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20枚シナリオ『形勢一変』

シナリオセンター。
20枚シナリオ、ペラ20枚(200字詰め原稿用紙20枚)
課題:職業もの


あらすじ

最高のひとときを再現するをモットーに掲げる代行会社に勤める吉田彰。 ある日、吉田は勤務中に目の前で交通事故が起こってしまう。その時に怪我を負った歩行者は高校時代の同級生、鈴木浩一だった。 競合コンペを明日に控えていた鈴木は、案件を逃さないため、ある提案を吉田にするが・・・

登場人物

吉田彰(35)(18)代行会社の社員
鈴木浩一(35)(18)吉田の友人
中村美穂(23)鈴木の後輩

シナリオ

○病院の個室(夕)
鈴木浩一(35)が病室のベットで寝ている。
吉田彰(35)は3枚の紙を見ている。
吉田は何度も紙をめくり、書いてある文章を読んでいる。
吉田は紙を鈴木が寝ているベットについている机に置く。

吉田「正気か?」
鈴木「ああ」

吉田は頭をかく。
鈴木は顔をゆっくり吉田に向ける。

鈴木「そんなに気になるか?お前、代行の仕事をしているんだろう?」
吉田「そうだ。そうだけど、俺がやってるのは父親だったり、弁護士のまねとかその場凌ぎのもんばっかりなんだ」
鈴木「それが営業マンになるだけでは?」
吉田「全然違うだろ!」

吉田はベットにつけられた机を大きな音を立てて叩く。
机から紙が舞い、床に落ちていく。
吉田は反射的に拾おうとするが、拾わずに椅子に座り直す。
鈴木は真っ直ぐ正面を見る。

鈴木「吉田。俺とお前は似ている」
吉田「声と顔だけだ」
鈴木「体格もだ」
吉田「ああ、はいはい。体格も。でもそれだけだ」
鈴木「いや、度胸も頭の良さも機転が効くとも似ている。挙げたらキリがないくらいだ」
吉田「褒めているのか、自慢したいのかどっちなんだ」
鈴木「それにお前の会社に正規で申し込んで、利用しているだけなのに何の問題があるんだ」
吉田「守秘義務とか色々あるだろ」
鈴木「まあ、大したもんじゃない」
吉田「大ごとだろ」
鈴木「今回の案件が取れるなら大したことじゃない」

吉田は大きなため息を吐く。

鈴木「俺とお前で違うのは、記憶力と演技力だ」
吉田「はあ」
鈴木「覚えているか?大学入試の時」
吉田「あー。あれか、そういえばお前は大事な時にいつも怪我するな」
鈴木「そして運がいいことに、吉田と一緒にいる」
吉田「運が悪いの間違いだろ」
鈴木「大学入試の時」

〇(回想)日英大学近くの公園・トイレ(朝)
鈴木は脱いだ服を吉田に渡す。
吉田は服に着替えると、
鈴木に服を着せる。
鈴木は鞄の中からノートを渡す。

鈴木「ここに入試対策の質問の答えが書いてある」
吉田「ああ、とりあえず救急車がくるからベンチに移動するぞ」

吉田は肩を貸して鈴木を引きずるように動かしベンチへ移動する。
吉田は手に持っていたノートをパラパラとめくる。
吉田はノートを鈴木のカバンに入れて持って走り出す。

吉田「まかせろ。合格させてやる」

○病院の個室(夕)
鈴木は瞬きをする。

鈴木「あの時と一緒では?」
吉田「全然違う」
鈴木「あのあと、合格した時に思った。お前には才能がある。なんで劇団を辞めたのか聞かないが、俺はそう思ってる」

鈴木は胸を押さえながら、起き上がる。

鈴木「頼む。これが取れるかで会社の存続がかかってるんだ」

吉田は手をあたふたとさせる。

鈴木「他に行けばいい?と思うだろうが、俺はここの社長に恩があるんだ。今時古臭いと思うけど、俺はこんなことで会社を潰したくない」

鈴木は頭を深く下げる。

鈴木「頼む」

○マンション・吉田の部屋(夜)
6畳の部屋にはホワイトボートが3つあり、壁には何も入っていない本棚が並んでいる。
部屋の真ん中にスマホスタンドが置かれた小さな机が立っている。
吉田は部屋に入るとスマホをスタンドにセットする。
通話を開始すると、画面は鈴木と通話中になる。
吉田はホワイトボードマーカーを手にもつと書き始める。
1つには鈴木の自身のことを、
1つは鈴木の人間関係のことを、
1つは今回の案件のについて書く。
吉田は写真を貼る。
ホワイトーボードは隙間がなくなっていく。

