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ヒカリノオト ⑩





スカイハイ
日高さんは、左耳が聞こえないそうです。


ですが、パフォーマンスでは歌詞が非常に"立った状態"でこちらに聞こえてきます。

以前の記事に歌を歌える人は、
「耳がいい」から歌えるのではないか?
そう書きましたが、日高さんの片耳が聞こえないのなら、身体機能として問題なく聞こえることが、歌えることとイコールでは無さそうですね。

そもそも
「聞く」「聴く」
って、どういうことなんでしょうね。


何らかの形で自分の声が録音されたものを聞くと、驚いてしまう。
ほとんどの人が経験があると思います。

そこに関しても、わたしは両耳が聞こえるので、片耳が聞こえない状態の日常というのは、想像することしか出来ず、実感することはできません。

なので、日高さんが彼自身の声を普段どのように聞いているのか。
人の声をどう聞いているかに「共感はできない」ということになります。

逆に言えば
日高さんには、両耳が聞こえる人の状態は共感できない。

そうなんでしょうか?

身体機能的な意味と言えばいいのか、
その意味では同じように聞こえているわけではないのに、日高さんの声はとても聞き取りやすい。心地よい。何と言えばいいのか、"ちょうどいい感じ"です。

例えば、本来両耳で聴き取るものを片耳で行っていることが、聴き取るという能力の精度を高めたり、自身が発する言葉や音の鮮明さ、キレを増す、そういったことに貢献している可能性を想像するのはわりと容易です。


でも、声、歌声って

言葉や音がハッキリしたものであればあるほどよい

とも言い切れないものですね。

日高さんの歌声の"ちょうどいい感じ"は、言葉の鮮明さや音程の正確さだけなんでしょうか?


前の記事に書いた、シュント君に関しても、シュント君の歌う『在るべき形』は思わず「ちょっと、もう一回」となりますが、本家のウーバーワールドの『在るべき形』は、自分にとっては特にもう一回とはならないのです。

さらに言えば、シュント君の他の歌声は素敵だなとは思っても、「後で見る」にはなりません。

わたしは何を聞いたんでしょう?
『在るべき形』を歌うシュント君の歌声には、何があるんでしょう?


話が少し変わりますが
昔、犬2匹と一緒に暮らしていた時。
当時は時々、廃品回収の車が、音声を出しながらゆっくり走っていました。
あと、選挙カー。

これらの音が聞こえて来ると、犬達は、すぐさま反応して遠吠えを始めます。

寝ていても、飛び起きます。
雄と雌ではいつも、雄の方が反応が早く、雄が吠えると雌も慌てて吠えるという感じでした。

廃品回収や選挙カーの音声と犬達の遠吠えは、わたしには全く違うものにしか聞こえないのに、彼らには一体どんな風に聞こえているんだろうと、とても不思議な感じがしました。

逆に考えると、どんなに素晴らしい歌声も犬達には、人間にとっての騒音、雑音、選挙カーのように聞こえるということもあるかもしれません。



音声、歌声

ではないのですが

昔、友人からお気に入りの曲ばかりを集めて録音したカセットテープをもらいました。

たしか一曲目だったと思うのですが、ディープパープルのSmoke On the Waterという曲が入っていました。

わたしの部屋から流れてきたその音に、弟は衝撃をうけたそうです。

そして、そこから彼のギター人生は始まったそうです。
充分プロになれたんじゃないかと素人の自分は思うくらいの上達っぷりで、実際ギター教室で教えられるくらいの腕前になり、今も音楽やギターは彼の一部です。

親や身近な人に音楽をやっている人などいなかったのに、彼は何故ギターを弾きたいと思ったんでしょう?

カッコいいな!とは思っても、ギターを弾きたい、弾いてみたいとは一切ならなかった自分と弟。

あの音、あの曲、あの音楽。
弟にはどんな風に聞こえたのか。
彼の中で何が起きたのか。


そして
またまた話しが飛んでしまいますが、以前中学校で働いていた時。
「片腕のアスリート」の辻沙絵さんという方が講演に来られました。

彼女の講演を聴けたこと。
それは、素晴らしい体験でした。

決して大きな方ではなかったし、特に声に何か特徴があるという感じでもありません。

ですが、彼女が声を発した瞬間にその場の空気が明らかに変わりました。

なかなか静かには出来ないお年頃。そんな大勢の中学生が、一瞬にして「聞く」態勢になりました。

どんな言葉を一発目として発したか、全然思いだせないので、何か印象的な「言葉」ではなかったのかもしれません。
そして「音」としても思いだせないので、何か消えないような「音色」のようなものでもないのだと思います。

ただ、本格的に話し始める前、彼女が何かを発した瞬間に空気が変わったのを覚えているのです。

そこから、話が終わるまで中学生達はあり得ないくらい「聞く」姿勢がキープされたまま。

そして、話の内容に何というか"沿った"感じで、話を聞いている大勢の子達の空気が変化するのがまるで目に見えるようでした。

辻さんは、もともとハンドボール選手だったそうです。

腕がないのに、ハンドボールです。
後に陸上に転向されますが、そもそも最初に選んだのがハンドボールです。

あの時、辻さんは何を発したのでしょう?

中学生達は
何をどんな風に
聞いていたんでしょうか?

中学生が大勢、集団になって辻さんの話を聞いている時に、自分が目に見えるかのようにありありと感じたものは何だったんでしょう。


そろそろ
最初の話に戻りましょう。

スカイハイ
日高さん。

そもそも、片耳が聞こえないのに、どうして音楽をやろうと思ったんでしょう?


つづきはまた!



〈余談〉
なんだかチバさんの音楽が続いておりますが、初めからの意図というより、わりと相性がいいのが続いてしまったので途中から、もう最後までチバシリーズで!になっております。

爆音系が多いので、苦手な方はスルーして下さい。










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