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CaribouとOvermonoのライブを観て、なぜ歳をとってからダンスミュージックにハマるのか考えた

洋楽を聴き始めたのは高校生の時であるが、最初の入口が何だったか記憶が曖昧だ。

アヴリル・ラヴィーンやブリトニー・スピアーズを聴いていた記憶もあれば、アイリッシュ音楽が好きで聴いていた記憶もある。

どの音楽もいまでもそれなり好きであるが、その後洋楽にのめり込むようになったきっかけは、当時ブームとなっていたガレージロックだ。
The StrokesやRazorlight、The LibertinesにBlock Party、The White stripesなど多くのバンドに夢中になり、そこから90年代、80年代、70年代と過去のロックバンドも遡って聴くようになった。

ロックは昔から若者の音楽だ。

周囲からの孤立や世の中への不満、自分自身への苛立ちなど、いつの時代の若者が抱える悩みに共感してくれて代弁してくれた。
Queenが愛への渇望を、The Smithが孤独を歌ったように、どの時代にも若者の気持ちを代弁するバンドがいた。

ライブやフェスに行き始めて驚きがあった。世の中にはこういうアーティストが好きな人がこんなにもいたのかと。自分以外にも同じような気持ちをもった同志がいたんだと驚き嬉しかった。


2024年10月の3週目、普段あまり来ない渋谷に2度訪れた。
同じ週にCaribouとOvermonoの来日公演がそれぞれあり、どちらも渋谷にあるSpotify O-Eastが会場だった。
Caribouは朝霧JAMの出演に合わせた単独公演、Overmonoは2023年のフジロック以来の来日公演だ。

Caribouはリリースしたばかりの新アルバム『Honey』からの曲をメインに、鉄板曲を入れた、ゴリゴリのダンスミュージックメインで、バンドセットとは思わせない圧巻のライブだった。
個人的には『Honey』は歴代のアルバムの中でもトップクラスで好きで、中でも「Only you」はライブのアレンジも良くてお気に入りの曲になった。

Caribou@O-EAST

Overmonoはアルバム「Good Lies」をメインに添えつつ、Fred again..とLil Yachtyとの共作「stayinit」なども交えたセットリストで、フロアを熱狂させていた。おなじみのドーベルマンのVJも印象的だった。

重低音が心地よいovermono

完全にダンスフロアと化したO-Eastで無心に踊った。
時には派手なVJさえも見ずに、目を瞑って音だけを感じて踊った。
もはや禅の修行のように、仕事や将来のこと、様々な煩悩を忘れ無心で踊った。
ひたすら音に身を委ねる、とはこのことだ。

いつからだろうか、ライブハウスで激しいサウンドとモッシュでぐちゃぐちゃになってストレスを発散することから、ダンスミュージックを聴きながら目を瞑り、無心に踊ることが増えた。

ダンスフロアで祈る時間が増えた

おそらく30歳過ぎから徐々にそうなってきた気がする。
なぜなのか?

単にモッシュに突撃する元気がなくなったのか、はたまた、怪我や疲労を考慮して守りに入っているのか。
それもあるかもしれないが、我々は怒れる若者から社会の歯車の一部になってしまったのだ。
大人になる過程で様々な経験を重ね、若い時の負の感情の発生源を寛解していく。

大人になると様々な責任が増え、仕事だけでなくプライベートにおいても日々の決断をしなくてはいけない機会が増える。
一説によると、人間は1日に3万5千回決断をするという。決断をするというのはそれなりに労力がいる。1つ1つは大きくない決断も、積み重なるといつのまにか我々は心的なストレスを負っているのだ。
決断するには情報も必要だ。

あふれる情報の中で、脳も疲弊してしまっている。
そんな時、ロックの熱いメッセージや、ポリティカルな主張は重く感じてしまう。
我々は情報から解放され、無心に踊りたいのだ。
昔のように怒れる感情は無くなってしまったかもしれない。だけど、音楽に頼るのは若い時も今も変わらない。まさにNo Music No lifeだ。
また踊りに出かけよう。

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