○マンション・吉田の部屋の外(夜)
部屋にはカーテンがないのに、繋げられた紙ののれんが
カーテン替わりになり中が見えない。

○マンション・最上階の廊下(朝)
吉田はスーツ姿で廊下を歩いている。

○マンション・最上階のエレベーター(朝)
吉田はスーツ姿でエレベーターに入り、1階のボタンを押す。

○マンション・エレベーター内(朝)
吉田はスース姿でネクタイを締める。
腕につけた時計を見て、目を瞑る。

○マンション・1階エントランス(朝)
吉田はスーツ姿でエレベーターから出てくる。
コツコツと音を立てつつ、エントランスから出ていく。

○ひまわり公園(夕)
中村美穂(23)は両手にコーヒーショップで買ったSサイズのコーヒーを持って、公園のベンチに座っている吉田に近寄る。
美穂は吉田の前に立つと、吉田にコーヒーを渡す。
吉田は美穂からコーヒーを受け取る。
美穂は吉田の隣に座る。

美穂「本日はありがとうございます。その、吉田さん」
吉田「気にしなくていい、仕事だ」
美穂「そんな訳には」

美穂は持っているコーヒーを見つめる。
吉田はコーヒーを一口飲む。

美穂「あの!」

吉田は美穂を方へ顔を向ける。

美穂「先ほどの商談ですが」

美穂はコーヒーを一口飲む。

美穂「まるで鈴木先輩みたいでした。どうしてあそこまでそっくりに出来たんですか?付き合いが長いからですか?」
吉田「中村さん。落ち着いて」

美穂ははっとしてコーヒーに視線を向ける。

美穂「すみません」
吉田「いや、まあ。そう言って貰えると僕としては嬉しいよ。役者冥利に尽きるってやつさ」
美穂「はあ」
吉田「鈴木については昨日知ったこと以外はほぼ知らないよ。大学時代でも関わりがあったのは少しだし」
美穂「そうとは思えませんでした」
吉田「ははは。まあ、鈴木のことは知らないけど、人のことはよく見てきたからね」
美穂「人ですか?」
吉田「ほら、この人はこう考える。この人はこうするとかあるだろ?」
美穂「ええ、まあ」
吉田「そういった色んな人のパーツを切り取って、鈴木浩一を昨日作ったんだ」
美穂「は、はあ?」
吉田「そして作り上げた鈴木浩一を演じた」

美穂は首を傾げた。
吉田はコーヒーを一口飲む。

美穂「すみません。よく分からないです」
吉田「ははは」

美穂は目線を足元にずらす。

吉田「じゃあ、AさんとBさんがいたとしよう。2人は同じ営業マンだけど、Aさんは明るくておしゃべり。Bさんは口数が少なく大人しい。でも2人とも業績が一緒で優秀だ。なぜだと思う?」
美穂「ええ?えっと営業が上手いとか?」
吉田「ではどういった営業をすると思う?全く同じ方法でやると思うかい?」
美穂「いえ、違うと思います。Aさんは営業の内容以外も話てそうな気がします。取引先の人と仲良くなったりとかかな」
吉田「じゃあ、Bさんは?」
美穂「営業の内容をプレゼンするのが上手いとかかな」
吉田「じゃあ、鈴木はAさんとBさんどっちのタイプに近いと思う?」
美穂「え?うーん。Aさんですかね」
吉田「俺も昨日の話を聞いててそう思った。じゃあ、Aさんをベースにもっと考えてみようか」

To be continued…

感想

シナリオ作家養成講座の課題の1つです。
試行錯誤したけど課題の職業ものなのか?という疑問は今だに消えません(笑

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