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TOEIC、玉砕

アルバイト先までほどほどの距離があり、おまけに渋滞するとわかっていてもその道を通るしかない状況がしばらく続いた。もとより、車の運転は苦手なので、他のことに意識を持っていかれないよう、FENを聞いていた。

片道小一時間、毎日その往復、結構な時間を「聞き流すだけで上達する」勉強に費やしたので、英語耳になったかも、とうっすら思った。

「TOEIC受けてみよう」

学生時代に英検の準1級でコケて以来、英語の資格試験とは無縁のみみず。以前より英語に耳慣れしたのではないか、と言う思い込みだけを頼りに受験した。過去問の本も、買っただけで開きもせず。

指定された会場は、えらく人里離れたような場所にある大学。臨時雇いの警備員が敷地のあちこちに配置されている。みみずと同年代の警備員、パリッとした制服を着て仕事をしている。凛々しい姿がまぶしく映る。警備員の料金も受験料に含まれているですね。いかん、いかん、テストに集中。

受験者は、やっぱり大学生が多い。社会人と思しき人もちらほら見かけるが、大方は若い。みみずから見ると、ほとんどすべての人は若いのだが。

構内には、中国語やタイ語、ベトナム語の掲示が多い。日本語より多い。女子用のトイレが極端に少ない。この大学の普段の様子って、どんななのだろう。想像がつかない。

単語帳をめくる人や、参考書を開く人、ヘッドフォンに耳を澄ます人など。こういう空間は、みみずには久しぶりの神聖な体験だ。元々何の準備もしていないので、事、ここに至っても、呼吸を整える位しか思い浮かばない。とにかく集中だ。精神一到何事か成らざらん。

一つ置きのスカスカした座席にテスト用紙が配られ、スピーカーチェックが行われ、テストは始まった。

正確に言うと、いつの間にかテストが始まっていた。スピーカーから、クリアーなんだが、何を言っているのかわからん、会話がどんどん流れていく。周りの方々が一斉に鉛筆を動かしている。呆然としていたみみずもあわてて鉛筆を強く握る。でもって、今、どの問題?

情け容赦なく時間は進み、残りあと10分と言うのに、解答用紙の半分は手つかずのまま。もちろん、問題文も後半はめくってさえいない。

残り5分、大切なのは精神集中。答えはきっと天から降ってくる。鉛筆に何か宿っていると信じ、何も考えないようにしてマークシートを塗りつぶしていく。

「終了時間です」

「前回よりはイケたかな」「後半のリスニング、きつかったな」「前半は過去問と似てるのたくさんあったよね」「長文問題、全然読み終わらなかった」「じゃあ、答案用紙、空欄で出したの」「一応埋めることは埋めた」

優等生の女子大生と、ちゃらんぽらんの男子学生。断然、後者に感情移入。

「どうせ当てずっぽうに記入したんでしょ」「いや、直感ていうかな。俺、結構こういうの強いんだ」「馬鹿ね、どうせわからないんなら、全部Aとか全部Dとかすれば4分の一の確率で当たるのよ」

忘れたふりして過ごした2週間後、結果が届いた。

なんと、ど真ん中。受験者中、上から見ても下から見てもちょうど真ん中の成績だった。コレッテ、スゴクネ?



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