そして若おかみは神となった
【チャレンジ 12/20】
劇場版の若おかみは小学生!を観てきました。
私は小学生の頃に原作小説を1巻だけ読んだことがあるだけで、それ以来全然追えていませんでした。
テレビアニメもやっていたんですね。
Twitterでフォローしている有名な方々が絶賛していたので、すごく気になっていました。でも、正直なところ「子供向けアニメなんだろうな」とそこまで期待はしていませんでした。
いや、これは大人こそ見るべきですよ。
劇場にはおっさんと女児連れしかいませんでしたが、大人もっと見ろ。
いろんな方が言っていますが、なんといっても作画がやばい。
私は絵やアニメーションの知識に乏しいので語ることはできませんが、それでも丁寧なアニメーションだと感じました。
Twitterでも、イラストを描く方がこの作品に言及しているのを多く見かけたので、やはり作画は良いのだと思います。
また、私はCG感が溢れている動きが苦手なのですが、キャラの動きがそうでなかったのが嬉しかったです。
キャラクターはアニメ的な表現でかわいらしいデザインなのですが、背景はしっかりと描き込まれているのも、劇場アニメの贅沢さが感じられました。家具とか建物の描き込み細かいですからね。より、感情を揺さぶられます。
また、ストーリーもとても良い。
映画オリジナルに仕立てられているようで、他メディアをほとんど知らない状態でもスッと世界観に入り込むことができます。
いくつか「これは死を乗り越える(受け入れる)物語である」的な評価を見ますが、私はあくまでテーマの一部だと思いました。
大きなテーマとしては「大人になる」ということが描かれています。
両親の死、接客の苦悩、他人への怒りといったことを、憧れの存在や幽霊の友人、旅館で働くことなどを通じて乗り越えていく様が描かれています。
しかし、主人公のおっこやライバル的ポジションの真月は小学生らしからぬ側面も多分に見せてきます。だからこそ、大人が感動できるという面もあるのではないでしょうか。
また、両親との死別は大きなイベントなのですが、それがあえて劇的な演出がなされていないことも印象的でした。両親が死亡する事故も、特に過剰な演出が入るでもなく突然起こるし、おっこが事故をフラッシュバックするのも日常のふとした瞬間のように描かれています。
この演出はとても現実的だと感じました。
真月さんはそもそも小学生のスペックじゃないです。
古典などから格言を引用してくるし、旅館経営のためにかなり専門的な領域まで勉強してます(医食同源メニューを考えるために五行の勉強をしていた……)。
おっこも小学生でありながら、両親を失った悲しみを表には出さず、日々過ごしています。それでも、夢、というか強い願望の形として両親の姿を見ています。しかし、最終的には事故の発端となった人に対してさえ「花の湯温泉のお湯は誰も拒まない」といってのけます。
この言葉は、おっこも小さい頃から両親、祖母から言われていたものです。花の湯温泉のお湯は神様のものだから誰も拒まない。
「君は私が死なせてしまった関夫妻の一人娘だろう?」(うろ覚え)
に対して
「私はここの、春の屋の若おかみです」
と答える。
健気すぎて泣いてしまいました。
しかし、両親の死の原因になった人をも受け入れるというのは、大人でも難しいでしょう。本当に神か仏でなければできない所業です。
この瞬間、「ああ、おっこは大人どころか神になってしまった」と思いました。
感動といっていいのか分かりませんが、こんな想いを小学生が背負わなくてはいけないなんて……と、考えると涙が出てきてしまいましたね。
劇場版「若おかみは小学生!」、まだ公開中の劇場もありますので、ぜひ見に行ってください。
子どもも楽しめつつ、大人も感動できる良作です。
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