緊急提言! 『NANA』はMoMAに永久収蔵されるべき漫画世界遺産
※以下の文章はテレビブロス2020年12月号「ブロスコミックアワード2020」に掲載された漫画『NANA』に対する緊急提言です。
緊急提言! 『NANA』はMOMAに永久収蔵されるべき漫画世界遺産
なぜ今『NANA』と思いましたか?「ハッピーマニア」じゃなくて……?
いや、ハッピーマニアも死ぬまでに必ず、何が何でも読むべき漫画遺産であることは間違いありませんが。そんなことより私は『NANA』の話をしたい。しなければならない。絶対に。私は本気で『NANA』という作品がMoMA(二ューヨーク近代美術館)に永久収蔵されるべき文化財と考えております。
ゼロ年代は死んだ。なぜか。我々が目をそらし、未解釈のまま置き去りにしたから。mixiのコミュニティ取り残されたままソーシャルコミニュケーションサービスに持ち込まれなかった数々の議題を消化せずに忘れてしまったから。未回収の伏線から目を背けていたせいで東京オリンピックは開催されなかった。そうは思いませんか……? 冗談、ましてやものの例えではありません。昨今、価値観のアップデートに忙しいSNS上で無数に繰り返されるイノベーティヴな地平の底には、我々の見た初めての真実が、あの時光よりも早く網膜に焼き付いた躍動が、天才によって呼び起こされた大いなる警笛が、過去のものとして忘れ去った無謀なおびただしい屍によって築かれたぬかるみの上にあるのだということを忘れてはならない。イノベーション前夜の血糊の感触を全国民が今一度脳裏に刻むべき時が今だ!!
(要するに、『NANA』をkindleで購入し、今すぐにお手元のスマートフォンでお読み頂きたいということです)
そもそも、『NANA』とは一体なんだったのか。明らかに時代のモノリスとして現れた暗示的作品であるのにも関わらず、一般的な統一見解が得られていないという問題があります。以前SNS上でNANA読者の方に向けて
あなたにとって『NANA』とは?
(TVチャンピオン優勝者が最後に答える質問風)
という質問を試みたのですが、返答は局所的、散文的な感想ばかりでした。やはり『NANA』が一体何だったのか、我々に突きつけたものの正体は未だ見出されていないのであります!!!
しかしそれもやむなしでしょう。なぜなら、『NANA』という作品は余りにも体験的でありすぎるが故に解釈を拒むからです。作中極めて写実的に描かれるキャラクターの飽くなき切迫は、一瞬たりとも静止した状態ではあり得ません。常に激しく揺さぶられ、固定化された「物語中のキャラクター像」としての解釈を阻み続けるのです。
そういった動的な渦中において、作画面はあくまで静止した画像の連発。あたかもフラッシュバックのように、中間的な作画表現なく全ての絵が浮世絵のように最大限の静止したケレン味で描かれ続ける。
この、「静」と「動」の凄まじいコントラスト。阿吽の呼吸。動的な感情と静的な図版の反目に現れる、未だかつて目撃したことがない読者の脳裏にしか現れることがない著しい点滅が、体験の中にしか現れることのない狂おしい情緒が『NANA』を『NANA』たらしめる表現上の最大の特徴と申し上げて差し支えないでしょう。
こんなの最早ライブ…いや、歌舞伎だ。
そう、皆さんはお気づきではないかも知れませんが、『NANA』とは実は
歌舞伎
なのです。
ご存知でしたか?りぼんマスコットコミックスで「歌舞伎」が体験できるということを。多くの人類が、まだこの真実に到達しておりません。これはまさに、一刻も早く文化遺産として登録すべき作品なのです。
絶対に読んでください。『NANA』。今すぐに。損はしませんから…。
私としては、この偉大なる作品が一刻も早く歌舞伎の演目として正式採用され古典演目として民衆に幅広く支持されることを願ってやみません。『NANA』が歌舞伎にならないことには、東京オリンピックは開催されないのですから(※)…
(※独自解釈)
緊急提言は以上です。『NANA』への想いが伝わったのではないかと思いますが、もっと『NANA』に切迫したいという方は、是非こちらの『NANA』について語りつくす配信トークイベントのアーカイブ動画(有料)をご覧ください。
アーカイブ配信期間が12月12日(日)23:59 までとなっております。想像を超えた『NANA』解釈を是非お届したく、今回提言文を公開した次第でございます。
また2021年12月23日発売のテレビブロス2月号コミックアワード特集にて、『ガラスの仮面』についての緊急提言文を寄稿しております。こちらも大変緊急性が高い内容になっておりますので是非、本誌をお買い求めの上ご拝読ください。