書評:『イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】』(P.F.ドラッカー, 上田 惇生)

『イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】』
(P.F.ドラッカー, 上田 惇生)
http://goo.gl/4QaMhy

原題が"Innovation and Entrepreneurship"であり、「イノベーションと起業家」とすべきところを、なぜ上田さんが「企業家」と書いたのか、不思議です。1985年の本なので、その時に起業という概念はあんまり無かったのかもしれませんね。興産とか興業という言葉が古いですからね。

この本は、イノベーションのHow to本である。しかし、良く読むと、不思議な事に、Innovationの定義ははっきりとはしていない。Innovationの性質には触れているし、それをどうすれば起こせるのかは書いているが、定義は書いていないところが面白い。

良くある間違いとしての「イノベーション=発明」という概念だけでなく、馬鹿げた間違いである「イノベーション=技術革新」という誤訳とはほど遠いほど正しい、Innovationを体系的に整理しようとした本であることは間違いない。

米国の社会科学全般に言える事であるが、この本は、実践的である。イノベーションを一番簡単に起こすには、「予期せぬ成功や失敗」を拾うのが一番の機会だと言っている。これは、かなり説得力がある。

「間違えない人は、何もしていない人」とは良く言うけれど、絶対間違えない仕事をしている人には、イノベーションはない。だから、ルールベースのプログラムで動くコンピュータにイノベーションは起こせない。しかし、ばぐった動きをする幼児はイノベーションを起こしうる。また、良くベンチャー企業では失敗を叱責しないが、これは合理的である。イノベーションを作る為には、予期せぬ失敗をするのが近道であり、それを分析する事でイノベーションが起きるとドラッカーは言っている。

というような話があと6つ書いてあり、イノベーションを起こす方法が書いてある。これを1985年に書くのだから、ドラッカーはすごい。

30年経った今でも、これを理解していない日本企業が多いと思う。
イノベーションだ、なんだと騒ぐのであれば、まずこの本を読んでおくのが良いと思う。

『イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】』
(P.F.ドラッカー, 上田 惇生)
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