地域経済を盛り上げるために必要なこと~質的改革のススメ~
株式会社シンカゼ、代表の三牧です。地域×人材支援で事業を展開しており、「副業・兼業から始める地方創生」というテーマでOtanomiという地方副業・兼業人材のマッチングサイトも運営しています。
今回は「地域経済を盛り上げるために必要なこと」というテーマで、地域での事例や生の声、データなどを元にしたお話です。
地方企業では人手不足ではないことも…?
とある地方の人口数万人の町での話。
地域企業を支援する商工会の方とお話した際のこと。
私:「最近、最も課題に感じることが何ですか?」
という質問を投げた際、返ってきたのは
商工会:「廃業する事業者が後を絶たない」という回答。
商工会に話が来た際のほとんどは「どうすればいいか」という悩み相談ではなく、既に「廃業を決めた」という状態。
後継者問題もその要因のひとつかもしれないが、続けて質問を投げてみた。
私:「廃業する事業者のうち、『廃業するのはもったいない』と思う事業者が多いか『廃業しても致し方無い』が多いか、どちらが多いですか?」
商工会:「感覚的ですが、9割は『廃業しても仕方ない』というケースです」との回答。
要は、年々売上が下がり、経済的にも事業運営が厳しく、廃業を選択されたというケース。
その近辺の町で取った事業調査のアンケート結果でも、昨年と比較して売上が伸びた企業は、全体の約2割のみ。残りの8割は現状維持か、売上減。
黒字の企業も全体の3割強のみ。
今後、廃業を考えている事業者は約4割にも上る。
人材不足が叫ばれ、都市部では職種によっては求人倍率は10倍近い状態もある中、この地域のハローワークの求人倍率は約1倍。
過疎化が進み、人口が年々減っている町にもかかわらず、売上が上がらないから人は足りている(≒人を入れられない)、求人はないという状態。
このようなケースは、他の地方でもあるはず。
仕事がない、地域経済が盛り上がらない、税収も減る、地域から人がいなくなる…と負のサイクルに入るかもしれない。
これは町に移住者を増やしたり、自社に若者を増やせば解決する。という話でもなく、今までと同じ事業の延長では解決が難しく、企業・事業のアップデート(改革)が必要。
つまり、人口や社員数という量的なもので解決されるものではなく、経済発展のための事業改革・単価向上・販路開拓をするための知識・ノウハウ・経験値・アクションが求められ、質的な課題解決の必要性。
量から質への転換
また、地域自治体などの取組みで、新しい種を伸ばす策も増えてはいるものの、減っていく・萎んでいくものを少しでも抑えようとする策も多く、「0を10にする施策」よりも、時代の流れに逆らった「マイナス10をマイナス8にするような施策」(マイナスが微減するだけの策)も多いと感じる。
例えば、移住者促進策も絶対にやった方が良い策ではあるものの、転入する移住者の数より、自然減や転出などで減る数の方が大体多くなるため「人口が減ることを前提としたモデル」も早く着手せねばならない。
しかし、数名の移住者を確保するために大きなお金や時間が割かれていることも珍しくない。
地方から人が減っていく、というのはほぼ避けられない状態のため、産業においては、たくさんモノをつくって、たくさん売るというのは難しくなっていくはず。
今後は、地域で生産できるもの、サービス提供できるもの(供給量)もどんどん減っていき、供給制限が進むというのが必然の流れになる。
人口減少に伴い、地域内での需要も勿論減るものの、今の時代、県外・海外含め、需要の獲得についてはまだまだ多くのチャンスがある。
つまりは、事業の経済性を高めるために大事なことの1つが、限られた供給量でどう大きな対価を得るか。薄利多売よりも、誰を顧客に事業を進めるのか、どんな付加価値の高いものを生産していくのか。
そんな生産性や単価を高める動き、「質」を高める動きが、必ず地域で必要になってくる。
質的改革事例~1本1万円の高級羊羹~
茨城県日立市の山間にある和菓子屋「常陸風月堂」さん。
地域密着の客商売をやられていた和菓子屋でしたが、三代目藤田さんが開発されたのは1本1万円以上する高級な栗蒸し羊羹「万羊羹」。
地元の最高級栗を使い、手作業ならではのおいしさと「高くても選ばれる」ようこだわってつくられた和菓子は、デザインにもこだわられ、ロンドンで世界的なパッケージデザイン賞を受賞。海外でも話題の和菓子となり、発売1年で800本の売上を記録。
先代と比較し、売上は1.5倍、利益率も5%上昇。10数名の小さな和菓子屋さんの改革は、メディアにも度々取り上げられ、月に100本以上も万羊羹が売れることも。
誰がそんな高いものを買うんだ、という地元のコミュニティの非常識があったとしても、ランチに数千円支払う文化がある海外に舞台を変えれば、何も違和感もない常識になる。
まとめ
地域では、大量生産から脱却した質的改革が必要です。
高いから売れない、などの限られた視野・視点ではなく、
誰を顧客にするのか、どの市場で戦うのか、どう付加価値をつくるのか。
企画、アイデア、マーケティング、販路開拓(改革)…等々。
規模、業種、知名度などは関係なく、地方には自然環境、恵まれた素材、人柄、地元への熱意など魅力も多く、改善できるチャンスは地域にはたくさん転がっています。
弊社でも、市町や関係団体と共に、このような「地域経済の活性化に繋がる」事業改革を積極的に推進しています。
そんな地域に関わってみたい方は、「副業・兼業からはじめる地方創生」をテーマにした弊社のサイト、Otanomiもぜひご覧いただき、地域にお力をお貸しください。
新たな一歩を踏み出したい地域事業者、自治体の方もお気軽にお問い合わせください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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