅では事前に十分に旅程を組んでいなかったので、行きの電車では、どのルートで東北を回ろうか考えたり、ホテルを探したりと、せわしく過ごしていました。僕は、予定を立てるときにすごくワクワクするタイプなので、この時間はとても楽しかったです。

そこで立てたプランは、以下のような形です。

●1日目:秋田まで行って、そこで一泊。
●2日目:五能線で白神山地をめぐる。その後、青森・弘前まで行ってそこで一泊。
●3日目:弘前と青森市内をめぐり、その後三陸鉄道に乗って岩手・宮古まで行き、そこで一泊。
●4日目:同じく岩手・陸前高田、宮城・気仙沼に行き、震災遺構をめぐる。その後同じく岩手・一関まで行ってそこで一泊。
●5日目:平泉を観光し、その後常磐線に乗って福島・双葉町に行き、まちをめぐる。その後そのまま常磐線で東京に戻る。

実際の旅は、良くも悪くもほとんどこの通りに進みました。

一つ目の「試練」

秋田までの鈍行旅は、前半はこのように楽しく過ごしていたものの、後半になるにつれ、だんだん疲れてきました。僕はその時、非常に初歩的なことであるにもかかわらず、青春18きっぷで途中下車可能であることを知らなかったため、空腹になっても途中駅で降りて小腹を満たす、というようなこともできませんでした。

乗換駅のような大きな駅には改札内でコンビニや売店など何かしらあるだろうと思い込んでいた僕は、昼食を除いてほとんど何も食べることができずに秋田まで向かうことになりました。

途中の乗換駅の米沢駅。空腹を満たすために自販機でアイス最中を買って食べる。

自分の情報収集不足を恥じるばかりですが、これが試練の一つ目です(きわめて軽い試練でしたが)。青春18きっぷの仕様を知らなかったという軽い意味だけでなく、地方の駅の改札内には何もないということを知らされたという意味でも、試練でした。この後旅を通じて、(地方出身であるにも関わらず)地方の実態に対する認識の甘さを痛感する機会は実際何度もありました。

二つ目の「試練」

それでも鉄道のいいところは、乗っていれば目的地に着くということです。実際22時半頃には秋田駅に到着しました。

秋田駅に到着

さて、ようやくご飯が食べられると期待したのも束の間、その期待はすぐに打ち破られました。駅前の飲食店がすべて閉まっていたのです。

まだ開いている居酒屋を発見したのですが、中はほとんど客がおらず、店員さんに入れるか聞いてみると、まだ閉店まで余裕があったにも関わらずもう受付は終わったと言われました。僕の地方の実態に対する認識の甘さが出ました。

駅前に人もほとんどいませんでした。

それまでに足を踏み入れたことのないいわば「辺境」の地において、夜道を一人で歩き、どの店にも入れない。僕は秋田という土地から「疎外」されているような気がしました。

三つ目の「試練」

仕方なくコンビニでパンを買って食べましたが、もはやその段階でほとんど食欲は失われていました。

その後、一日目の「宿」に向かうことになります。費用をできるだけ抑えるため、一泊目は快活クラブで泊まることは、あらかじめ決めていました。快活クラブ自体は利用したことがあったものの、夜に泊まったことはそれまでありませんでした。

快活クラブまでは、駅から歩いて30分くらいでした。が、この30分が第三の試練でした。

考えてみれば当たり前ですが、駅前でさえ人がいないのに、駅から30分歩いて人気のある道があるわけがありません。想像以上に、快活クラブまでの道のりは、薄暗く、孤独で心許ないものでした。

駅から快活クラブまでの夜道

正直、出身地である松山でも、同じような道はたくさんあります。でも、松山は20年弱住んできたまちです。夜道も何度も一人で歩きました。慣れなのか愛着なのか、夜一人で歩いていても、怖いと思うことはありません。

しかし、未踏の地秋田の夜道は、客観的には松山のそれと同じものでも、主観的には非常に恐ろしいものに見えました。Googleマップが指定して来る道が毎回小道ばかりなのでなおさらです。

とはいえ、歩き続けること30分、なんとか快活クラブまでたどり着きました。近くにはすき家があり、見慣れた名前の店を見つけて一安心した記憶があります。この後、いたるところで大手チェーン店を見つけては、奇妙なことになんとなく安堵を感じることになります。

四つ目の「試練」

なんとか快活クラブまでたどり着いたものの、中に入ってみると個室は空いておらず、ブース席で一夜を過ごすことになりました。

実際にブースに入ってみると、そこはなかなか過酷な環境でした。隣のブースからは人生で聞いた中で一番大きないびきが聞こえてきました。また別のブースからは、夜食のラーメンのスープのにおいが漂ってきました。トイレで歯磨きをしていたときに、同じく洗面台を使いたいと見受けられるおじさんが、僕が先に洗面台を使っていることが気に食わないのか、足を床に何度もたたきつけていました。

様々な意味で、変な人ばかりでした。おそらくこのようなことは東京でも同じことだと思いますが、それまで快活クラブで泊まった経験のなかった僕はたじろぎました。ある種の社会の裏側を垣間見た気がしました。

そんな環境で安心して眠れるはずもありません。疲労していた僕の体に、さらなる疲労が蓄積されました。

ひたすらスマホで「眠れる音楽」みたいなものを流して、脳をリラックスさせようとしました。

その結果、なんとか数時間の睡眠は確保できました。

このような中でも、一つだけ少し嬉しいことがありました。それは、快活クラブのPCのコンテンツを漁っていたところ、テンミニッツTVという教養メディアの中で、僕のゼミの先生の動画を見つけたことです。その先生の顔を画面越しに見るだけでも、かなりの安心材料になりました。



こういうわけで1日目は終了しました。僕の人生経験の浅さから来る様々な試練を味わった一日でした。これまで、いかに物事の表側ばかり見てきたかを痛感させられました。

こうした中で、当然、家が恋しくなりました。しかし、この時点ではまだ家に帰りたいという思いには至っていませんでした。

二日目には、より本格的に旅をし、様々な意味での光と影が突きつけられることになります。

そんなわけで、二日目についてはまた次回。(続く)