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いい人と仕事ができる人は両立しないかも

-BBAサバイバル11-

彼は、間違いなくいい人だった。

ハローワークの面談室は、カウンターに担当者が横一列に並んでいる。求職者は番号がパネルに表示されると、入れ替わり立ち替わりその前に座るのだが、回転速度が高いカウンターと、ゆっくりなカウンターとがある。人が溢れ、こちらも気が急いているときは、ちょっとイラっとする。いかん、いかん、それぞれいろんな事情があるのだ。

ようやくみみずの番が来た。マイペースさんのカウンターだった。

例によって、長いリストを提示する。文句言われないので〇。順番に印刷し、電話をかける。お決まりのコース。他の担当者に比べると、若干、作業と作業の間が長いかも。息継ぎなしで泳ぐのと、ひと掻きするごとに息継ぎするのとの違いみたいな。見ていると、求人票を印刷するたびに、裏表、くまなく目を通している。初めてお目にかかるタイプ。

いくつかお断りコールが続いた後、おもむろに、

「民間じゃないとだめですか? 公的機関っていう選択もあると思うんですけど」

「経歴を拝見するとね、地方公務員だった期間も長いでしょう。企業じゃなくてもいいんじゃないかなあ」

迂闊にも、全く眼中になかった。経理資格を中心にした検索では、そうした求人が引っかかってこない。ありがたいアドヴァイスである。

「僕もね、ここに転職して半年位なんですよ。確か、ここの求人も出てたと思うけど。」「あった、あった。」「他にも、こんな所もありますよ」

「僕の前職ですか? 今と同じようなものなんですけどね、大学の就職課で、学生たちの面倒を見てました」「給料は少しね。でも、通勤は楽になったし、仕事も定時で終わるし」「あなたも、いろんな仕事されてきたから、そうした経験も生かせるんじゃないですか」

みみずは舞い上がった。中古ショップで思わぬ掘り出し物に出会った気分。

気が付けば、かなりの時間、椅子を占拠していた。両隣の椅子はもう何人も入れ替わっている。

「一人当たりの制限時間、一応あるんですけど、なかなかね」

彼の勤務評定が気になったが、求職者の可能性を引き出し、希望を持って前進の後押しをするのは、とてもいいことに違いない。



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