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【体験談】初めて警察を呼んだポンコツの話(後編)
これの続き。
僕とモジャの二人はボーリング場「ヤングボール」へとたどり着いた。
途中で寄ったスーパーや、それまでの地面には僕のスマホはなかったため、ここに無かったら詰みである。
僕らはヤングボールの地下のビリヤード場に行った。
柄の悪い六人組はまだビリヤードをやっていた。僕らは自分たちが使っていたビリヤード台の周りや下をくまなく見て回る。
しかし、スマホの影はない。
僕は諦めきれず3周くらい台の周りを探した。
胸の鼓動がどんどん増す。
しかし、良く考えろ。ボーリング場に着くまでスマホのマップを頼りにして来たのだから、このボーリング場の時点では持っていたことになる。最後にここで使った記憶があるのだからここを探すしかない。
まだ受付に届いている可能性がある。
いや、あってくれ!
受付に急ぎ、すがる想いで店員さんにこう言った。
「さっきまでビリヤードやってた者なんですけど、スマホの落とし物ありませんでしたか?」
多分大学生のバイトであろう青年の店員さんは「確認してまいりますのでお待ちください」と言って、バックヤードに消えていった。
僕は、お願いします、ありますようにと祈りに祈りを捧げて店員さんの帰りを待つ。
しかし、この世はそう甘くはなかった。
「スマホの忘れ物はないようです。」
僕は言葉が詰まった。
肩が地面につきそうになるほど落とした状態でその店員さんにお礼を言った。
「…ないね。」
友達が言葉を発したと同時に、ふと我に帰る。
僕ら二人は受付近くのベンチに座っていた。
この瞬間、当てがなくなったのだ。
絶望感をこの上なく感じた。
ここにないと言われたらどこにあるというのだ。
いろんな可能性を二人で考え始めた。
そこから一つの疑心が生まれた。
もしかしたら。このテーブルの上に忘れていったスマホを「奴ら」がとったのではないか。
僕らの視線は隣のテーブルにいた柄の悪い大人に向いた。
僕らは話しかけるべきか迷った末、聞きにいった。
「忘れ物のスマホありませんでしたか。」
返答は「知らないよー」だった。
まぁ、ですよね、と思った。
そこで落ち込むと同時にある案が浮かんだ。
監視カメラ見れば分かるじゃん。
再び受付に行き、監視カメラ見せてほしいとさっきの店員さんに頼んだ。
すると、上司に確認するから待つように言われ、待っているとその上司が来た。
「監視カメラはお見せできないんですよ、
ただ、警察の人の了承があればお見せできます」
僕らはもう振り上げた拳を下ろせない状態。
ゲームセンターで取るまでやる状態。
とにかくそんな状態だった。
店員さんと話すなかで、警察行ってみたらどうかという話になり、僕らは近くの交番へダッシュした。結構長い距離を走った。
しかし、やっと着いた交番は灯りが灯っておらず、「パトロール中」と張り紙があざ笑うように貼ってあった。
その紙を見て、愕然とした。
「パトロール中だと、、、ふざけやがって」
また、その張り紙の下の方を見ると、そこには御用の方は以下の番号へ連絡してくださいと番号が載っていた。
思考停止でその番号へかけ、事情を話した。
僕らは事情を伝え終えてボーリング場へと帰った。
もうボーリングをしている人は片手で数えられるほどしかいなかった。
そんな店内に入ると、さっきの店員さんが、どうだった?と話しかけてきてくれたため、話したりしながら警察の到着を待った。
何分経ったか分からないが、屈強な警察官2人がノシノシと店内に入店した。
悪いことはしてないのだが、なぜか警察を見るとドキッとする。
さっきまでニコニコしていた店員さんの顔も「本当に」呼んだのか。。とばかりに強張っていた。
場は緊張感に包まれた。
ちなみに僕が警察官と話をするのは、ミニカーを片手に砂場で見つけた100円玉を交番に届けに行ったとき以来だった。今まで職質もされたこともないからやけに緊張した。
警察を呼んだということの事実が、事の重大さを可視的に増大させて感じさせてくる。
僕は再び事情を話した。警察と店員さん同士も話をする。
さっそく防犯カメラを見ようと思うのだが、見れない。
店員さんが防犯カメラの仕組みを理解していなかったのだ。
店長は不在なため、数人の店員さんたちが一生懸命に防犯カメラのデータを模索してくれた。
また、警察官の二人は防犯カメラのデータを店員さんに任せて、地下にいる人たちにスマホのことを知らないか訊きに行ってくれた。
モジャも家で待つ友人【タバコ】に連絡したり、僕の隣で見つかるといいねと言って支えてくれた。
多くの人が動いてくれていた。
僕はとてつもない申し訳なさを感じながらも、なにも出来ずに突っ立ていた。
いろんな感情が交錯した。
マジで申し訳ないし、不安だし、不安だし、申し訳なかった。
僕のスマホごときで、アルバイトの人も、警察官もめちゃめちゃ迷惑がかかっているからだ。
見つかっても、見つからなくても全力で感謝と謝罪をしよう。
そう決めた。
そんなことを考えていると、モジャの携帯が鳴った。
タバコが様子を聞きに電話かけてきたのかなと思ってモジャが話すのを聞いていた。
モジャ「うんうん、まだ探してる。
…………うん、
あー、そ、そうなんだ。
オッケー伝えとく。待たせて悪いね、ありがとねー、はーい」
モジャは電話を終え、額に手を当てて地面を見る。
なに、どうした。
僕は疑問に思った。
モジャは僕の目を覗き込むように見てきた。
次の言葉を聞いた瞬間、世界は真っ白になった。
「手提げ袋に入ったミスタードーナツの箱の下。見知らぬスマホがあったらしいよ」