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ヒカリノオト ⑪





12月になりましたが、秋みたいでしたね。

冬は光がきれいだから好きです。



少し前回の話しを振り返ります。

アスリートの辻さんが話をした時。
中学生達は一瞬で「聞く」態勢になった。

そこから、中学生達は聞く態勢が崩れないまま、辻さんの話しの内容に沿うように、まるで目に見えるように大勢のエネルギーのようなものが変化しました。

あの時、何が起きたのか。
あの時、何を見たんだろう。

記憶をゆっくり再生するみたいに、少し近寄るみたいに思い出してみると、とにかく辻さんは

「うれしそう」

だったのです。

そして、二人三脚でやってきたと紹介してくれたコーチが横に居て、ステージには二人が座った状態でした。

とても厳しい方だそうですが、コーチが辻さんに向ける眼差しも、辻さんがコーチに向けるそれも、なんと言えばいいのか、温かいし、軽やかだし、まぶしいのです。

わたしはステージからとても遠く離れた場所から見ていたので、細かい視線の動きは確認できないはずなのですが、それぞれの、そしてお二人の"エネルギーの動き"みたいなものが、とてもよくわかるのです。

何故だったんだろう?

おそらく、なのですが
混ざり物が少ない、透明度の高いものを発していたから。
ではないかと思います。

あの眩しいくらいに透明度の高いエネルギーは、辻さんがハンドボールの選手として、アスリートとして格闘し、乗り越えてきた全てが、彼女の様々なものを研ぎ澄まし、削ぎ落としてきた膨大な何かの結果。

それも、もちろん含んでいるとしても、それ以上に彼女が
「自分が自分であることを喜んでいる」
ことと、そこに至るまでに決して欠かせない存在としてのコーチに対する
「感謝」以外のものが無い。

そのことが1番だったのではないかと思います。

「自分を肯定する」
どころか、
そんなのを遥かに超えて

「自分が自分であることを喜んでいる」

そして、わたしが感じた辻さんの
「とにかくうれしそう」
は、彼女が自分が自分でうれしいというだけでなく、話し出す前から、中学生全員に向かってまっすぐに発せられていたものがあったのです。


言葉にするなら、

祝福している。

ひとりひとりを見て、全体を見て、全部受け止めて、
「あなたはあなたで よかったね」
「あなたがあなたで おめでとう」

彼女が何を話したのか。
その内容よりも、言葉よりも、ずっとずっと強くて、確かなものがそこにはあって、わたしが目撃したり、感じたりしたものはそれだったんだと思います。

印象に残っている話がひとつあって、それは彼女がものすごく努力したことについての話しです。

それは
「靴紐が結べなかった」というものです。
出来ないことが悔しくて、ものすごく頑張って、今は靴紐が結べるようになった。
それも、時間をかけてではなく、両手がある人のように短時間で結べるようになったのだと。

それだけでも驚きなのですが、彼女は次の課題にすぐさま挑戦を始めたそうです。

それは
「髪をひとつに結ぶ」
というものでした。

靴紐が結べるようになっても、髪だけはどうしても結べなくて、ものすごく努力したそうです。

そして、自力で短時間で
今では髪を結ぶことができるそうです。

記録をあげることより、何よりそれがうれしいのだと、本当にうれしそうにお話しされていました。


自分もですが、話を聞いた中学生のほぼ全員。
話しを聞く前と後では、日常の風景の見え方が、感じ方が変わったのではないかと思います。


少し前に、別の記事に別の人の話しとして書きましたが、

人が人に作用する

このシステムの精密さ、やさしさ、美しさ。

犬達の遠吠えのように
人間がある光り方、発し方をした時にだけ、呼び覚まされたり、スイッチが押される。

内包されていて、無自覚で、隠されているようでも、すべての人間に備わっているもの。

そして、呼び覚まされる経験をしてしまうと、それは押されるだけのものではなく、すべての人間が

自分も押す側になりうる

そんなことをはっきり認識できないのだけど知るというか、どこかでわかってしまうシステムでもあるような気がします。



つづきはまた!










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