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メロスは激怒してオゾンを噴霧した

「あの人は怒るとなにをするかわからない」

という言い回しがあるけど、「わからない」と言っても大抵の場合、実際にすることは殴るか怒鳴るかの二択であると思う。

私の父はどちらでもなかった。

父は怒ってオゾンを噴霧した。
この状況を太宰治『走れメロス』で置き換えるのならば、以下のようになるだろう。 

メロスは激怒した。
必ず、かの 邪智暴虐 ( じゃちぼうぎゃく ) の王にオゾンを噴霧しなければならぬと決意した。

(『散布なさいメロス』)

「怒るとなにをするかわからない」という日本語があるのに、この文章は自然な文章としては成立していないと思う。言葉は不自由だ。

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