歌のアトリエ
授業を受けている、語学学校にはアトリエというクラブ活動がある。
歌、演劇、映画、音楽などがある。
学期の終わりには、必ず発表会が開かれる。
私は歌のアトリエに参加していた。
先生は本物の歌手で、笑顔が超素敵な、陽気なおばちゃん。
毎週火曜日の夜に2時間、歌を練習する。現代のポップスが多いが、パートごとに分かれて、アンサンブルする。
要するに合唱だ。
最初はみんなずっと真面目に歌っていたし、歌は難しいし、みんな上手すぎるし、毎週行くのが本当に面倒だった。
しかし、デモによる中止の連続や、春のバカンスが明けて、5月5日の発表会が近づくと、練習が楽しみに変わっていった。
以前は、横一列に並びピアノと先生を前にして歌っていたが、
本番の舞台を想定して、
踊ったり、フォーメーションを変えたりしながら歌った。
「どうすれば、会場を盛り上げることができるのか」、「いかに自分たちがノリノリで歌えるか」ということを考え、
皆で意見を出し合い、試しながら、何度も練習した。
歌う最中も、皆と目を合わせ笑顔で歌うので、本当に楽しい。
そして、
合唱って楽しさを求めてもいいのだ
と、気が付いた。
日本の小中学校でやってきた、合唱は、
歌詞一つ一つに気持ちを乗せ、
美しい歌声で、
みんなが一つになり、
一生懸命さが伝わるように歌うよう教えられてきたと思う。
先生からのアドバイスがほとんどで、笑顔で和気あいあいという雰囲気はあまりない。
しかし、今回の歌のアトリエはそんな雰囲気は一切ない。
もちろん美しさも大切だが、
楽しさが一番重要
である。
歌いながらみんなで踊る。その振りも基本的には自由。
「こんな感じに揺れよ」
「最後は真ん中に集まってこぶしを突き上げながら歌おう」等、
ミュージカルのようだ。
直前の練習までずっと試行錯誤をしていた。
そして迎えた本番。
芸術学部のある大学のため、会場は立派な舞台のあるホール。
会場には語学学校の先生や生徒が大集合し、拍手等で本当に盛り上げてくれる。
歌っている最中もいつも通り楽しかったが、会場の盛り上がりも最高に気持ちよかった。
他のアトリエの発表も大盛り上がりで、私も舞台に立てたことが誇らしくなった。
歌やダンスは、日本人ではあまり日常生活の中にはない気がする。
フランスに来てから、
他国の留学生がうますぎることに気づき、勝手に劣等感を抱いていた。
しかし、今回のアトリエと発表会で、
歌とダンスは楽しさや笑顔を一番にやれば良い
ということとを学び、少し自信に繋がった。
そして、発表会の後、会場の外で行われたアペロ(軽い軽食でお喋り)
友達や先生たちにたくさん褒められ、ついついいい気分になった。