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男性である自分の中の「権力地図」~権力に接続された弱さを直視できるか~

最近、とあるツイッターアカウントが「危うい」感じになってきていたので、フォローを外した。

時折の時事問題系の発言にほんの僅かな違和感はあったが、大概が趣味の話で、まあ楽しく見させて貰っていた。

しかしつい最近、森会長の辞任問題について、「女性についてあーだこーだ言っただけで辞任させられる社会は異常です」という意見に賛同する形でツイートしており、「あちゃ~」と思い、念のためフォローを外した。特定したくないので具体的な内容は触れないが、私から見てその人の賛同ツイートには以下の特徴があった。

・陰謀論に繋がりかねない物の見方

・言葉の意味を勝手に自己流解釈して断定する

・かなり読みづらい文章が含まれている

長年陰謀系や「ウヨ系」の言論をウォッチしてきた私としては、この人はもうしばらくしたら「森さんが辞めさせられたのはウイグル弾圧を行う中共の北京五輪を問題視させないためのリベラルの陰謀だ~」みたいなことを言ってる可能性もあるな、と思った。(もちろん中共のウイグル政策は問題だが、何かを叩きたいがために、本当は共感してもいない問題を持ち出すのは相手と同等だし、色々迷惑なはずである)

まあでもコロナやトランプ現象もあり、以前から大分問題ではあった陰謀論への感染がかなり深刻にはなっている、という中なので、ここまでの話はありふれていると言えばありふれている。問題はここからで、本当に書きたいのは以下のことだ。

「念のためフォローを外したとはいえ、気持ち的には全く不愉快にはならず、寧ろ『あちゃ~、駄目だこの人』と冷笑する気持ちすら自分の中にあった。そしてそれは、フォローを外したアカウントが『有名ではない若い女性』のものだったからではないか」

言ってしまえば、多様性やら平等性を重んじる考えが自分の中にある一方、無意識レベルで、「権威の無い若い女性の意見を軽んじる」自分がいるんじゃないか、ということだ。簡単に結論は出ないけれども。

森会長の発言もそうだったが、例えば年長世代の男性が同じようなツイートをしていたら、自分としてはそれなりの不愉快を感じていたと思うのだ。その不愉快の理由は以下の通りだと思う。

・多様性やら平等やらの価値観を軽視している

・自分も男性として、男性優位の社会で一つも落ち度が無かったとは言えず、「同族嫌悪」的な気持ちがある。

・「女性がこの社会で多大な苦労を強いられている、という事を十分理解していなかった。しかし理解する努力をするべきである」という状況の中で、自分の世界観が揺らぐのが恐怖である。

(三つ目の理由が結構根深いと思っていて、人種差別問題を白人が指摘された時に、耐えられなくなって激烈な反応を起こす問題や、「あなたの力でここにいると思わないでください」という東大入学式での上野千鶴子氏の発言への反発等も、「自分はまともなフィールドの上で、まともに戦ってきただけと思ってたのに、実はそれだけじゃなくて、更に想像しなきゃいけない他者の痛みがある」ということに、多くの人は耐えられないのだ。正直私もしんどい)

まあ女性がする差別発言にしても、某政党でそれなりに重宝されている方とかがした場合には不愉快だが、それは権力もあるし、男性優位の世界の生き残り方を熟知しているから、というのもあると思う。単純な話じゃない。

しかし、権威がある訳ではない若い女性が、男性優位の構造を内面化したような発言をしたり、その他差別発言をしていても、案外不愉快度が低いというのは、問題があるし、それは以下の理由が推測される。(自分の気持ちの分析をしているのに「推測」となってしまうのは、自分自身や身の回りを振り返るのがいかに難しいか、というのを示していると思う)

・男性が言ってるなら同じ男性として罪悪感もあるが、女性が勝手に言ってるなら「まあしゃあないかあ」と思ってしまっている。

・「権威がない若い女性」に対して、そうじゃない人に比べて脅威を感じていない。いつの間にか力関係を測ってしまっている。

上の見方はどれも問題なのは分かっているが、自分の中にも多分、あると思う。

「自分と異なる人が言ってるし関係無いな」というのが結局問題を大きくしてしまう。森氏の辞任や後任の問題でグダグダしたのも、JOC内部で「内輪の空気の読み合い」ばかりしてしまい、一歩踏み出した提案をできなかった人がほとんどだったのが理由だろうし、話は変わるが、セクハラが問題となった「天才編集者」がサウナでのんびりしながら居直っていられて、それが周囲に追認されている問題も、「内輪の空気に縛られて一歩踏み出す提案をできる人がいない」のが要因じゃないかと思う。

私も周囲で差別事案等が発生した時に、パッと一歩踏み出して、適切な対応を取れるかというと、自信が無いし、不安がある。

結局、自分の中の弱さを自分に対して隠そうとせず、少しずつでも向き合い、それがどこかで社会に接続されていることを学ぶ中で、何ができるか考え、動こうとしていくことが大事なのだろう。

この「良い事言った風の結論」が、自分の気持ちの中で空回りしないようにしたい。



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