ヒカリノオト ⑧
『 自転車
どうやって乗っていますか? 』
このことについて、
言葉で説明するのはなかなか難しいのではないでしょうか。
私も子供に自転車の乗り方を教えた時、自分から様々な言葉が出て来て驚きました。
「へー。自転車ってそうやって乗ってるんだ。」
というように、自分がやっていることを言葉にしてみて、改めて気がついたり発見があったりしました。
それと同時に、どれだけ言葉を尽くしても、そのどれも正確でないような、不完全な感じもしました。
それでも教えているときに、乗っている子供の様子を見て
「これはまだまだだな」とか
「あ、今ちょっといい感じ」
そして
「ここまでできたら、もう大丈夫」
「もう、わかったな。乗れるな。」
それがわかるわけです。
私は自転車に乗ることができるから。自分も最初は乗れなかった。
そして乗れるようになったからです。
自転車の乗り方は、自転車に乗ることができる人にしか、教えることができないのです。
当たり前です。
当たり前
当然のこと
すでにできていること
だからと言って、そのことについて
正確に
詳細に
理解できているか
把握できているか
これは、別の話です。
『 どうやって
食べ物を消化していますか? 』
もっと言えば、
『 どうやって生きていますか? 』
このことについても
当たり前にやっていることではあっても
正確に詳細に理解、および把握。
とは、言えない状態。
ほとんどの人がそうではないでしょうか?
「自転車に乗る」は、
もしかしたら、とても運動神経の良い人であれば
誰かに教わらなくても、
なんとなくこんな感じか?
で、乗れるようになる。
ということもあるかもしれません。
「食べ物を消化する」とか
「生きている」
というのは、
誰かに教わってできるようになったわけではなく、ほとんどの人が、
何がどうなってるかはよくわかってないんだけど
できちゃってること。ですね。
『 すでにできている
やっている。
だけど、
よくわかってるとは言えない。
ほとんど知らない。 』
生きている人間は、みんなそんな感じで存在している。
そのことについて特に何も違和感を感じない。
ちょっと面白いことだなと思います。
オーディション番組の中で
日高さんが、それぞれの子に様々な言葉をおくります。
それは、
具体的な歌やダンスについてのアドバイスもありましたが、
印象的だったのは
とてもエモーショナルな歌声を持つレイコ君。レイちゃん。
日高さんがある指摘をした時、
レイちゃんはハッとして
だけど考え込んでしまいました。
そしてその後、
彼が安定して自信を持って活動できるようになるまで
比較的時間がかかることになります。
レイちゃんが考え込んでしまった指摘というのは
「再現性がない」というものでした。
レイちゃんは、ダンスは全く未経験の状態で、歌も確か独学。
にも関わらず、オーディションが終わる頃には、ダンスもありえないほどに上達します。
そもそも
「心に届く、エモーショナルである」とは、どういうことなんでしょう。
単に技術的に上手いだけでは、その歌声は 「 心に届く 」
響くものにはならないのではないでしょうか。
彼がオーディション中に上達していったダンスにしても、その時点で上達していったその到達点は、ダンスで世界一になったソウタ君のようになるわけではないけれど、
例えば、その技術的な不完全さ、未熟さがソウタ君と一緒に踊った時に
目立ってしまうようなもの、何かその場の空気を乱したり、濁したりしてしまうようなものではなく、
全く別の
とても魅力的な違う光を放つものでした。
それはとても美しく、ソウタ君と一緒に踊っても、気持ちよく調和できるものであり、別々バラバラではなく、一緒にパフォーマンスした時に、単独の時とは違った、新しい美しさを生み出すものでした。
それは、言い換えれば音が、
一つの楽器が誕生したみたいな感じでした。
複数の楽器が一緒に音を奏でる時、
それぞれが正しく調律(演奏)されていれば、同時に音を出したときに
とても心地よいものになりますが、
一つの楽器の調律や演奏が不十分だと、それは目立ってしまうし、重なり合った全体をダメにしてしまいます。
ピアノであるか、ギターであるか
ここに優劣はなく、
ピアノにはピアノの調律の仕方や演奏法があり、それぞれが正しいものであれば、組み合わせたときには
そこには調和と新しい魅力や美しさが生まれる。
みたいな感じです。
自転車の乗り方を教える時と似ていて、乗り方を教えることはできる。
そして「あ、大丈夫」「できた」
その瞬間もわかる。
すでに自転車に乗ることができる人には。
だけど、どこをどうやれば
どのくらい時間がかかるかは、人それぞれ違うわけです。
レイちゃんが歌うのと、
日高さんが歌うのは違う。
レイちゃんが踊るのと、
日高さんが踊るのは違う。
教えられるんだけど、
そして完成したかどうかの判断もできるけれど、プロセスは本人にしか手が出せない。
最終的に、レイちゃんはそのオーディションには合格せず、
現在はソロアーティストとしてデビューしています。
レイちゃんは自分の歌に
「再現性がない」ことを、日高さんに指摘されて初めて気が付きます。
おそらく、一から
「そもそもどうやって歌ってるんだっけ?」
となったと思います。
でも、レイちゃんの心に響く、
「エモーショナルな歌声、歌い方」と
「再現性がないこと。
再現性を保つことが比較的難しいこと」
は、実は深く結びついていたのではないかと思います。
だから、単に日々練習を続ければ解決できる問題ではなく
自分にとっての音楽とは?
