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20191111

天変地異の目撃者

雨降り後の東京渋谷。
前日までは快晴。
この天気を操る感じ、実に彼ららしい。
THE NOVEMBERS(以下ノベンバ)の11月11日NEO TOKYO公演。
毎年"何か"が起きている。そしてこの日もその"何か"が起こるのを知っている。
僕はそれを知るまでの時間が好き。
雨の音のSEが開演までの心を燻る。
ステージに上がった小林さんは妖艶で美しく格好良かった。
全曲での感想と最後にライブで感じたことを綴ってこうと思う。

M-1/Louder Than War
生で聴くのはもう5年くらい前になると思う。
ちょうどzeitgeistを出したツアー以来かと。
少しずつ体が揺れるのを感じながら「今のノベンバが演奏するとこんな変わるんだ」と変化を目の当たりにした。重なる轟音と煽りの照明が今日のセットリストの特別さを先取りしていた。

M-2/彼岸で散る青
前奏では何が始まるか解らなかったけどすぐに粒やかなアルペジオが流れオーディエンスからは歓声が上がり僕も目を見開き背伸びしていた。
今から6年くらい前に初めて進学で札幌に来た時、sound lab moleというライブハウスでイベントがあった。
(その時の対バンには赤い公園、GOOD ON THE REEL等がいた)その時、初めて生で彼岸で散る青を聴いたのだけど、不安の海の中に小さな光を閉じ込めた宝箱が眠ってるようなこの歌にはずっと助けられてきた。
それをこのタイミングで聴けたことに思いが込み上げてしまった。
外の世界に行きたいのだけど出られないような、また回帰するような。
青々とした照明と海の中に突き落とされた感覚になった。

いつかの君の髪は僕より短かった
とても似合っていたよ
ジーン・セバーグみたいだった

M-3/黒い虹
「いよいよ牙を剥いたか!」ある意味ここから今日のノベンバが始まるかと思った。今のノベンバを作り上げる中で最も重要な役目になっていると思う。
小林さんのシャウトが会場を襲う。
フラッシュで目が殺られる。それでも目を逸してはいけないと強く思った。
攻撃的な歌詞と強烈なサウンドが気持ちを高ぶらせてくれた。

M-4/Dream of Venues
しかしここからが第二章だった。
ギターを置きハンドマイクで歌う姿にこちらもただ見つめこの空間の流れに身を任せた。
音源とはもう違う次元でライブでの表現力には圧倒された。
ただ静かに今この瞬間、1対1で向き合えることに笑みを浮かべながら聴いていた。

M-5/みんな急いでいる
水の滴るSEが流れ、その曲であることを確信した。
じっとステージを見つめ発せられる言葉を拾い損ねないようにその場を大事にした。
1つのバラードと言うべきか、子守り歌のようでお守りのような楽曲。もし自分に子供が居たら、何か悩んでいたり、見つめ直さないといけない局面でこの曲を聴かせていると思う。
この曲をこの場で聴きながら今、自分が悩んでることや自分が変わっていかないといけない部分を人間が忘れてはいけないことは忘れないように。
自分の持っているはずの良いところは持ち合わせたままで生き急がないことを言い聞かせて前に進もうと思えた。

M-6/クララ
個人的に冬のイルミネーションやクリスマスの恋人達の夜を連想している曲で、とても綺麗な音と歌詞がマッチしていて踊りながらもじっとオーディエンスと向き合う小林さんを見て、こちらもドキドキしながら向き合う。
このタイミングでこの日にこの曲を選曲してくるズルさに心を持っていかれてしまった。

M-7/plastic
最新アルバム『ANGLES』からついに1曲目。
変わらず小林さんはハンドマイクで楽しそうに歌っていた。この姿を見ていると本当に自由で「今の自分」と「好きなようにしていい」を表現していて、変化していくノベンバを連れて行く姿勢にもっとこんなノベンバを追いかけていきたいと思った。
羽を広げて好きなように飛んでいこうと思えるこの歌詞が僕は好き。

M-8/Everything
『ANGLES』の中でも特に思いれの強い楽曲。
聴いているだけで幸せになれることがあるんだというまるでスピリチュアルな感覚になる。
でも本当にこの曲を聴いていると心が落ち着く。
怒り、憎しみ、苛立ち、マイナスの感情を失うことが出来る。
ただ人は難しくてその状態をキープすることは出来なくてこの一瞬の時間だけはそう思えてもすぐ忘れてしまったり継続することが出来ない。
でもこの歌が教えてくれるのは純粋に今という時間に偽りはなく全て含めて今だけど、たまたま偶然幸せを手にしただけ。その幸せをどう自分で継続するかどの場面で光らせるか、まさに天国に昇った瞬間だった。
会場の雰囲気は清らかさに染まっていた。

