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個人情報と肖像権に関する一考察~本日の昭和部長~

その昔、ごく一時期のこと。我がぜんざい公社には、「全役付者の顔写真付き名簿」が存在した。
個人情報の流出が騒がれるようになってからは作成しなくなったが、その名簿を活用しまくった世代にとっては、便利で懐かしい存在だ。

かくゆう私も、人事情報としては全く価値のなくなった大昔の名簿をいまだに持っている。
新しく仕事のメールをやりとりし始めた、まだ見ぬ他部署の相手はどんな人なのか。相手が役付者であれば、どのくらいの年次でどんな雰囲気の人なのか、その名簿を調べれば、把握することができた。
名簿は、慣れない案件を進める上で、お守りのような存在だった。
どんな形でか、復活したら嬉しいなぁ…と、うっすら思っていた。

さて。
わが経理部が属する本社統括部で、「部内web上で、顔写真付き部員名簿を作成しては」という話になった。役付者だけでなく全員の、だ。私は小躍りした。

2年半の休職ののち、3月にこの経理部にやってきた私。
初日に大人数の前で自己紹介をしたが、当然、周囲を取り囲む大勢のメンバーを覚えられるものではない。すでにコロナ騒ぎが始まっていたので、大半のメンバーがマスクをつけていた。
皆の顔と名前を覚えきれないうちに緊急事態宣言が出されて、在宅勤務や休業、交代出社などで、ほとんどのメンバーと会わなくなった。
今月に入ってようやくメンバーと顔を合わせるようになったが…これが、なかなか覚えきれない。

そもそも、我が経理部には、笑っちゃうくらい同姓or同名のメンバーが多い。O田さんが3人、S藤さんが4人、K子さんが3人…という具合。
10人中8人は無口である。電話に出るとき以外は、常にうつむき加減で静かに黙々と作業をしている。
ちなみに現在、昭和部長の号令で、一応フリーアドレス。そして、これまた一応、就業中は全員マスク着用である。

…覚えきれない。
正直、このひと月で確実に覚えきったメンバーの数よりも、顔と名前が一致した都道府県知事の数の方が多いと思う(ちなみに、経理部員の数は、都道府県知事より遙かに多い)。

「ぎゃー、覚えられない!」
と叫んでいるのは、4月から赴任した昭和部長も一緒で、彼は私以上に「顔写真付き部員名簿」を欲しがっていた。
この1点に関しては、私と部長の利害が一致。
これを機に、少しは相互理解が進めば…などと思う私だった。

さてさて。
本日、名簿担当の統括部社員から、web上に、名簿のフォーマットと編集ルールが開示された。
「各自、ルールに沿って、自分の掲載情報を修正して、顔写真を貼り付けてください」
「顔写真が嫌な人は、似顔絵を描いて貼ってください」
「どーっしても嫌な人は、貼らなくていいです」

おいおい。画像を貼らない限り、本人が掲載情報を編集したかどうか、わからないではないか。最終チェックは誰がどうするんだ。
このルールだと、経理部は貼らないメンバー続出だぞ。ただでさえ、面倒嫌い、開示嫌いが揃っているのに。
何しろ、部内の緊急連絡網を作成するときに、「個人情報だから」と強行に連絡先開示を拒否ったメンバーが複数いるのである(作成を任された私は、新参者の立場を忘れて「個人情報保護法の理解、間違ってないか?」と突っ込みそうになった)。

そう思った私に、昭和部長が言った。
「よし! おまえが経理部の編集長だ!」
…もーいいって、その役回り。。。(かつてwebニュース配信会社に出向させられた過去あり)。
しかし言われたとおりに、
「みんな、お気に入りの画像を貼ってね~。部長が楽しみにしてるから~」と全メンバーにメールした。

「押しが、足りないな」
と、昭和部長。
「どーしても写真を貼りたくない奴は、おまえを説得しろってメールする!」
「おまえが納得した場合だけ、名簿に「顔出しNG」って書いてやれ」
…凄く、不必要な凶悪権限を与えられた気がする。

「で、おまえを説得できても、経理部専用の名簿には、俺が隠し撮りした写真を貼る!」
「部長…それは、犯罪では。。。」
「大丈夫! 俺が個人的に楽しむだけだから!」
…ソレ、いっそうマズいだろ。

昭和部長との相互理解は、まだまだ進みそうにない。


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PD * みふみ
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