推しよ、地獄に咲く一輪の花であれ
もう7ヶ月も推しに会っていない。
恋愛の全てが「さいしょから」に戻ったその日に親から「結婚まだ?」と聞かれた時、Twitterで情弱や老害達が大喧嘩してるのを見た時、陽キャの誰も楽しくなさそうな飲み会ストーリーを見た時、メンヘラに「私と遊んだことSNSに書いてよ」と言われた時、いつまで経ってもディズニーランドに行けない時、会社のお局が若手イケメンにセクハラしているのを見た時、、、私はこの世が救いようがない地獄のように感じる。自分の力ではどうにもならない、社会の根本にある強い負の力に飲み込まれそうになる。
この地獄を目に見える範囲だけでも『やさしい世界』に近づけるために、私は好きなものを全身全霊で愛して、生理的に無理なものを拒絶し続けている。毒親から離れ、メンヘラを切り、Twitterを辞め、綾野剛と星野源以外のストーリーをミュートしていく。私の周りには、あまりにも地獄が多すぎる。
大事に作り上げてきた『やさしい世界』だって油断して目を離すとそうだ。先日、何度もデートした男と急に連絡が取れなくなった。交通事故に遭ったと言っていたが、本当だったのだろうか。私は自分のことをもう好きでない男にさえ嫌われたくなくて、最後まで焦って空回っていた。でも一方で冷静な私が「事故に遭ったことにしてフェードアウトしていく戦法、自分の手を汚さないし加害者にもならないからいいな」と感心していた。賢い。ずるい。悔しい。 真面目に向き合ったのに、試合に負けて勝負に負けた。強豪校を相手にしたときの高校の部活みたいな恋愛だった。
失恋して、ぐちゃぐちゃの心境の中でふと推しのことを思い出した。そして彼のことが推しよりも好きだったんだなと思った。
推しがソロライブ配信を行った。好きな人がいるときはライブDVDを見ることも忘れ、コロナもあって仕事が忙しく、私は推しがいるということを久しく忘れていた。7ヶ月ぶりに見る推し、推しだけがいる世界は推しが法律で王子様で天使で教祖様だった。いつも眉間にシワを寄せてLINEを打ち返し、清く正しく働いて、目に映る全てに悩み傷ついている私が「かわいい」しか言えなくなった、考えられなくなった。それでいい。ああ、地獄にも蜘蛛の糸は垂れ下がっていた。こんな世界でも、推しは美しくかわいく強く尊い。2020年はライブに2回しか行けておらず(前年10回)、自分がただの痛いオタクだということを忘れていた。私は推しのかわいさで頭をデロデロに溶かすことができる、地獄でも楽しめるタイプの人間だ。私は次の地獄もきっと進むことができる。ただ地獄を進むものが悲しい記憶に勝つ(by星野源)のだ。
この世界に推しがいること、推しと同じ時代を生きていること、辛い時にはしっかり噛み締めて行こうと思った 傷心の2020・夏でした。推しがいる世界サイコー!!!