M-9/永遠の複製
天地が入れ替わった。
先程までの景色から一転緊張感のあるステージングに変わる。
ゆらゆらと揺れるオーディエンスがまたここからのノベンバの魅せ方を予知していたと思う。
しかし、この曲を記念すべき日に聴けたことを誇りに思う。SNSも更に発達しネット上だけで人を殺すことも出来る今の時代に自分の意思というものをしっかり持つことの意味を改めてこの日に訴えてくれた。

喜べと言われ喜んで悲しめと言われ悲しんで

M-10/鉄の夢
すっかりこの曲のファンになった僕はこの曲を演奏する瞬間に気づけるようになった。この曲の始まる瞬間でリミッターが解除される。
素直にかっこいいと思える曲ほど良い曲に出逢え、今まさに目撃している。
ノベンバが伝えたい音楽、言葉が会場を包み込む。
この時、既に最高の真っ只中で今日一番に歪むケンゴマツモトのギターと重なる小林さんのギターに空気をさらに重くする照明。狂気染みてそれでいい。心を揺さぶって混沌とするものを壊してくれて僕らは気楽になれるんだ。

あそこの水は甘いとか
隣の芝生が青いとか
「どうでもいいぜそんな事柄」

M-11/Ghost Rider
休む間も与えず鳴り響く疾走感溢れるノイズと轟音のリフ。ライブの定番曲になったsui cideのカバー曲。ノベンバのアレンジには脱帽。吹雪の山岳地帯を一目散に下山していくようなイメージをずっと持っていたんだけど、ライブを通して聴くとまた違った感情を持った。あの場の空気感がもたらすものはやはり特別だったのだろう。シンプルに目で観ているもののバックにはメンバーに羽が生えているように見え、「見てはいけないもの」(鶴の恩返しの話にある襖を開けてしまった)感を覚えていた。
本気でかっこいい大人達を目撃してしまうとこんな感情が生まれるんだと思った。

M-12/こわれる
「うわ!まじか!」と始まった瞬間で一気に感情が高ぶった。会場の熱気も徐々に温度が上がってきていた。
ギターのカッティングが始まったときには助走をつけていた。サビへの準備をしながら気持ちを抑えて抑えて歌詞をしっかり聴く自分が居て、"その時"が来ては周りの目なんか気にせず綻ぶ顔に嘘つかず跳ねていた。「ああ、楽しい、邪魔すんな、今ここでこわれたい」そう思いながら荒ぶる感情に身を委ね確かなこの時間を大事にした。
改めて演奏してくれたことに感謝。

M-13/Xeno
もう体はノベンバに身を任せていた。
止まらないアップビート、攻撃に攻撃を重ねる。
休まず限界を魅せてくる。僕らも休んではいけないと神経を刺激していた。この曲を間近で体感する人は荒れ狂うか唖然としているのどちらかのパターンだと思っている。本当に4人だけで演奏しているのか?と思うほどの表現力。同じ人間であることは確かななのに全然違う。何かを彼らが纏っていて宿っているものが外に飛び出しているような錯覚。
高速で目まぐるしくそれが気持ちいい。次の歪が追い打ちをかける頃には終わらないでほしいと思っていた。

M-14/NEO TOKYO
ツイッターで小林さんが宣言していた。
『茨城で出会った暴走族の排気音をサンプリングしNEO TOKYOで披露する』と。
前奏で"それ"を確認した。この瞬間めちゃくちゃ恐くなった自分が居た。これから目撃するものは明らかに普通ではない気がもうしていた。
その雑踏のような音像の中、吉木さんとケンゴマツモトのドラミングが始まる。そしていつものように歌い出す小林さん。
ユニゾンするベースが心地よく、今日の日をこれで迎えた気がしていた。
しかし事態は一変した。アウトロへの出口が来ない。それどころか終わりを感じない。
すると手を広げ新たな言葉を発する小林さんがそこには居た。焦らして焦らして続けられた言葉は『ラッセラー』その背後で鳴り響くAKIRAのBGM。金田の暴走シーンを彷彿とさせている。色々な感情が混ざりに混ざって訳が解らない。だけどめちゃくちゃかっこよくて泣いてしまっている自分がそこにはいた。
こんな事をしてくれるんだと思った。背けてはいけないと思った。
相変わらず踊り、そしてその姿に偽りもなくただやりたいように、好きなように好きなことをするノベンバがほんとに自分は好きになってよかったと思った。
この曲をこの日にこのアレンジで演奏され終わった後、この1年の締めくくりと共に今の時代を総括したような気がした。

