文章を書くコツ 具体編

以前こちらの記事で、「どうやって文章の構造を作るのか」という話をしました。

簡単に振り返ると、よく言われる「起承転結」をもとに構造を組み立てるとなんだか話の筋道がはっきりしないウヤムヤな内容になりがちなので、

⑴問題定義
⑵具体例
⑶考察
⑷結論

という4つのパートに分類し、その中でも特に「⑴問題定義」に重点を置く、つまり

自分にとって決して他人事ではない適切な「問い」を立てる

ことで、破綻なく全体の構成をするという考え方について解説をしています。


小論文というと、どうしても「⑶考察」をメインのように考えてしまいがちです。
しかし、多くない文章量であれば案外考察の内容に独自性を持たせるのは難しいので、それよりも「問い」がどれほど自分にとって関心が強く、内側から現れてきた切実な問題であるかという点の方がよっぽど読み手の関心を引くものになりやすいと思うのです。

文章を書く時以外であっても、「どのように問いを立てるか」という視点はとても重要です。

例えば、会社を辞めたいけど辞めたくない気持ちもあるし、もうどうしたらいいのか全然分からなくなっている人がいたとして、重要なのは結論、答えを出すこと自体ではなく、その過程や適切な問いを立てること、その為に問いの材料になるような自分の抱える問題に目を向けることであったりします。

ここで問いを立てることに失敗してしまうと、なんらかの結論を出したところで問題の根本は解決しません。なぜなら人間の抱える問題はその人物の外側に現れている何か一つの事象に対応する形で存在しているのではなく、複雑な問題の一端が社会適応への阻害として現れてきているだけだからです。ここで問題の根本に目を向けて、

「余りにも考える時間がないほど生きる為に最低限必要な全ての雑務の隙間を埋め尽くすように労働が詰め込まれていて、人生を左右する判断が何もできなくなっている。そもそも私は何がしたかったのか」

という問いを立てることが出来れば、一旦休職をして考える時間を得るなどの対応ができます。


ここで「そもそも何がしたかったのか分からなくなっている」という問題点に目を向けるには、日頃からどのように問いを立てるのか考える視点を持っていることが重要になります。何か不可解に感じる点はないか、わずかな違和感や、どこか腑に落ちない気持ちが発生してはいなかったか、それはどのような言葉で「問い」として立ち上げることができるのか。こういった視点を常に持っておくことで、咄嗟に文章を書かなければいけなくなった場合も、課題に対応して何を「問い」として立てればいいのか比較的スムーズに考えられるようになります。

例えば筆者は周囲が愕然とするほど速攻辞めましたが、銀座でOL業務のような行為をやっていたことがあります。その際になぜか入社記念のレポートを書くように指示されたので

銀座という土地にはファストファッションの旗艦店が進出しているが、ファストファッションとハイブランドが並列する以前、以後では「銀座」という土地自体のブランド感はどのように変化したか

というビジネスマンが喜びそうなテーマの文章を書き大いに褒められました。
(それ以外の業務では両津勘吉のような最悪の結末をもたらし、私一人のせいで社内の物流網を大混乱させ経理ファイルの内部データはブラックボックスと化しました)

記念のレポートなので他の人は「頑張ります」を長い文章で書くことしかやってなかったんじゃないかなと思います。どうでもいい文章を書くのは人生の無駄遣いなので、問いを立てられるようになっておくとこのように大変重宝します。

前述の方法論は、小論文の構造を元に文章のテーマの組み立て方を解説しているのですが、この方法は特に小論文を書く場合に限らず、小説でもエッセイでもスピーチでも有効だと思います。確認のためこの本を読みました。



こちらは毎年出版されている選者がより抜いた良いエッセイだけが編纂された本です。良さは必ずしも何か形で測れるようなものではありませんが、やはり選出されたエッセイを読んでいくと

・仕事や日常の中で何か疑問を抱く
・実証や考察を試みる
・新たな視野が得られる

という流れが概ね共通しています。セレクトされているくらいだから、この疑問自体が驚くような、一筋縄ではいかないものであったり、衝撃的なものであったりするのですが、やはり読み手として新たな視野が開けるまでの思考の流れを追体験するのは刺激的で興味深い体験です。

文章を書くたびに毎回「問い」を立てるのは大変そうな印象があるかもしれませんが、本当に些細なものでも構いません。例えば、

定食屋には「野菜サラダ」というメニューがあるが、この場合の「サラダ」とは、野菜以外の一体何を示しているというのか

とか、これくらいで十分。むしろ細かすぎる視点は見逃されていることが多いので読む側からしたら十分興味深くて面白いのです。


前回の記事の振り返りだけでずいぶん長くなってしまいましたが、ここからが本題です。なぜ続編を書こうと思ったのかといえば、このような質問が寄せられたからです。


「文章を書いているときに、どうやってそれが面白い文章かどうかを判断しているんですか?」


確かに!!

文章を書いているときに、それが面白いものなのかどうかを必ず判断をしているはずですが、案外言葉にして考えたことはありませんでした。せっかくなので考察してみようと思ったのです。

しかしながら、端的に言ってしまえば答えは既に出ています。

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