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【 #3Dプリンター 】Nova 3D: Whale 2【レビュー】
323工房のJです。
今回は光造形3Dプリンターの中でも特に大型のものが印刷できる、Nova 3D社のWhale 2を紹介していきます。
Youtubeの方には動画も投稿していますので、興味のある方はご覧ください。
Nova 3D社は初心者にも安心なとても親切設計の3Dプリンターを作ってくれるメーカーなのですが、今回のWhale 2はその親切設計が生きているのか?それとも他の大型3Dプリンター同様ちょっと尖った設計になっているのか?というところが注目ポイントです。
さらに通常のモノクロ3Dプリンターから乗り換える場合はどうなのか?ということも合わせて書いていきたいと思います。
1、大型光造形3Dプリンターとしては最高の安定性
まず、結論から言えば、大型3Dプリンターを導入したいとなった場合、選択肢として現時点で最高だといってしまってよいでしょう。
2022年2月時点で大型光造形3DプリンターとしてはNova 3D社のWhale 2以外には2つ選択肢があり、一つはElegoo社のSaturn、
もう一つはAnycubic社のPhoton MonoXがあります。
いきなり結論をまとめてしまうのですが、この3機種に関しては以下のような関係にあります。
・価格
(高) Whale 2 >MonoX >Saturn (安)
・機能
(良) Whale 2 >Saturn > MonoX (低)
・使いやすさ
(良) Whale 2 >Saturn > MonoX (低)
・スライサー
(良) Saturn = MonoX >Whale 2 (低)
*ただし、調整すればChitu boxも使える。
というわけで、Whale 2は他機種に比べて価格が高いけれど、他は優れているということになります。スライサーは相変わらずNova 3D社純正は微妙だけど、調整すれば普通にChitu boxが使えるのでそれほど問題にならないです。
そもそも、大型3Dプリンターに関しては現時点で、その利点に対していくつかの難点がありまして……
・筐体の大きさゆえに場所を選ぶ。
・消耗品が高く、交換がしにくい。
・レジンの消耗が激しい。
・安定した印刷に調整が必要。
ということがどうしても避けられません。
最近は安くてもよい3Dプリンターはたくさん出回っているのですが……
大型3Dプリンターに関しては多少の値段の高さをケチることで、
・より消耗品を買う必要が出る。
・レジンを消費してしまう。
・失敗品を乱造してしまう。
ということに繋がります。
なので、悪いことは言いませんから、多少のお金でこれらが防げるのであれば、トータルで見たらコスト安につながります。
2、補助機能は重要
Nova 3D社製はデフォルトでWifi機能がついているのですが、これが地味に有用です。
他の3Dプリンタレビューでも書きましたが、たかがUSBディスクを指すだけ、と侮ると、何度も交換する作業に辟易してくることになります。
さらに機種によってはUSBが背面に接続されており、これが設置場所によっては地味に難所となります。
3Dプリンターで調整が必須という状況を考えるとWifi機能は一度慣れてしまうと手放せない機能と言えます。
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初期にはNova 3D社のWifiは微妙に使いにくいところがあったのですが、近年の機種では安定して繋がるので特に問題はないです。
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また、最近の機種にはほぼ完備されていますが、タンクを洗浄機能はもはやないと困るレベルです。
特に大型3Dプリンターの場合、スクリーンが損傷すると取り換えが非常に面倒なので、確実にタンク内を綺麗にしておくことが、コストと時間の節約にダイレクトにつながります。
しかし、この後書く、Whale 2にある妙な癖に対応する必要があるので、少し気をつける必要があります。
3、問題点:なぜか照射が途中で途切れる
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画像ではしっかりと照らされているスクリーンですが、Whale 2は時々照射がいまいち弱かったり、場合によっては消えてしまう変な問題があります。
同じNova 3D社製のElfinやBeneではほとんど起きていないので、どうも大型化に伴う電源とCPUのバランスが悪くなって安定しないようです。
そのため、造形物を印刷する場合は念のため事前に再起動を行い、連続して印刷しないようにすることでとりあえず安定して作ることができています。
この問題はタンクを洗浄するの際も同様で、印刷が終わって自動的にタンク洗浄画面に遷移するのはよいのですが、ボタンを押しても光が照射されなかったり、されても弱かったりして、レジンが硬化しきれず剝がすときに割れるといったことが起きました。
そういった場合は2回連続で照射するなどして硬化すると綺麗に剥がせたりします。
Whale 2のクリーン機能自体は優秀で、硬化したスクリーンは時間を置くと端から捲れてくるようになり、剥がしやすいので、この微妙な問題が玉に傷という気がします。
4、他のNova 3D社製プリンターよりも丁寧な扱いが必要
個人的にNova 3D社製プリンターの特に素晴らしいところはバットのフィルムがモジュール化されていて、交換する際に外すボルトの数が少なく、フィルムの張具合の調整も不要なところだったのですが、残念ながらWhale 2は他の3Dプリンター同様フィルムの調整が必要になっています。
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これは現時点で大型3Dプリンターを使う人もまだまだ数が少ないのでモジュール化した製品を発売するほどでもない、ということなのでしょうが、フィルムは場合によっては事故で交換することもあるので、今後モジュール化した製品が出てくることを期待したいです。
ただ、Nova 3D社製はElegoo社製に比べるとフィルムが割と丈夫なので、それほど傷ついてレジンが漏れてしまうといった事故が少ないのは助かっています。
*Saturnはこの事故が非常に多いので、フィルム強化版を発売したようです。
5、それでも大型造形は魅力的!
色々と面倒なことばかり書いてしまいましたが、大型造形はとても大きな可能性を秘めたツールです。
光造形は意外と"パーツ分割に向かない"仕様でして、レジンと機械の光の照射力や時間、さらに温度といった周辺環境で結構如実に形状や大きさが変化してしまいます。
その点、大型で一括刷りしてしまえば、パーツの分割で悩む必要もないですし、また小さな部品も一気に大量に擦れるので、安定さえしてしまえば作業効率は格段にアップします。
「自分は小さな造形しかしないから」と割り切るのも一つの手とは思いますが、しっかりと一つの作品を完成させたいと思い始めると大型3Dプリンターは必須だと思います。
初心者にはちょっとおすすめは難しいのですが、少し従来型の光造形3Dプリンターに慣れてきた方には導入を検討する価値はあるぐらいに安定している逸品だと思います。