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斎藤充博
2022年7月1日 20:00
妊娠37週2日おれは「育休」にむけて仕事がだいたい片付いた。わりと時間的に余裕のある生活である。妻とゴロゴロしていた。「まるが生まれたらこんな気ままな時間はもうないのかな~。でもいままでさんざんきままに過ごしたから、もういいのかな~」と妻が言う。それを受けて「そう……これからおれたちは自分のためではなく 大切な人のために生きる……」と適当なことを言ったら、妻がゲラゲラ笑った。妻
2022年7月2日 20:00
妊娠37週4日赤ちゃんが出てくるようにするには、たくさん歩くといいらしい。そこで、妻と一緒に2キロくらいはある、公園まで歩いた。しかし妻にとって往復4キロはかなりの重労働だ。「まあなんとか平気だよ」と言っていたが、家についたらものすごくヘンな姿勢で寝ていて、疲労の度合いがうかがい知れる。いままでずっと「食後には胃が必ず気持ち悪くなる」と妻は言っていた。しかし今は日お餅(胃がもたれそうな
2022年7月3日 20:00
妊娠37週5日オミクロン株が猛威をふるい、東京の感染者は16,000人を超えた。コロナに関してはよくもわるくも先が全く読めない。オミクロン株は従来よりも軽傷ですむという話だが、それもなんだかよくわからない。とにかくお産だけは無事に済んでほしい。妻はやることがないので、パンを焼いたりしてヒマをつぶしている。ソーセージパン、めっちゃうまい。いいヒマのつぶし方。最高~。夜に妻から出
2022年7月5日 20:00
妊娠38週0日夕食の後に妻がお腹が少し痛いという。それってもう生まれるってことだろうか? 「まだ早いよ、ぜんぜん覚悟できてないよ」と泣き言をいう妻。おれはお腹に向かって「まる~もう少し待ってて~!!!」という。こんなことをしても何にもならないと思うけど、いちおう、妻の不安に寄り添ったつもり……。妻の日記より今朝は5時頃に目が覚めてしまい、その後もずっと眠かった。何度も短い
2022年7月6日 20:00
妊娠38週1日昨日の夜は腹が痛くてあまり眠れなかったという。「前駆陣痛ってやつか?」「多分そう」今日は産婦人科で健診の日である。行ったらそのまま入院になるかもしれない。妻と一緒に健診に出かける。病院の外でしばし待つと(新型コロナウィルス対策で付き添いは入れない)やがて妻が泣きそうな顔で現れた。「明後日入院になった~! そんな急に(お産を)できない~!!!」出産予定日は2月1
2022年7月7日 20:00
妊娠38週2日明日が出産の入院をする日だ。産院でもらったお産のパンフレットを夫婦で読み返す。パンフレットの中に気になる記述がある。それは陣痛の痛みに関する部分だ。無痛分娩に関するページでは「昔は痛みにこらえてこそ母性が生まれる、という風潮がありましたが、現在では麻酔で取ったほうがいいと言われています」と書いてある。しかし分娩の時の心構えのページには「痛みは赤ちゃんをむかえるポ
2022年7月8日 20:00
妊娠38週3日今日、妻は陣痛促進剤を打ち、出産をする。早朝に産院に妻を送っていくと、入り口で「行ってくる!」と力強く言ってくれた。新型コロナの影響で立ち合いはできない。お産には時間がかかるため、おれは帰宅した。……しかし、何をして待っていればいいんだ? とりあえず洗濯をするが、どうにも落ち着かない。昼飯でも食べようかな、と思っていた12時頃に妻からの電話があった。出てみると、すぐに
2022年7月9日 20:00
妻の日記より出産1日目朝まで痛みでろくに眠れなかった。夜中に何度も点滴の交換があって、その度に痛いです、痛いですと訴えるが、次は○時に痛み止めの点滴ですよ、と返されて終わった。点滴の時間が待ち遠しくてたまらなかったし、一度やってもらったあの筋肉注射が恋しかった。なんとか朝を迎え、足のマッサージ器具が外される。まだカテーテルも点滴もついたままだが、それが外れただけでもかなりスッキリした。
2022年7月10日 20:00
妻とも子とも面会はできない。しかし差し入れはできるということで、ミスタードーナツを持っていくことにした。ここで悩むのはミスタードーナツの個数である。ひとりで食べきる分として、いくつが適当だろうか。たくさん持っていけばいいような気がするが「こんなにくいしんぼうじゃないよっ!」なんて言われかねない。 ……熟慮の末3個持っていくことにした。産院の裏口に行き、看護師にミスドの袋を手渡して、
2022年7月11日 20:00
妻の日記より産後3日目。6時にナースコールが鳴って、グズグズと起きる。違和感を感じて足元を見ると、突然足のむくみが酷くなり、太腿から指先までパンパンに膨らんでいた。指と指がくっついて気持ちが悪い。体温と血圧の測定のため、ナースステーションへ。6時起きは早すぎる……7時でいいじゃん……とずっと思っていたが、今日になって初めて、隣接する新生児室からすでに赤ちゃん達の泣き声がしていることに気
2022年7月12日 20:00
妻の日記より深夜帯は赤ちゃんをナースステーションで預かってもらえる。でも、昨夜布団に入ってから、赤ちゃんと離れた事に突然不安を覚えて、迎えに行ったほうがいいんじゃないかと考え始めた。赤ちゃんに授乳している時の感覚が体に蘇って、でも赤ちゃんはここにいなくて、居ても立っても居られないようなモゾモゾした気分だった。生物としての本能が現れたのだろうか。もちろん迎えには行かずに有り難く寝たけれど
2022年7月13日 20:00
面会にも行けないので、家で一人過ごしている。久しぶりに独身に戻ったみたいだ。……とは言っても、ヒマをしているわけにはいかない。この時間を利用して出版社向けのマンガのネームを作ってみよう。前回はぜんぜんダメだったので、ゼロからやり直しだ。前回はマッサージ師のマンガでダメだったので、今回はライターのマンガを描いてみよう。内容は何も決まっていないが、この思いつきだけでも一歩前進だ。がんばる。
2022年7月14日 12:41
あかちゃんはまだ体重が足りないということで産院に残して、妻だけが退院することになった。朝、産院に妻を迎えに行く。ついでにちょっとでも生のあかちゃんを見られないものかな、と思ったのだけど、それはダメだった。数日ぶりに会った妻は、大きなお腹がへっこんでいた。それまでは胎児が中にいたために、お腹が大きくなっていたが、胎児が外に出たから、お腹がへこんだ。当たり前のことだ。……当たり前のことなん
2022年7月15日 18:21
2月からずっと更新していた『おれとつまの妊娠日記』。無事にまるが生まれて、妻も家に帰ってきて、終了しました。それにしても本当に長かった! 書いていても長かったのですが、読んでいる方はもっと長かったんじゃないでしょうか……。きわめて個人的で、平凡な妊娠の記録をここまで読んでくれたみなさま、本当にありがとうございます。さて、この日記を読んでくれた人はこんなことを思ったんじゃないでしょうか。