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ライブ「BUCK-TICK TOUR 2023 異空 7/22 東京ガーデンシアター」感想

※一部、曲目や演出のネタバレがあります。


(1)ライブ前と後

・(少し予想はしてましたが)客層の幅広さに驚きました。色々な服装や髪
型の人々がいて、若い人から一人で来たおばあちゃんまで、世代も様々で、海外からのファンも目立っていました。「BUCK-TICKのライブ空間は日本でも有数の多様性空間だ!」と思えることはファンとして嬉しく誇らしいことです。

・ライブ内容自体が素晴らしかっただけに、運営側対応に残念な点がありました。
①スマホチケットの写真登録の説明が分かりづらく運営側も混乱しているのが察せられたこと(一時期ライブ行けなくなるんじゃないかと本気で思いましたし、実際は何とかなるのにあきらめた人もいたかもしれません)
②男性トイレへの誘導アナウンスの不十分さ(女性トイレを多く設けていること自体は全く問題ありません)
③自分がどこの席に行けばいいかの分かりづらさ
④サービス提供体制が不十分なのにライブ後はさっさと客を追い出そうとし、案内が不十分なのに色々な道への行き来に制限があった
以上の点は今後改善頂きたいところです。

・最後尾席を中心に若干空席が目立った印象がありました。音源売り上げは順調でツアー自体の集客は結構できていそうな印象だったので、コロナの爪痕から立ち直り切れてなかったのかもしれません。

(2)演奏、パフォーマンス面

・演奏の音量バランスは完璧でした。力強い演奏でしかも一人一人の音がしっかり聴こえ、心地よかったです。

・ヤガミトール氏のドラムを叩く姿勢が非常に良く、佇まい自体から35年分の重みを感じました。ドラム音も決して全体の演奏に埋もれず、しかし演奏全体と調和も取れていました。途中ドラムソロもありましたが、テクニックをひけらかす上手さでは無く、どこをどう叩いても音の鳴りが良く、風格を感じる凄さでした。(タムやバスドラムの音も聴いてて非常に心地よかったです)

・樋口豊氏のベースもしっかりと聴こえ、根底からバンドの音を支えているのを実感しました。楽しそうに演奏され、時折後ろからステージ前方に出てきた時には結構興奮しました。

・相変わらずクルクル回ったりしながらトリッキーな演奏や耳に残るソロを披露していた今井寿氏ですが、星野英彦氏もかなり自由に動き回っていました。二人のギターのコンビネーションも最強でした。
(ボーカルの櫻井敦司氏については後述)

(3)演出

・ステージ横に(映像)モニターが無く、双眼鏡が無い人にはメンバーが見づらかったかもしれません。しかし却ってステージ上の演出を集中して観られたので満足でした。

・バンドのライブの多くは、ステージ外にも大量に照明や映像が備え付けられ、過剰とも言える光の演出が為されるものだと思います。(私自身そういった演出は好みです)しかし本ライブは照明や演出はステージ上に集中しており、限られた空間上でできる限りのことを見せるようにしていたと思います。曲に合った照明や映像、そして敢えて曲とは違う方向性の演出もあり、美術館に迷い込んだような感覚になりました。

・「ヒミズ」での日常風景に近い(けどどこか殺風景な)街の映像が映し出されることで、曲の主人公の苦悩に寄り添えたり、「さよならシェルター」での沖縄のガマと思われる背景映像、更に「Campanella 花束を君に」での黄色と青の照明とひまわりの背景映像(どこの国を象徴しているか覚えていますか?)等、臨場感たっぷりの映画を観ているようでもありました。

(4)ファン

・良い意味でファンの動きに統一感が無く、静かに聴きたい人、ノリノリで踊りたい人、歓声を送りたい人等、それぞれ自由に楽しんでいましたが、曲間やアンコールで聞こえてくる会話から、動きはバラバラでも深く感動している人が多かったと感じました。

(5)櫻井敦司氏のこと

・歌がとにかく安定しており上手かったです。演奏に埋もれないのはもちろんのこと、音程や裏声含めた多彩な表現をいかんなく発揮されてました。

・曲間でセリフを入れてみたり、曲の中でも歌詞の主人公に成り切った動きをしたり、「演じる」ということが櫻井氏の中で重要なようです。

・「演じる」ということで言えば「ヒミズ」の前に「私はお化粧をして街に出る。ただ、生きているだけ。だけれど街の誰もが私を笑う」という旨のセリフを言っていましたが、「社会に押し付けられた在り方」と「当人がこう生きたいという在り方」のズレは、人々に深刻な葛藤を及ぼすことを実感しました。
BUCK-TICK 35th ANNIVERSARY SPECIAL INTERVIEW vol.2 - YouTube
(「ヒミズ」櫻井氏の解説は25分46秒から)

・「ヒミズ」に限らず櫻井氏は必死にもがき苦しむ人、戦争で死んでいく人、最期に安らぎを見出す人、世界中や日本中を旅する人、ありとあらゆる命を祝福する人等、様々な役を演じ切りますが、このことが、私達ファンに対しても「巨大な宇宙の中で、誰もが一瞬煌めいて消える存在に過ぎないなら、どんな在り方でも望む方向に生きていいんじゃないか」ということを想起させてくれるのではないでしょうか。つまり、櫻井氏の姿を見て、「私達もやりたいように社会で”演じて”いいんだ」と実感できる訳です。


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