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消灯前

 本当にここ最近聴き始めていた音楽ユニットが、今年の夏に活動をやめてしまうらしい。個々の活動が続くものだとしても、残念だ。
 今年の夏、東京と大阪でライブをして、それが最後のライブとなるらしい。彼らの灯りが消えてしまったとしても音楽も思い出も残るのだろうけれど、その名前で新しいものが出ないということ自体をさみしく思う。

 先述した通り、私は「ここ最近聴き始めた」いわゆる新規のファンだ。それでも、過去に出たアルバムやEPをサブスクで繰り返し聴いて自分なりに楽しんでいて、その中で親しみを覚えていた。未熟で朧げだけれど、意志を持ってそこに立つ人たちとして尊敬もしていた。
 数少ない知識ではあるけれど、彼ら彼女らが最初は客席側の人間だったことは知っている。どんな思いであちら側へと至ったのか、想像することしかできないけれど、少なくともその頃のことを捨て去るようなやり方はとっていなかったように感じている(これは良し悪しの話ではない)。このユニットの楽曲と存在に感じる危うさと若さは、捨ててこなかった強さと、捨てることができなかった弱さからくるのだろうか。

 だから、というのも変な話だけれどひどく安心するのだ。曲を聴いて、声を聴いて、MVを見て、とても心が凪いだ。この人たちが次にどんなものを聴かせてくれるのか楽しみにしていたりもした。だからこそこの事実はやはり、残念だ。

 けれどこの先の道が何もなくなるわけではない。形が変わっても、あるいは私が観測できなくなったとしても、あの曲たちをコンテンツを生み出した人たちがこの世界を生きているというのを思い出すだけで、きっと楽になるものもあるはずだ。
 消灯まで約3か月。静かに、見守らせてください。

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