書評:『だから「いい家」を建てる』(松井 祐三)

『エコハウスのウソ』を読んだら、友人に勧められ、読みました。

「『気密をしっかりして、外張断熱で全館空調・空気清浄機付き』の(我が社仕様の)家がいいよ」と、ずっと書いてある本に私には思えました。

書いてある事に間違いは少ないけれど、この本から得られる教訓はそれにつきます(シンプルで良いと言う捉え方もある)。

著者の松井さんのお父様は偉大であると思います。その跡を継いだ著者の松井さんもとても良い仕事をしていると思います。昭和のひどい時代の家作りから、信念を持って「住む人に良い家」を作り続け、今のスタイルを作った松井さんのお父さん。そして、著者がその跡を継いで、床下を潜りながら、完成度を高めて今のマツミハウジング型の「いい家」があるのが、よくわかります。お父様の勇気と実行力には頭が下がります。

ただ、本として評論するとすれば、「あまりにもプロダクトアウトな本だ」と思いました。

「日本の昭和の家はひどく、断熱材といっても、気密の外にある断念材は結露を起こして、カビを生やすので良くない。外断熱も、基礎から断熱しないと効果が薄いが、シロアリにやられるリスクがあるので、ちゃんとそれを考えたことをやった工法で外断熱をした方が良い」といった実践的な教訓が、日本の住宅の歴史を交え書かれていて、役に立ちます。

著者の方はずーと、良い家にこだわって、床下に潜ってやってきており、確かに「マツミハウジングの家は良いものだ」と思います。(ただ、最後の買った人の声の章があり、「この家素晴らしい」の大合唱は、正直閉口します。確かに住みやすく、素晴らしい家だとは思うのですが…)。

読んだ後に思ったのは、「結局、この家は、宇宙ステーションのようなものなんだな」ということです。外から独立した空間を家の中に作り(外断熱で外界と隔離する)、外気を空気清浄機を通して取り入れ、全館空調することで快適。断熱性が高いので、エネルギーのロスも無く、家が広く使える。それが「いい家」ということになると思います。

ただ、それは、外とは関係のない世界を作るように聞こえました。

この本は、住む人の視点からすると、家の中の、気密・断熱・空調といった「空気」の部分しか書かれていません。「空気」が大切なのはよくわかりますし、一番大切だと思います。この本を読むと、強くそう思います。

しかし、例えば、私は、「空気」と同じぐらい私は「日当り」が好きです。
この本に「日当り」に関する記述は無いし、「蓄熱」に対する記述もありません。そういった幅広い家に関する事は、私の前に読んだ『エコハウスのウソ』の方が広くカバーされていると思います(雑学が多いとも言います、まあ、両方読めば良いのかもしれません)。

きっと、著者の方が営まれているスーパー工務店の立場からすると、「敷地や環境なんて、個人個人によって差があるんだからどうこう言ってもしょうがない。夏の日差しは上から来て、冬の日差しは南から来るが、結局外張り断熱で屋根も壁も断熱するから一緒。結局、気密性が良くて、外張り断熱で全館空調のうちの家を建てるのが万人にとって一番快適なんだよ」という解も正しい気もします。ただ、ポジショントークな気もして、はやり、第三者が公平な目を持って、幅広く「いい家」を検討した本が私は欲しいと思いました。

でも、家を建てる検討をしている人には、一読の価値があると思います。
私は、これを読んで、「家は一生の買い物だし、安い建て売りを買うのはやめよう」と思いました。

読むのはおすすめですが、正直に書くと、私が好きなタイプの本ではないし、一度読んで、古本屋に売ってしまおうという本でありました。図書館にあると良い本だと思います。

『だから「いい家」を建てる』(松井 祐三)
(http://goo.gl/IgWtH7)


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