葬式

覚醒後に、夢現となる
そんな経験は幾度もあったけれど、

覚醒後に、現のことかもしれない
そう感じた夢は初めてだったかもしれない。

 最初僕は、「ランダムチャットの彼女」の主人公である順だった。順は、一言で言えばイタい奴だ。過去のトラウマから世界を周りと違う目で捉え、ランダムチャットという匿名のおかしな世界を通してしか自分を表現できなくなった少年だ。
 物語を通して順は世界と繋がっていく。主に暴力を通して関わるため、順はいつも傷だらけだ。登場人物は気にしないが、私が親なら自責の念で自殺するくらいトラブルに飛び込み、巻き込まれ、起こして傷だらけになる。ただ、順ならそう動くだろう、というキャラクター設定が確立されており、いよいよ順が銃で撃たれるような展開になっても、ギリギリのバランスで物語は破綻せずエンディングを迎えようとしている。

夢の始まりは、そんなエンディングの手前、
順がこれまで心を通わせてきた登場人物と、
再会する場面だった。
それはまだ、読んだことの無いシーンだった。

三方を手入れされた庭に囲まれ、
小川が絶え間なく流れている。
風水的に最高なのでは?という家に行った。

順である私は、「打ち上げ」と称してその家に遊びに来る登場人物たちと再会出来たことを心から喜び、感謝していた。

宴は進み、いつしか場所は和風の家屋から居酒屋とその周辺の団地全体に変わり、打ち上げにやってくる人達も私の知る人達となっていた。

懐かしい、今連絡を取れていない幼い頃から腐れ縁の親友が現れたとき、何故か自然と涙が出て、自然と感謝していた。今目の前に彼が現れても、同じように涙して感謝していると思う。

夜空はやがて、白み始めた頃、打ち上げにやってくる人達はバンドマンばかりになっていた。
仕切ってくれているのは、我が母艦KyotoTTTの大黒柱。現れる人達も懐かしい気持ちになる人から宴の噂を聞き現れた知らない人達に変わり、でも私もその出会いを面白いと感じていた。

そこで夢現、これは葬式の光景と感じていた。

亡くなった人は、きっとこうして出会った人達に言葉にならない感謝を感じている。そして、葬式に来てくれる人達も、亡くなった人に会っているんだ。肉体を離れたからきっと、近しい人の目を借りて世界を見ているんだろう。

そこにはありがとうしかない。
私たちは、おそらく近いうちにいずれまた逢う。
その時が来たとき、あなたは私ではない、
完全に別たれた経験を持って、また逢う。
そして、私とあなたはひとつになり、
ただ、存在する。
仏様の云う、阿頼耶識の存在かもしれない。

私と完全に別たれた経験を持つあなた
そしてひとつになるのなら、
そこにはありがとうしかない。

今、願わくばその経験が、
後悔や懺悔といった悪しき負の経験でないことを
それも含めたひとつの阿頼耶識としても、
それは受け入れるものだと思う。でも、
プラトンが云う、
真に、善く、美しい存在となりたいことが、
意思であると、実感した。

そう感じた、不思議な感覚を残した夢でした。

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