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交通誘導員の死亡事故
つい先日、トンネル工事の現場で78歳の交通誘導員が死亡した。土砂を載せた大型ダンプが後退した時、その下敷きになったという。
就活を始めて以来、警備員の募集記事を毎日、シャワーのように浴びることになった。それまで気にも留めなかった駐車場の誘導係や工事現場の交通誘導員の姿が、気になって仕方がない。
雨のそぼ降る中のこともあれば、炎天下のこともある。制服の上に反射ベストまで着込んだ姿は、見ているこちらまで汗が噴き出て、卒倒しそうだ。女性も多い。化粧っ気のない日焼けした顔につばのある帽子を載せ、きびきびした手の動きで行き交う車をさばいていく様は、プロフェッショナルそのもので頭が下がる。カッコイイ、が、まねできそうにもない。
トイレはどうするのだろう。急にお腹が痛くなったりしたら、など、想像するだに恐ろしい。
一方、直立歩行がやっとの風情で、仲間の後を遅れながらついていくような人もいる。とうに70歳は超えているだろう。80過ぎかもしれない。その齢迄、よくぞご無事で生きてこられました。ありがたくて拝みそうになる。
そこまでしてなぜ働いているのか。そこまでして、なぜ雇っているのか。
どちらにも、それなりの事情があるのだろう。皆、人知れずいろんな事情を抱えて生きている。みみずも同じだ。
今年は寒さが厳しい冬という予想の通り、12月に入ってから、朝晩の冷え込みがめっきり増した。ジョギングルートにある用水路にも氷が張っていた。アオサギは離れたところにいて身じろぎもしない。スズメは時折車が通るたび、一斉に飛び立ち、また舞い降りる。はるかなたの黒々とした木立の向こうから朝日が昇り始める。空のヘリの、トロピカルカクテルのような色合いが少しずつ薄れ、魔法が解けていく。
揃いの紺色の防寒具を着た一団とすれ違った。肩をすぼめ、黙々と歩いていく。工事現場だろう。作業員かもしれない。その内幾人かは、警備員であるかもしれない。
最後尾は背の曲がった小柄な老人のようだった。亡くなった父の後ろ姿によく似ていた。