半沢直樹は見ません!
銀行員、入ってからのいい思い出がほとんどない。入社前に有頂天だったので、落差があまりにも大きかった。
半沢直樹のドラマが大人気だが、1度見ただけだ。堺雅人ははまり役だと思う。他のドラマや映画では、妙なツッパリ感が鼻に付くが、彩度とコントラストを最大限にしたような作品だと収まりが良い。でも、見ない。
男女雇用機会均等法の制定は1985年、施行は1986年。みみずが銀行を卒業したすぐ後だ。曰く「企業の事業主が募集・採用や配置・昇進・福利厚生、定年・退職・解雇にあたり、性別を理由にした差別を禁止することなどを定めている」とあるが、どうなんでしょう。
半沢直樹でも女性は脇役だ。上戸彩がカワイイ奥さんを演じているのにもゲンナリする。
雇用機会均等法の後も、銀行に勤める女性からの人生相談などを見かけると、つい目が追ってしまう。みみずがいた頃とちっとも変っていないのを確認し、複雑な気持ちになる。辞めて正解!と同時に、ふざけんな!とも思う。
男女平等の世界ランキング、日本は153カ国中121位。年々順位を下げているらしい。どういうからくりなのだろう。
これから先は大昔の話なので、今の就活生には関係ないといいな、と思っている。
みみずは経済学出身だが、優秀な学生でも有名な大学でもなかったので、その年の文系学生の人気4位のその会社は全く対象外だった。入社するつもりも入社できるつもりもなかった。にもかかわらず受験したのは、他社に備えて受験慣れ、するためである。
初めての説明会は、秋になったばかりの頃。説明会とはいっても、第一次審査なのは皆、承知していたが、冷やかしみたいな調子のみみずは、普段着に毛の生えたようなというか、デートにでも行くような、白いニットカーディガンと揃いのプリーツスカートと言う格好だった。リクルートスーツの中では明らかに浮いていた。
感じの良い若い行員と15分ほど話したが、どんな話をしたのか全く覚えていない。会話が弾んで楽しかったことだけ記憶している。
いくら何でも場違いな服装だったので後悔しきり、これを教訓に次に生かそう、と思っていたら、次の面接日が知らされた。
そんな感じで進んでいき、年末頃には、身辺調査の調査員と思しき人が自宅周辺をうろうろして帰り、気が付いたらなんとなく決まっていた。
他からも内定があったので、無論迷いはあった。
そのうち一つは、神田にある出版関係の会社で、入社前の健康診断まで受けた。数名の内定者が揃って、指定された病院に向かう。道すがら、当然就活よもやま話になる。
抜きんでてきれいな人がいた。物腰は柔らかいが、芯のある人のように見えた。銀行の支店長を務める父親に、この業界だけはやめておけ、と言われたそう。銀行に勤める女性で生き生きと幸せな人を見たことがない。そういう人生を歩ませたくないと。
みみずの父は高校中退のブルーカラーだ。いいとこ出のお嬢さんとは訳が違う。
結局、一抹の懸念には蓋をして、銀行に入った。
そして、入った3日目には後悔していた。給与体系を始め、何から何まで男性と女性では全く違う扱いだった。
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