歌とは?
歌うってどういうこと?
レイちゃんは、レイちゃんに必要なだけの時間をかけることになった。
エモーショナル、心に響く
レイちゃんだけの独特の歌。
どうやってそうなったかわからない。
けれど、できちゃってる。
出来上がっている。
それを、もう一度自分で見直して、その成り立ちや仕組みを再確認し、さらにそれを再現性のあるものにする。
レイちゃんは、見事にそこにたどり着きました。
そして、それこそがレイちゃんにとって一番輝ける、生き生きと存在できる
最終形態、正解
だっただろうと思います。
オーディションの段階で、
今のレイちゃんの状態が、日高さんに明確に見えていたかどうかはわかりませんが、少なくとも
”ボーズグループの一員として活動していくことが、レイちゃんにとっての最善最高の形ではない”
ということは明確に見えていたのではと思います。
そして、それは正しかったと、
番組を見ていたほとんど全ての人が感じたのではないでしょうか。
何がその人にとって最善であるか
番組の中で、
途中で脱落という形になってしまうそれぞれの子達に対しても
日高さんがかける言葉、送るメッセージは、いつも予想以上に説得力のある
「これ以上のものはない」
と感じてしまうものでした。
前にも書きましたが、日高さんは目の前の子の何を見ているのか?
日高さんには何が見えているのか?
どこから、どこに向かって
何を、投げているのか。
何故
そのように見えるのか。
何故
その言葉になるのか。
何故
それは目の前の子だけでなく
見ている人にまで、届く、刺さるのか。
そして、ただ単に
言葉をかける
メッセージとして送る
というだけでなく、
それに伴って、新たに生じた現実的な動きや対応も、日高さんはひとつひとつ、
着実に
確実に
対応されているように見えます。
『 オーディションをやる
会社を作る 』
その時点では、具体的なことは
日高さんには
ほとんど何も見えていなかったのではないかと思うのですが、
オーディションでは
一人一人違う個性を持った子たちに、それぞれ最適解と言える対応をして行きます。
そして、実際に動き始めた会社としての形態は、おそらく今までになかったようなものであり、
とても理想的なものだと思います。
それは所属アーティストにとって、理想的であるだけでなく、マネージャーさんや、様々なその他の、会社というシステムを成り立たせるために不可欠な人達が、みんな気持ちよく、そして喜びと誇りを持って、
働けるような会社であるように見えます。
BMSGという会社の誕生も、
そこから誕生したアーティストも、
音楽やボーイズグループに興味がなかったとしても、その誕生や存在は多くの人にとって、勇気や希望になっているのではないかと思います。
とはいえ、日高さんの日常はおそらく殺人的なスケジュール。
というか、
人間のキャパを超えているように見えます。
・自身のアーティスト活動
・会社の社長としての仕事
・BMSG所属アーティストの作詞作曲
・所属アーティストとの合同活動
「ダンスは1日サボったら
1日分下手になる」
そうおっしゃっていましたが
ちょっと拝見しただけでも、そのパフォーマンスは素晴らしすぎて驚きます。
会社設立後、社長としてこれまでの活動とは全く違う、想像を絶するような新たな取り組みを、山のようにこなしているはずなのに
アーティストとしてのパフォーマンスが落ちているわけではない。
個人のアーティストとしての活動。
会社の社長としての仕事。
どのような所属アーティストを募るか、そしてその後の対応。
全てに、細部に至るまで
一つ一つが完璧。
一見すると、今現在日高さんと同じように、一人のアーティストとしていわゆる「成功」という状態にあり、そこに至るまでの経験や今の芸能界の状況などから、同じようなことを考え、実行できる人は他にもいそうな感じがします。
ですが、オーディションの時の日高さんのひとりひとりへの向き合い方、それぞれの子達がどのように成長して行っているか。
デビュー後、BMSGという会社がどのような歩みを辿っているか。
細部を見ても、大きな流れを見ても、そこには鮮やかな整合性があり、日高さんにしかできない。彼だからこうなっている。
そのことが明白です。
とても1人の人間のやっていることとは思えないことをやっているだけでなく、それを実際にやることで、本人はますますパワーを増し、
1アーティストとして活動していた時より、ずっと多くの人に喜びや希望をもたらしている。
その喜びや希望は、範囲が広がっただけでなく、より強く深く届くものになって。
なぜそんなことができるのか?
なぜ、そうなるのか?
ではなくて、
『 当然そうなる 』
『 充分あり得る話 』
スキンケア動画から、グイっと引き戻されるようにして出会った日高さんの一連の活動履歴。
ヘリオセントリックが何であるか
松村先生がお話ししてくださっている宇宙原理とはなんなのか。
自分にとっては、
ものすごくわかりやすい
あるひとつの具体例を
見せてもらったようなことだったんだと思っています。
つづきは
また!