2022年2月2日 できない~!!!

妊娠38週1日

昨日の夜は腹が痛くてあまり眠れなかったという。
「前駆陣痛ってやつか?」
「多分そう」

今日は産婦人科で健診の日である。行ったらそのまま入院になるかもしれない。妻と一緒に健診に出かける。

病院の外でしばし待つと(新型コロナウィルス対策で付き添いは入れない)やがて妻が泣きそうな顔で現れた。

「明後日入院になった~! そんな急に(お産を)できない~!!!」

出産予定日は2月15日だった。それまでにもっと夫婦でのんびりした時間をとれると思っていたのに、と妻は嘆く。

実はおれもそれをちょっと期待していた。育休に入って、子どもが生まれていない期間って、のんびりできそうでいいな~と。いやあ、我ながらナメたことを考えている。

妻の子宮口は、3センチ空いており、内診でまるのあたまが触れるくらいの感じだという。

えっ?
ちょっとまて。

それってもうまるが出てきちゃっているんじゃないの?
お産始まっちゃっているんじゃないの?
逆に入院明後日でいいの?
いま入院したほうがいいんじゃないの?

疑問が浮かぶが、医師の指示に従うしかない。

うまいものを食べよう、ということになり、ロイホでオムライスを食べた。妻はずっと泣きそうだったが、機嫌がやや持ち直した。

家に着くと、妻は真女神転生5を必死で進めはじめた。もうどうがんばってもいまからお産までにはクリアは無理だろう。

寝るときに、同棲を含めると二人暮らしを8年したね、という話をした。

そんな二人の時間は終わることになる。

思えば、楽しかったよな。最初は緊張したよ。おれも女性と暮らすのなんて初めてだから、生活の中でなにかしら嫌われて、フラれるんだろうな、なんて思っていたよ。

でも8年間、楽しく暮らすことができた。これはお互いが楽しくやろうとした努力の結果だと思う。

なんだか、おれたち二人、これから死ぬみたいな雰囲気になってるのなんでだ?

妻の日記より

昨日、腹痛が眠る頃には落ち着いたと書いたが、ベッドにはいってから再び出始めた。我慢しながら眠ったのだが、明け方にはおおよそ30分の間隔で起こるようになり、何度も睡眠と覚醒を行ったり来たりした。これが前駆陣痛というやつに違いない。

痛みは生理痛によく似ていて、子宮がぎゅうっと絞られるような感じ。しばらく耐えていればすうっと引いていく。

苦しい夜を明かし、朝起きると、それなりの量の出血があった。ちょうど検診の日だったので、支度をして病院へ向かう。腹痛や出血のことを説明し、診てもらうと、子宮口は2〜3センチ開いており、胎児の頭も触れる状態だという事だった。体重もようやく2500gに達したらしい。

「もう産んじゃいましょうか。明後日とかどう?」

医師がめちゃめちゃ気軽な感じでそう言ったので、思わず「明後日!?!?」と言ってしまった。今日は2月2日だ。予定日は2月15日なので、まだ2週間ほど猶予があると思っていたのに。

医師が指差したカレンダーを見て縮み上がるが、先延ばしにして急に破水や陣痛となるよりは、覚悟を決めて明後日入院する方が良いはずだ。医師の提案通り、明後日入院することに同意した。

エコーで見たまるは、自分の腕を枕にして呑気に昼寝をしていた。
待合室に戻ると、改めて恐怖が押し寄せる。明後日私は、赤ちゃんを産む。赤ちゃんを。赤ちゃん!?赤ちゃんって、あの、人間の小さいやつ!?

迎えに来てくれた夫の顔を見たら猛烈に甘えたい気分になって、帰り道何度も「できない、やめる……」と言ってしまった。夫は黙って優しくしてくれた。

帰りにロイヤルホストでオムライスのセットを食べたら少し元気になって、「でも、明日じゃなくて良かったよね。明日は節分だから、毎年誕生日になると、保育園に鬼が来るよ。誕生日を鬼が来る嫌な日だと思っちゃうよ」と冗談を言えるくらいにはなった。

しかし、夜にはまた腹痛が出てきたせいか、それとも精神的なものか分からないが食欲が無くなり、作ってもらったチャーハンを残した。

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斎藤充博
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