M-15/DOWN TO HEAVEN
今日のこの時間がクライマックスを迎えようとしていて、その時間の使い方に間違いはなくこの曲順に満足していた。小林さんが狂気を纏踊り歌うのもここが最高潮だったかと。『伝えたいことは投げ伝えた。それをどう拾うかはあなた次第』と言われてるかのようだった。ここまで数十曲聴いてきてここでこの曲を聴けたことが本当に嬉しかった。僕は生きている。好きなように。

簡易包装の輪廻転生
因果応報に順次対応
百鬼夜行の阿鼻叫喚

M-16/BAD DREAM
追尾を許さず駆け巡る。今のノベンバが表現したいものはこの曲に全て詰まっている。ここが最高の悪夢であって醒めてしまっては終わってしまうのではないかと不安の中で時間を忘れてこんなにもこの空間を見守る自分がかつて居たのかなと思ってしまった。
本当に遠くへ遠くへと行ってしまう気がしてならない。
それでも僕は付いていくことが出来る。
彼らが進化していく度、渡れる橋をいつも用意してくれている。
ひょんといつも乗っては簡単な気持ちでいたことに後悔する。
それでも言う『またいい未来で会いましょう』
この夢から醒めてもまた僕は夢を視る。

M-17/今日も生きたね
『これで最後の曲です。』と鳴らされた音はとても優しかった。しばらく聴いていなかった。この記念すべき今日にこの曲を演ってくれた。素直に嬉しかった。僕の想う人が「この曲が一番好き」と言っていて僕はその人とこの曲を聴きたかったと一番に思った。単純なことなんだけどそれが難しい、当たり前なんだけど本当は奇跡に近い。それを思う瞬間言葉にしたら"今日も生きたね"。

君の事ばかり考えているわけじゃないけれど
自分の事と同じくらい君の事を考えているよ今も
なんて美しい日々だろう
なんて美しい日々なんだろう
君を待つ日々は
なんて美しい世界なんだろう

en/ANGLES
このまま終われないオーディエンスからはアンコール。
これまで観てきたノベンバのライブがまた更新されて今一番いい状態。
再びステージに顔を出した4人の姿。
小林さんが一言『片鱗を見せられたんではないかと/2020年も面白くなってきやがったぜって感じで見せられるんではないか』そんな事言われたら、あんなものを見せられたら、もう楽しみでしかない。
七色に光るステージに高松さんのコーラスと小林さんの美声が会場を包み込んだ。美しすぎて、眩しくて、とても綺麗で。
こんな素敵な大人に付いていきたいと心から思い、心から感謝しフロアに放たれる言葉をしっかりと受け止めた。
産まれて良かったとこの日この瞬間思えた。

リズムに合わせて呼吸を合わせて
やっぱ合わないなってとこを愛すのさ
ちょっといいかげんくらいで
別にかまわない
さあ歌おう
天使たち

20191111

この日体感した気持ちをホテルに帰ってから。
自宅に帰ってから。
実家に帰ってから。
とてもすぐには纏められなくて3日もかかってしまった。
カフェに入ったりモスに行ったりフリーWi-Fi拾っては当日のセトリをWALKMANのブックマークに組み込んで繰り返し再生し聴いては書いてみる。
僕の綴った感想、表現は俗に言う"ライブレポート"ではなくてストレートに感じた自己満のようなもの。この感情を閉まっておくのが出来なくて少しでも共感してもらいたいというエゴな部分が僕には巣くっていて、自分をこうして見せている。
僕はTHE NOVEMBERSが大好きだ。
いつだってその存在に助けられてきた。
この音楽を好きと言って居てくれる大事な人をより一層大事にしたいと思う。
人というのはそう簡単に変われない。
何かを見てきて育って、こうなりたい、ああなりたい、これでいいんだ、これでも許されるんだは果たして何を見本にしたら上手くいくのかわからない。
どの姿を吸収してもそこにはもう積み上げたもので作られた自分がいて、間違いに気づいた時には失っていたりもする。それでもそれは自分である。
僕がこれからどうしていきたいかは自分を好きになること。(よく色んな人が言うけど恥ずかしくてこの言葉が苦手だった)この言葉の意味が最近分かって、人から愛される人間に居られる時にはきっと僕は好きなように生きていると思う。
続く通過点はまだまだ長い気もするし、もしかしたらすぐ見つかるかもしれない。
それは分からないんだけど、彼らを好きでいる自分は間違いなく"間違ってない"ということ。

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