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美しい人
『紹介したい人がいてる。近いうちに帰ります。』
息子からLINEが届いた。
大学進学を機に一人暮らしを始めた息子は、就職後も新たな地で公私共に充実させているようだ。
彼女については、大学の同級生と言う事は聞いていたが、これまで一度も家に連れてくる機会がなかった。
その彼女と、今秋から一緒に暮らすらしい。
先に彼女のご両親に承諾を得たのち、働きながら家探し、引越しや片付けに追われていた2人のスケジュールの都合もあって、来訪の予定が当初の春からどんどんずれ込み、季節は晩秋になった。
待ち侘びた当日
遠路はるばるやってくる2人が少しでもくつろげるよう、部屋を整え迎えた当日。到着時刻が迫ってくる。チラチラと時計を確認しながら、テーブルの上にキレイに盛り付けた料理を次々と並べているその時、ようやく2人が到着した。
心を躍らせながら小走りで玄関へ出迎えに行くと、少し照れくさそうに立っている息子の横で『初めまして。今日はお世話になります』と微笑んでいる彼女。
明るく柔らかい声。
話に聞いていた通り、気取りのない素朴な美しさに私はつい見惚れてしまった。
舞い上がっているのは息子たちよりも私の方。
彼女へ歓迎の言葉を伝え、車で片道数時間かけて遠路はるばる来てくれた2人を労いながら室内へ案内した。
世の中にはキレイな人はたくさんいる。
加速するルッキズム。。美意識の価値観は様々あるけれど、飾り立てない本物の美しさは、誰にも真似できない。一朝一夕には身につくものでもない。
彼女を育てた偉大なご両親
ご聡明なご両親の背中を見て、人生で本当に大切な事を自然と身につけ、時代や人に流される事なく、伸びやかで朗らかな彼女。
令和の時代に稀有な存在だと思う。
息子と暮らす事について、ご両親は彼女の意思を尊重してくださっているらしい。
親子の信頼関係がしっかりと築かれているからこその独立心。
会話する時の柔らかい表情と真っ直ぐ物事を捉える瞳。取り繕わず、素朴でそのままの美しさ。どの表情もいきいきしていて強く惹きつけられる。
勉強家で読書家は2人の共通点。
芸術肌の息子と、逞しく朗らかな彼女。
将来結婚するのか、それは2人が決める事だけれど、2人なら困難な状況をも面白がって心豊かに乗り越えていけるような気がする。