不゜倫をばらまけ 備忘録
不謹慎な話題をまた一つ、2023年に置き捨てておこうかと思います。
それはプリンの話です。いずれは海よりも深く考えてみたい話題の一つなのですが、ここでは軽めに書き散らしておくことにします。
『ふしぎ・プルプル・プルリン・リン!』というのは、懐かしや、アニメ版『N・H・Kにようこそ!』における作中作『へんしん魔法少女ぷるりん』のオープニングです。とりあえず頭を空っぽにして聞いてみてほしいです。(こっちも良い)
サビに「魔法少女(ショージョー(*‘∀‘))」というリフレインがありますが、どうにもショーコーと聞こえて仕方がない。これは『彰晃マーチ』への当て擦りなのではないかと疑います。
メロディラインの相似。
『NHKにようこそ!』のヒロインは新興宗教の二世信者です。なので宗教への当て擦りがあってもおかしくはないのです。(「ぷるりん」は原作には無い、アニメ版ならではの意匠です)
まずは、どうしてプリンなのかについて考えてみましょう。
これはサリンからの着想です。サリンが世を騒がした1994年(松本サリン事件の頃)、ザ・タイマーズは『サリン』を「プリンをばらまけ」と変えて歌っています。一見かわいいだけのプリンがサリンと韻を踏んで剣呑になる。
そのプリンもといサリンをまいたオウム真理教が布教においてメディアミックスをうまく活用したことを私たちはよく知っています。彼らはアニメを作り、歌を作り、街頭で信者を躍らせ、選挙活動に勤しみつつ、テレビへの露出も欠かしませんでした。それは、そもそもどうして信者でもないのに私たちが『彰晃マーチ』を歌えてしまうのか、ということと関係しています。例えば同じ新興宗教でも幸福の科学における『彰晃マーチ』の対応物を私たちは知りません。天理教の『みかぐらうた』、「悪しきを祓うて(…)」の発声は一度聞けば耳に残り続けますが、それでも人口に膾炙しているとは言い難い。それは歌の感染力の差ではなく、布教の作戦の違いによるものです。
ゼロ年代、『NHKにようこそ!』またメディアミックスに乗ります。そこでこの
が生まれています。
アニメ文化をとりまく環境へ向けた痛烈な皮肉と見ることもできるでしょう。(後にはアキバで『ハレ晴レユカイ』を踊ることにもなる)オタクたちの無防備さがこの曲では批判されています。バカバカしい『ふしぎ・プルプル・プルリン・リン!』にゼロ年代のオタクたちが熱を上げたわけでは勿論ありません。が、一世代前のマンガ・アニメのマティエールが作中作としてさらに戯画化され、無批判な反復を演じさせられていること、そのことはアニメ制作陣による、状況へ向けた批判的応答と受け取ってよいものです。
高座で諸手を挙げて「金正日万歳」を絶叫する立川談志を見て、観客たちは笑うというよりも苦笑しました。彼らは日本人がかつて「天皇陛下万歳」と絶叫した歴史について無自覚ではなかったからです。それと似た屈折した笑いを『ふしぎ・プルプル・プルリン・リン!』は与えていないでしょうか。
メディアミックスに向けた批判はメディアミックスをもってして初めて根本的な批判になりえます。そしてその批判は未だ、十分ではありません。このような視座に立ってのみ、『NHKにようこそ!』は今も読んだり見たりに堪えると思います、『ふしぎ・プルプル・プルリン・リン!』は聞くに堪えると思います。